「コンタクトセンターで、生成AIはどのように活用できる?」
「コンタクトセンターでの生成AI活用を成功させるためには、どうしたらよい?」
近年世界的に話題となっており、ビジネスにおける活用も広まっている生成AI。自社が抱える課題解決に役立つことを期待しつつも、実際の活用方法については、まだイメージがつかないという方も少なくないと思います。
コンタクトセンター(コールセンター)における生成AIの活用方法は主に以下の6つがあり、オペレーターの生産性の向上や、応対品質の向上などの課題解決に寄与します。
しかし、生成AIを導入すると業務の効率化など一定の効果を感じることはできるものの、それだけでは成果を最大化するのは難しいかもしれません。
生成AIの活用においては、学習と調整を繰り返すことで精度を上げたり、セキュリティ対策を徹底したりと、その特性を十分に理解した上での対応が求められるからです。
そこでこの記事では、以下の内容について詳しく解説します。
この記事を読んで分かること |
▼コンタクトセンターにおける生成AI活用の現状 |
この記事を読むことで、活用イメージも見えてくるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
1.コンタクトセンター(コールセンター)における生成AI活用の現状
ビジネスにおいて大きな注目を集める生成AI。
コンタクトセンター(コールセンター)業界も例外ではなく、生成AI活用に対する意識が高まっており、実際に導入する企業が増えています。
そこで1章は、コンタクトセンターの生成AI活用に対する現場の認識と導入状況を解説します。
1-1.コンタクトセンター(コールセンター)でも生成AIの活用に対する意識が高まっている
生成AIの世界的な流行に伴って、コンタクトセンター(コールセンター)でも生成AIに注目が集まっています。
株式会社リックテレコムの月刊コールセンタージャパン(2024年2月号)は、2023年のコンタクトセンター業界における重大ニュースのトップとして「生成AIの登場・普及」を挙げています。
特に、積極的に導入すべきソリューションである、業務の効率化などに役立ちそうだ、という意識の高まりが見られます。
以下はコールセンター白書2023よる調査結果で、コンタクトセンターで優先的に強化すべきITソリューションは何かという質問に対する回答です。
FAQやチャットボットと並んで、生成AIが半数近くを占めています。前年には存在しなかった選択肢であるにもかかわらずこの割合ということから、生成AIがいかに重要視されているかがわかります。
参考:月刊コールセンタージャパン編集部,『コールセンター白書2023』,株式会社リックテレコム,2023年,P95
そして以下は、コンタクトセンターで生成AIを活用する成果として期待したい点を表したグラフです。
約8割の企業が、業務の効率化や顧客対応の自動化に役立つのではないかと生成AIに期待しています。
参考:月刊コールセンタージャパン編集部,『コールセンター白書2023』,株式会社リックテレコム,2023年
これらのことから、コンタクトセンターにも生成AIを導入すべきだと考える流れができており、導入すれば相応の成果が得られると見込む企業が多いといえるでしょう。
生成AIがどのようなものかについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
1-2.実際に導入するコンタクトセンター(コールセンター)も増えている
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AI活用に対する意識が高まっているだけではなく、実際に導入する企業も増えています。
以下は「コールセンター白書2023」による調査結果で、コンタクトセンターでの生成AI活用状況を表したグラフです。
参考:月刊コールセンタージャパン編集部,『コールセンター白書2023』,株式会社リックテレコム,2023年
すでに活用しているという企業は5%ですが、大手企業に限っていうとさらに導入率が高くなります。
日本経済新聞によると、2023年12月時点で国内のコンタクトセンター大手15社に生成AIに関するアンケートを実施したところ、13社から回答が得られ、そのうちの12社が顧客対応に関わる業務に生成AIを利用していたそうです。
企業によってばらつきはあるものの、生成AIの導入によって平均5割弱業務時間が削減されると見込まれていました。
参考:日本経済新聞「コールセンターの顧客対応、生成AIで5割短く 13社調査」
大手のコンタクトセンターではすでに取り組みが進んでおり、全体として検討中だという割合も少なくないため、今後は増々生成AIの活用が広まるでしょう。
2.生成AIが寄与するコンタクトセンター(コールセンター)の課題解決
人手が足りない、品質の向上が難しい、などの課題を抱えるコンタクトセンターは少なくないでしょう。
