リテンションマーケティングとは、既存顧客との安定した関係を維持するためのマーケティング施策のことです。リピート購入や継続利用などを促進することで効率的に売上向上を実現できる方法として、近年注目されています。
特にサブスクリプションビジネスのように、顧客に継続利用してもらうようなサービスを提供している企業の場合は、うまく活用すると業績拡大に結びつけることができます。
しかし、どうしてリテンションマーケティングが重要なのか、導入によってどのようなメリットがあるのかをきちんと理解していないと、自社のビジネスに最大限活用することはできません。
そこでこの記事では、リテンションマーケティングを導入して自社の売上を向上させたいという人に向けて、以下の内容を詳しく解説していきます。
この記事でわかること |
・リテンションマーケティングが重要な理由 |
この記事を最後までお読みいただければ、リテンションマーケティングの重要性とメリットをしっかりと知った上で、成功させるためのポイントを正しく理解することができるので、曖昧な理解のままで間違った取り入れ方をして失敗してしまったり、導入後にうまく活用できずに困ってしまうという事態を避けることができます。
自社の重要な財産である既存顧客に対するマーケティングの効果を最大化することで、業績拡大を目指していきましょう。
1.リテンションマーケティングとは
冒頭でも解説した通り、リテンションマーケティングとは以下のようなマーケティング手法のことを指します。
リテンションマーケティングとは |
既存顧客との安定した関係を維持するためのマーケティング施策のこと。リピート購入や継続利用、購買単価向上などを促進する施策を行うことで、効率よく売上を向上させる効果がある。 |
リテンション(retention)とは、日本語に訳すると「保持・維持」といった意味を持つ単語です。新規顧客を獲得(アクイジション)するのではなく、既存顧客との良好な関係を維持(リテンション)することを重視したマーケティング手法のことを「リテンションマーケティング」と呼びます。
アクイジションとリテンションの違いは以下の図の通りです。
上記のように、アクイジション(新規獲得)の場合、目的は新規顧客を獲得するという段階までであるのに対して、リテンションの場合は、初回購入後に様々なアプローチをすることによって顧客との良好な関係を構築し、継続的な売上につなげていくことが目的となります。
そのため、顧客が一生に1回から数回程度しか利用しないようなサービス(住宅の売買や結婚式など)を提供している企業よりも、SaaSのサブスクリプションや通信販売などのように継続的に利用するサービスを提供している企業の場合は、特にリテンションマーケティングをうまくとり入れていく必要があります。
1-1.リテンションマーケティングの例
リテンションマーケティングの具体例としては、以下のようなものがあります。
リテンションマーケティングの例 |
・クーポン |
典型的な方法としては、クーポンやポイント、お得なキャンペーン情報などのメリットを提示することで既存顧客の利用を促進するというものがあります。
一度でもそのサービスを利用したことのある人は、そうでない人たちよりも再度購入する可能性が高いため、効率よく売上につなげることができます。
「リピーター限定クーポン」や「お誕生日月だけポイント2倍」などの特別感のあるオファーを提示するのが有効です。
また、過去の購入履歴などを元にその顧客が興味を持ちそうな商品やサービスをレコメンドするのも、リテンションマーケティングの一例です。
例えばNetflixなどの動画コンテンツ配信サービスでは、その人の視聴履歴に応じて次に気に入りそうなコンテンツをおすすめ表示します。そうすることによって顧客は常に、自分の観たいコンテンツにアクセスできる状態になり、サービスから退会せず継続的に利用していきます。
また、既存の得意客向けに特別な個別サービスを行って顧客のロイヤルティを高めるのも有効な方法です。
例えば航空会社などでは、年間の利用頻度等に応じて会員ランクが上がり、顧客は専用の空港ラウンジを利用できたり優先的にチェックインできたりするシステムをとり入れています。
こうしたサービスがあると、顧客は「積極的にこの会社のサービスを利用しよう」という気持ちになるため、継続的に良好な関係を築いていくことができるのです。
1-2.カスタマーマーケティングとの違い
リテンションマーケティングに似た概念として「カスタマーマーケティング」という言葉もあります。
カスタマーマーケティングとは、顧客獲得後に行うマーケティング活動の全てのことを指します。
カスタマーマーケティングとは |
顧客を獲得した後、顧客に対して実施する全てのマーケティング活動のこと |
そのため、リテンションマーケティングはカスタマーマーケティングの一部だということになります。
上記の図のように、顧客が「そのサービスを利用して成功している状態」を作るためのサポートの全てが「カスタマーマーケティング」で、その中で継続利用を促すために行う施策が「リテンションマーケティング」という位置づけになります。
そのためリテンションマーケティングを行うときは、「継続利用を促すこと」だけを重要視するのではなく、「あくまでも顧客の成功のために行っている施策の一部なのだ」と認識しながら施策を行っていくことが大切になります。
1-3.リテンションマーケティングの流れ
リテンションマーケティングの基礎知識として、実際に行うときのおおまかな流れについても理解しておきましょう。
リテンションマーケティングは、以下の4段階のステップの繰り返しによって実施されます。