生成AIがどのような課題を解決してくれるのかが理解できれば、自社にとって生成AIが必要なのかどうかが見えてきます。
以下は「コールセンター白書2023」による調査結果で、運営上最も深刻な課題は何かという質問に対する回答です。
参考:月刊コールセンタージャパン編集部,『コールセンター白書2023』,株式会社リックテレコム,2023年
これらの課題のうち、上位3つを取り上げ、生成AIがどのように解決できるのかを解説します。
・オペレーターの育成 |
2-1.オペレーターの育成
コンタクトセンター(コールセンター)が抱える課題として最多なのは、オペレーターの育成です。
労働人口の減少や時給の高騰などの影響で新規採用が難しく、離職率も高いコンタクトセンターは少なくありません。そのため、人材が定着せず、十分に育成することができないという悪循環に陥りがちです。
さらに、「品質向上」においても同調査で4番目に多い結果となっており、オペレーターの育成と品質向上は大きな課題となっています。
このような課題に対して、オペレーターの育成手法の一つであるロールプレイングに生成AIを活用することが有効です。
生成AIを活用することで管理者の工数を大幅に削減できるだけでなく、ロールプレイングによる知識の浸透が促進されます。これにより、生産性や品質の向上が期待できるほか、心理的安全性が担保されることで離職率の低下も見込まれます。
2-2.オペレーターの生産性向上
人員不足と関連して、オペレーターの生産性向上もコンタクトセンター(コールセンター)の重要な課題です。
近年は顧客接点が多様化し、各チャネルにおいて解決できなかった問い合わせが、オペレーターが対応する電話チャネルに集まり、問い合わせが複雑化することも少なくありません。
電話による応対が複雑化すると、システムへのログの記載も時間がかかります。さらにオペレーターによって入力方法や要約の仕方にバラつきがあることも多く、お客様の声(VOC)の分析なども時間が掛かってしまいます。
そこで生成AIを活用すると、生成AIが会話内容を高い精度で要約し後処理時間の短縮に寄与します。その結果、生産性が向上します。
2-3.呼量の削減
呼量の削減も、課題として挙げるコンタクトセンター(コールセンター)が多いです。
呼量が多いと顧客の待ち時間が長くなり、不安や不満が高まります。さらに、長い時間待っていた顧客の問い合わせに対する応対はオペレーターの負担もかさみます。
そのため、いかに呼量を削減するかが、良質で安定的なコンタクトセンター運営にとって重要になるのです。
そこで顧客の自己解決を促す環境を生成AIで整備することで、呼量の削減につながります。
生成AIが搭載されているチャットボットを活用することでオペレーターが対応しなくても顧客が自身で問題解決しやすくなります。
3.コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する方法6つ【事例】
2章では、生成AIがコンタクトセンター(コールセンター)の課題解決につながるとお伝えしました。次に3章では、その具体的な方法を見ていきましょう。
コンタクトセンターで生成AIを有効活用する方法には、以下のようなものがあります。
どの程度の改善効果があるのかを具体的にイメージしていただくために、実際の事例を紹介しながら解説していきます。
3-1.応対履歴の要約
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する1つめの方法は、応対履歴の要約です。
オペレーターと顧客の会話内容を音声認識ツール:transpeechを用いてテキスト化し、そのテキストを生成AIによって自動的に要約して応対履歴とする方法です。
それぞれのオペレーターがテキストデータを要約することに比べて、所要時間が大幅に削減できるほか、品質のばらつきをなくすことにもつながります。
トランスコスモスの事例では、導入1か月で応対ログの作成時間が280時間/月 削減することができ、更に導入3か月で785時間/月 の削減に成功しています。
このように生成AIを活用すると、コンタクトセンターに蓄積する大量の音声データを自動的に要約テキストへと変換してくれるため、適切な応対履歴を手間なく作成することができます。
3-2.オペレーターの応対サポート
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する2つめの方法は、オペレーターの応対サポートです。
生成AIがオペレ‐ターの応対をリアルタイムでサポートするやり方には、主に以下の2つがあります。
・顧客との会話内容や相手の感情を解析し、適切な応対方法や注意喚起をポップアップ表示する |
このようなサポートを受けることで、オペレーターは顧客のニーズを把握しやすくなり、難しい問い合わせにもスムーズに対応することが可能になります。
トランスコスモス株式会社では、オペレーターが応対中に生成AIを呼び出して質問すると、生成AIが過去の社内ドキュメントなどを参照して回答するというシステムを導入しています。
その結果、難しい問い合わせでも顧客を待たせず即座にオペレーターが回答できるようになり、専門知識を持つスタッフへ質問を引き継ぐエスカレーションを6割削減できる見込みだそうです。
参考:日経クロステック「コールセンターが生成AIで効率化、トランスコスモスは「エスカレーション」6割削減」
生成AIによるサポートは、質の高い応対を効率的に提供することにつながり、CX(顧客体験価値)の向上やオペレーターの生産性向上に寄与します。
3-3.オペレーターの教育・トレーニング
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する3つめの方法は、オペレーターの教育・トレーニングです。
「2-1.オペレーターの育成」でも触れましたが、生成AIによって作成された質の高いコンテンツを参照したり、応対に必要な知識を生成AIから得たりすることで、オペレーターがスキルアップしやすくなります。
さらに、コンタクトセンターのロールプレイングをAIに置き換えることで、管理者工数の負担を削減させながら、オペレーターの業務知識定着率を高め、デビューまでの研修期間短縮やオペレーション品質の維持向上につながります。
導入効果としては、新人オペレーターがデビューまでに経験するロールプレイングの回数を従来の管理者による実施と比較して10倍に伸ばしつつ、管理者の教育に掛かる工数を大幅に削減することで全体のコスト最適化にも寄与します。
生成AIは応対履歴入力の省力化や応対サポートに役立つだけではなく、その過程を通してオペレーターのスキルを向上させるという役割も果たします。
3-4.チャットボットによる自動応答
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する4つめの方法は、チャットボットによる自動応答です。
生成AIが登場する以前も、ルールに基づいて回答する「シナリオ型」や学習データの中から正解を探して回答する「AI型」のチャットボットは存在していました。
これらのチャットボットと生成AI型のチャットボットとの違いは、事前に用意していた回答以外にも対応できる点にあります。
生成AI型のチャットボットは、顧客からの質問に対する答えを自ら生成するため、想定外の質問にも柔軟に対応することで迅速な問題解決を実現します。
また、まるで人間のような自然な文章で回答するとともに、多言語にも対応できるため、顧客に安心や満足を感じてもらいやすくなります。
トランスコスモス株式会社では、コンタクトセンターのアウトソーシング業務の強化のために生成AIを積極的に活用しています。
アジア最大規模のコールセンター応対ノウハウを結集し、生成AIを活用したチャットボット「trans-AI Chat」を独自開発、コンタクトセンタープラットフォームへの搭載を開始しました。
生成AIの活用により、オペレーターから管理者へのエスカレーション対応時間を38%までに短縮することや、オペレーターの問い合わせ応対後の応対履歴作成時間を17%までに短縮することに成功しています。
参考:トランスコスモス、企業と顧客接点のCX最適化を実現するDXプラットフォームに生成AIチャットBot「T-GPT」を追加
生成AIを搭載したチャットボットの活用によって、オペレーターにつながなくても解決できる問い合わせが増え、業務の効率化とCXの向上が期待できます。
3-5.FAQなどコンテンツの自動作成
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する5つめの方法は、FAQなどコンテンツの自動作成です。
生成AIは、商品情報や応対履歴などの学習データを基に、以下のようなコンテンツを自動的に生成することができます。
・FAQ |
コンテンツ作成に生成AIを用いると、手作業に比べて大幅に作業時間を短縮できるほか、最新の情報に基づいた正確で一貫性のあるコンテンツを作りやすくなります。
日本電気株式会社(NEC)は、顧客対応マニュアル・応対履歴などの資料や実績を基に、生成AIによってFAQを自動作成しています。
これによって、一部のコンタクトセンターにおけるFAQ作成作業工数の75%削減を実現しました。
参考:NEC「NEC、コーポレート・トランスフォーメーション加速に向け生成AIを積極活用~セキュリティ、コンタクトセンター業務など活用を開始~」
このように、コンタクトセンターで必要となるコンテンツの作成に生成AIを活用すると、顧客のニーズに即した質の高いコンテンツを手間なく整備することが可能になります。
3-6.VOC(顧客の声)分析
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する6つめの方法は、VOC(顧客の声)分析です。
生成AIは、以下2つの理由でVOC分析を容易にし、その質を高めます。