リテンションマーケティングの流れ |
・STEP1:顧客を分類する |
STEP1では、まずは既存顧客を分類してランク付けをするところから始めます。
まだ1度しか利用したことのない顧客と、既に何度も利用していてある程度自社サービスへの信頼感を持っている顧客とでは、実行すべき施策が異なってきます。そのため、最初にこの分類を行うことが大切なのです。
次にSTEP2では、分類に応じて適した施策を実行します。
例えば、1度しか利用していない顧客に対してはサービスの理解促進に役立つキャンペーンの案内を行い、既に数回購入している顧客に対しては、利便性の向上に役立つオプションサービスのクーポンを提示する、などのやり方があります。
STEP3では、実際に行った施策が本当に有効だったのか?を知るために効果測定を実施します。
具体的には、送信したメールによって何パーセントの人が追加購入に至ったか、サービス解約率をどの程度下げられたか、といった観点でチェックを行います。
そして最後にSTEP4として、実施してきた施策によって顧客の行動がどのように変化したかを確認し、あらためて分類し直します。
例えば、サービスを一度だけ利用してその後は継続していなかった顧客が、こちらからのアプローチによって再度利用を開始した場合、その顧客のランクは「一度しか購入していない顧客」から「2回以上購入した顧客」という風に変更されます。
このようにリテンションマーケティングでは、こまめに顧客の分類を見直すことによって、より精度の高いアプローチを目指していきます。
2.リテンションマーケティングが重要な理由
リテンションマーケティングについて知っておくべき基本的な知識について解説してきたので、概要についてはご理解いただけたと思います。しかし、リテンションマーケティングをうまく活用して成功につなげるためには、その重要性も正しく理解しておくことが大切です。
リテンションマーケティングが近年重要視されている理由は、「新規顧客を獲得するよりも既存顧客の維持に注力をしたほうが効率よく売上につながるから」です。
実際にどのくらい効率が異なるのかというと、戦略系コンサルティングファームとして有名なBain&Companyのフレデリック・ライクヘルド氏によると、「新規の顧客を獲得するコストは、既存の顧客を維持するコストの5倍かかる」とされています。これは「1:5の法則」と呼ばれていて、マーケティング業界ではよく知られた法則となっています。
これは、新規の顧客を獲得するためには、広告や宣伝、初回割引キャンペーンなどで多大なコストがかかりますが、それに対して既存顧客のフォローにはそこまで多くの費用はかからないため、同じ売上を獲得するためには大体1/5くらいのコストで済む、ということを意味しています。
このように、効率よく売上を増やしていくためには、新規顧客の獲得ばかりに予算を投じるのではなく、一度購入してくれた確度の高い顧客に対するアプローチを適切に行うリテンションマーケティングに注力したほうが、より有効だといえるのです。
3.リテンションマーケティングを実施するメリット5つ
リテンションマーケティングの重要性についてご理解いただけたと思いますので、次に、実際にとり入れるとどのようなメリットがあるのか、という点を詳しく解説していきます。
享受できるメリットを正しく理解することで、方向性を間違えることなく有効な施策を検討していくことができます。
リテンションマーケティングを実施するメリットは、以下の5つです。
リテンションマーケティングを実施するメリット |
・LTV(顧客生涯価値)の向上につながる |
早速詳しく見ていきましょう。
3-1.LTV(顧客生涯価値)の向上につながる
リテンションマーケティングによってその顧客が何度も自社のサービスを利用してくれると、LTV(顧客生涯価値)の向上につながります。
LTVとは、その顧客が最初にサービスを利用した時から終了するまでの間に企業にもたらす利益のことを指します。長期的な企業の収益性をはかる指標として、近年多くの企業が活用している重要な指標です。
LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)とは |
その顧客と取引を開始してから終了するまでの間に得られる利益のこと。サブスクリプションサービスでは、このLTVを最大化することが1つのゴールとなる。 |
LTVを計算するための方法には、いくつかパターンがありますが、例えば以下のような数式で表されます。
・LTV = 平均顧客単価 × 平均購買頻度 × 平均継続期間
つまり、リテンションマーケティングによって既存顧客の購入単価や購入頻度、継続してくれる期間を高めると、LTVが向上していくのです。
特に1人の顧客に何度も利用してもらう必要がある商材を取り扱っているような場合には、このLTVを高めていくことは最も重要なことになります。
そのため、サブスクリプションサービスや通信販売などを行っている企業の場合は、リテンションマーケティングをうまく活用すると大きなメリットを得られるでしょう。
3-2.優良顧客の育成により売上が安定する
リテンションマーケティングによるメリットの2つ目は、優良顧客を育成することで売上が安定するという点です。
既存顧客リストの中には、トライアルとしてお試しサービスを1回しか利用していないような顧客と、毎月継続して高単価なサービスを利用してくれている顧客が混在していると思いますが、後者のような顧客は安定的な売上につながる優良顧客です。