・大量のデータの中から必要なデータを抽出し、分析に適した形式に整える |
例えば、生成AIを用いて顧客との会話内容を要約すれば、長文のテキストが要点がまとまった簡潔なデータに変わります。加えて、ボリュームや抽出の視点などが一定であるため、共通形式のデータが揃うことになります。
また生成AIは、大量のデータを素早く処理する上に、文脈から感情や意図・テーマなどを認識することができるため、目的に見合った最新のデータ収集が実現するのです。
一例として、トランスコスモスで提供しているtranspeechの対話要約AIでは、顧客とオペレーターの会話内容からご意見や苦情などのVOCを自動的に抽出し、簡潔な表現でオペレーターの参照画面に表示します。
生成AIを活用すれば、顧客のニーズを把握し問い合わせ対応のあり方を最適化するためには欠かせないVOC分析が非常に簡便になり、タイムリーな実施が叶います。
4.コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する4つのメリット
ここからは、実際に導入するとしたらどのような効果を期待できるのか確認していきましょう。
コンタクトセンターに生成AIを導入するメリットは、大きく以下の4つに集約されます。
4-1.業務を効率化できる
コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する1つめのメリットは、業務を効率化できることです。
生成AIのサポートを受けたり業務を代行してもらったりすることで、業務にかかる時間や労力が削減できます。それによって、より多くの業務をこなす・人員を減らしても業務が回るといった状態を作ることが可能になるのです。
以下は、ビジネスシーンで生成AIを使用したことがある人に対して、得られた成果は何かを尋ねたアンケート結果です。
出典:Cotra編集部「ビジネスシーンにおける生成AI利用実態調査2023」
「時間とコストの削減ができた」と回答した人が最も多くなっています。「生産性が上がった」という割合も同程度あり、業務が効率化することで生産性が向上するという図式が見て取れます。
生成AIを導入してまず感じられるメリットは、業務の効率化になるでしょう。
4-2.コストの削減につながる
コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する2つめのメリットは、コストの削減につながることです。
前述したように、生成AIを導入すると業務が効率化します。その結果、業務に必要な資源も少なくて済むようになるのです。
例えば応対履歴入力を自動化すれば、応対履歴の品質が均一化され、スーパーバイザーによるログ分析の工数も削減でき、その分の人件費が減るでしょう。
またチャットボットやFAQの充実によって顧客の自己解決率が上がり、入電が減れば、オペレーターの人数を減らして人件費を抑えることや、通話料金の削減も可能になるはずです。
実際に先程の「ビジネスシーンにおける生成AI利用実態調査2023」でも、生成AIによって「時間とコストの削減ができた」と答える人が最多であり、業務の効率化とセットでコスト削減が実現する可能性が高いといえます。
生成AIの導入には一定のコストがかかりますが、長期的な視点では十分に回収できる見込みがあるでしょう。
4-3.応対品質の底上げができる
コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する3つめのメリットは、応対品質の底上げができることです。
生成AIはオペレーターの応対の質を担保したり、スキルアップをサポートしたりします。また、ノンボイス対応の充実やVOC分析に基づいた品質改善によって、顧客のニーズに適した応対を実現することに役立つからです。
例えば経験の浅いオペレーターが多いという環境でも、生成AIとロールプレイングを実施することにより知識浸透が促進され、品質向上が期待できます。
スキルの高い人員が不足している、より顧客のニーズに応えたいと考える企業にとっても、生成AIの活用が有力な一手になるといえます。
4-4.CX(顧客体験価値)が向上する
コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する4つめのメリットは、CX(顧客体験価値)が向上することです。
CXとは、企業との接点において顧客が体験する付加価値のことです。商品やサービスが溢れてコモディティ化している現代においては、いかにCXを向上させて優位性を確保するかが企業の重要課題になっています。
前述のように、コンタクトセンターに生成AIを導入すると、顧客のニーズに即した質の高い応対が可能になります。
そこで生成AIを活用することでコンタクトセンターの高効率化とCX向上する事例を動画にしました。
「新しい車を購入し、保険の切り替えと名義変更が必要になった田中さん」への問い合わせに対し、従来のコンタクトセンターと『これからの』コンタクトセンターでの顧客体験の違いをみていきましょう。
このように顧客とのコミュニケーションの最前線を担うコンタクトセンターで満足のいく対応を受けられれば、顧客が「この企業との関わりはよい体験だった」と感じてCXが期待できます。
コンタクトセンターへの生成AI導入は、他社との差別化を図る手段にもなり得ます。
CXについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
5.コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する2つのデメリット
コンタクトセンター(コールセンター)への生成AI導入には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。デメリットもしっかりと把握しておくことで、導入後のトラブルを防ぎ、効果的な活用を実現することが可能です。
コンタクトセンターに生成AIを導入することによるデメリットは、以下の2つです。
それぞれの内容について、解説していきます。
5-1.ハルシネーション(虚偽情報の出力)へのリスク管理が求められる
1つめのデメリットは、ハルシネーション(虚偽情報の出力)へのリスク管理が求められることです。
ハルシネーションとは、AIが事実とは異なる情報を生成する現象です。
ハルシネーションによって誤った情報が提供されてしまうと、顧客が混乱したり企業の信頼を失ったりする可能性があるため、適切なリスク管理が求められるのです。
ハルシネーションは学習データが古い・不足している、AIが文脈重視で推測してしまうなどの理由で発生します。
現状完全に無くすことは難しいものの、以下のような対策を講じるのが有効だとされています。
・学習に使うデータやURLを指定して正確性を担保する |
生成AIにハルシネーションはつきものだという事実をしっかりと認識し、システマティックな管理体制を整えることで対策できるでしょう。
5-2.セキュリティ対策が欠かせない
2つめのデメリットは、セキュリティ対策が欠かせないことです。
生成AIの利用に伴って、情報漏洩が起こる可能性があるからです。この情報漏洩には、外部からの攻撃によるものと内部からの流出によるものの2種類があります。
外部からの攻撃には、チャットボットを不正に操作して個人情報や機密情報を盗み出すなどのケースがあります。また生成AIに入力した個人情報や機密情報が学習用データとして取り込まれ、回答内容に反映される形で他者に知られてしまうのが、内部からの流出です。
これらの情報漏洩を防ぐために、サイバーセキュリティツールを完備するのはもちろんのこと、データの暗号化やアクセス権限の管理を徹底し、セキュリティポリシーを策定・遵守することが不可欠になります。
6.生成AI活用は短期的視点だけではなく長期的な運用視点を持つことが重要
コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを活用し、成果を上げるためには、生成AIを調整しながらより効果的な運用を検討していくという、長期的な視点が欠かせないのです。
生成AIはその性能の高さが注目を集めるとおり、導入しただけでも業務効率化などの面で一定の効果を感じられるとは思います。
しかし生成AIとは、学習とフィードバックを繰り返すことでどんどん賢くなっていくという種類のツールです。適切に管理し活用方法も進化させていけばより大きな成果を期待できます。
実際にトランスコスモスでも、事例としてご紹介したオペレーターの応対支援に加えて、今後はチャットボットの充実やVOC分析にも生成AI活用の幅を広げていく意向です。
この視点を踏まえて、次章から「コンタクトセンターにおける生成AI活用を成功させるポイント」について解説します。
7.コンタクトセンター(コールセンター)の生成AI活用を成功させる5つのポイント
最後に、コンタクトセンター(コールセンター)における生成AI活用を成功させるためにはどうすべきかをお伝えします。
以下のポイントを押さえた取り組みを行うことで、成果の最大化を目指すのがおすすめです。
それぞれの内容について、解説していきます。
7-1.導入目的を明確にし、それに応じたツールを選定する
まずは導入の段階から、生成AIによってどのようなことを実現したいのかという目的を明確にし、それに応じたツールを選定することが重要です。
目的が明確で、それに見合ったツールを導入できると、期待する成果を上げやすくなるからです。
例えばチャットボットによる対応を充実させたいのであれば、学習用データやFAQ作成も管理してくれるツールだと効率的に成果を最大化できるでしょう。
自社の業務内容・フローをしっかりと棚卸しした上で、どの業務に生成AIを活用するのが最も効果的なのかを試算し、最適なツールを検討するようにしてください。
7-2.最適化には時間がかかることを認識し、継続的に調整する
生成AIの最適化には時間がかかることを認識し、継続的に調整するのも重要なポイントです。
学習データやモデルをこまめに見直すことで、生成AIのパフォーマンスが向上するからです。
例えば有効量の学習データを蓄積したり、最適な利用方法を模索したりするには、相応の時間がかかります。しかし、焦らずに取り組んでいくことが、活用のあり方を最適化することにつながっていきます。
利用しながら評価と改善を繰り返し、方法や機能をブラッシュアップしていければ、より大きな成果を得られるでしょう。
7-3.安全に活用するためのシステムやルールを設ける
安全に活用するためのシステムやルールを設けることも不可欠です。
「5.コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する2つのデメリット」で解説したように、生成AIの活用にはハルシネーションや情報漏洩といったリスクがあります。
データを適切に管理し、顧客に正確な情報を提供するためには、それらを担保するための環境整備が必要です。
セキュリティツールや活用マニュアルなどのハード面のほか、「どう使うか」「何をしてはいけないか」が明確に周知・徹底できるような従業員教育についても考えていくことが求められます。
7-4.人間とAIが効果的に連携できる導線を整える
コンタクトセンター(コールセンター)での生成AI活用においては、人間とAIが効果的に連携できる導線を整えましょう。
それが、顧客のニーズに応じた質の高い対応を実現することにつながるからです。
生成AIは学習を繰り返してその精度を上げていきますが、どんなに難しい問い合わせにも対応できるようになるわけではありません。複雑な内容には、どうしてもオペレーターの対応が必要になります。
そのため、生成AIが単独で対応できなくなった場合に、スムーズに有人対応へと切り替えられるようにしておくのが効果的です。
顧客が対応方法を選べるようにするともに、AIからオペレーターへのエスカレーション機能を設定しておくことが、CXの向上につながります。
7-5.外部サポートを有効活用する
コンタクトセンター(コールセンター)への生成AIの導入・活用にあたっては、外部サポートを有効活用することをおすすめします。
生成AI活用のノウハウをもった企業にサポートしてもらうことで、スムーズかつスピーディに成果を上げることが可能になるからです。
生成AIをうまく活用していくためには、その機能や特性・ベストプラクティスなどについて相応の知識を持ち、プロジェクトを牽引する人材が必要です。しかし、自社内でその人材を確保するのは難しいというケースは少なくありません。
そこで外部サポートを利用すれば、人材不足に悩むことなく確実に取り組みを進めることができます。学習データやモデルの調整もサポートしてもらうことで、生成AIの精度はどんどん向上するでしょう。
コンタクトセンターへの生成AI導入を意識したら、まずは気になるサポート会社をいくつかピックアップして話を聞いてみてはいかがでしょうか。
コンタクトセンターへの生成AI導入にご興味がある方は |
コンタクトセンター(コールセンター)への生成AI導入を検討したいという方は、まずトランスコスモスにご相談ください。 トランスコスモスでは、国内屈指の運用経験で蓄積した音声認識活用のノウハウを基に、高い成果につながる生成AI活用術をお伝えいたします。 多くのお客様企業をサポートさせていただく中で、生成AIの活用がコンタクトセンターの生産性・VOC活用を劇的に向上させることを実感して参りました。 生成AIのことがまだよくわからないという段階からでもお役に立てますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。 |
まとめ
この記事では、コンタクトセンター(コールセンター)における生成AI活用の基礎知識について解説しました。以下に要点をまとめます。
現状、コンタクトセンターでも生成AI活用に対する意識が高まっており、実際に導入する企業が増えています。特に大手企業ではすでに顧客対応に生成AIを活用している企業も多く、その成果が出ています。
コンタクトセンターで生成AIを有効活用する方法には、以下の6つがあります。
1) 応対履歴の要約 |
コンタクトセンターに生成AIを導入すると、以下のようなメリットが得られます。
・業務を効率化できる |
一方、コンタクトセンターに生成AIを導入するデメリットは以下の通りです。
・ハルシネーション(虚偽情報の出力)へのリスク管理が求められる |
コンタクトセンターで生成AIの活用を成功させるためには、以下のポイントを押さえましょう。
・導入目的を明確にし、それに応じたツールを選定する |
生成AIは、コンタクトセンターが抱える課題を解決し、運用の質を高めることに大きく寄与するツールです。この記事の内容を参考に、ぜひ、導入を前向きに検討してみてください。