効率よく売上を増やすためには、こういった優良顧客を増やしていくことが大切です。
リテンションマーケティングでは、既存の顧客を優良顧客へと育成するために以下のようなアプローチを行っていきます。
既存の顧客を優良顧客へと育成するために行うアプローチ |
・より高級なサービスへの変更を提案(アップセル) |
上記のような方法で、より購入金額や購入頻度の高い優良顧客を増やすことができると、新しい売上を獲得するために多大な費用をかけずに済むため、会社全体の利益率が向上します。
このように、既存顧客へのアプローチによって優良顧客の育成を行うことができるという点も、リテンションマーケティングのメリットの1つだといえます。
3-3.休眠顧客を掘り起こすことで売上を増やせる
既存顧客の中には、ここしばらくサービスを利用していない顧客(休眠顧客)も多く存在すると思います。そんな休眠顧客は、一度は自社サービスに魅力を感じて利用してくれたことがあるという点で、ゼロから自社のサービス理解を深めていかなければならない新規顧客と比べて有効なアプローチ先です。
リテンションマーケティングを活用すると、そんな休眠顧客をうまく掘り起こして再度サービス利用を促すことができるため、効率よく売上につなげることができます。
このような優良顧客の育成や休眠顧客の掘り起こしには、コンタクトセンターを活用し、電話やメールで顧客へアプローチを実施していく施策が有効です。
しかし、膨大な顧客データを手作業で属性別に分類していくのは工数がかかってしまいます。そこでおすすめなのが、トランスコスモスで提供しているコンタクトセンター(コールセンター)システム「contact-link」です。
既に自社で保有しているリストを取り込み、架電状況などの管理を効率的に行うことができるため、「現状のやり方では作業が非効率的でうまく管理できていないため改善したい」「エクセルでの顧客管理に限界を感じているためシステム化したい」といった要望をお持ちの企業様におすすめのサービスです。
ご要望にあわせた最適なソリューションをご提案しますので、詳しくは以下のページからお問い合わせください。
3-4.既存顧客の発信する評判を通じて新規顧客を増やせる
リテンションマーケティングの4つ目のメリットは、既存顧客の発信する評判を通じて新規顧客を増やせるという点です。
これは、リテンションマーケティングが直接的に新規顧客を増やすという意味ではなく、以下のように既存顧客との良好な関係を維持して満足度を高めることによって、間接的に新規の顧客を増やす効果が見込めるという意味になります。
特にサブスクリプションサービスのように長い期間利用するサービスの場合、見込み客は既に利用している人の口コミを参考にして、利用するかどうか意思決定することが多いです。
そのため、そのサービスに満足している既存顧客を増やすことによって、見込み客に「このサービスを利用した人がこんなに満足しているなら間違いない」と思わせることができるのです。
コンタクトセンターを活用したSNSサポートも有用です。既存顧客が使ってみたら最高だったといったポジティブに投稿した内容に関して、企業アカウントからお礼を兼ねてリプライをしていくことで自社商品・サービスのメリットなどを広めることが可能になります。
このように、間接的に新規顧客の獲得に貢献できるという点も、リテンションマーケティングのメリットだといえます。
SNS運用サポートを検討される方はこちらからご相談ください。
3-5.サービスの改善や新商品開発に有益な情報を得られる
最後は、企業全体として中長期的なサービス提供を考えたときに特に重要性が増してくるメリットです。
それは「サービスの改善や新商品開発に有益な情報を得られる」という点です。
自社のサービスを長く利用してくれている既存の顧客からは、質の高いフィードバックを得ることができます。1度しか利用していない顧客の意見ももちろん大切なものではありますが、何度も利用している顧客からのリアルな意見には、他の顧客にも継続的な利用を促すためにはどうしたらよいのかというヒントが詰まっています。
満足してもらえている点は、そのサービスのコアとして引き続き質を落とさないように提供しつづけて、逆に不満足と評価された部分は改良していくことで、その点がネックとなり離脱してしまった顧客をつなぎとめたり、導入を迷っていた他の顧客を獲得することができます。
また、こういった情報は、新商品の企画や新規事業の開発にも役立ちます。
このように、既存顧客から得られる情報を利用して自社サービスのブラッシュアップにつなげられるという点も、リテンションマーケティングのメリットのうちの1つです。
4.リテンションマーケティングを成功させるためのポイント6つ
リテンションマーケティングのメリットについて詳しく解説してきましたが、「こんなにメリットがあるなら早速導入しよう!」となると思いますが、その前に準備が必要です。
リテンションマーケティングは、データ分析と施策実行をロジカルに繰り返していくものであるため、準備不足な状態でやみくもにとり入れると失敗する可能性が高くなってしまいます。
そこでこの章では、導入前に必ず知っておくべき「リテンションマーケティングを成功させるためのポイント」として以下の5つを紹介していきます。
リテンションマーケティングを成功させるためのポイント5つ |
・最初に成果指標を明確にする |
詳しくは以下の通りです。
4-1.最初に成果指標を明確にする
せっかく様々な施策を行ったとしても、その効果があったのかどうかがわからなければ、そのまま継続すべきか改善すべきか中止すべきかの判断を正しく行うことができず、効果のない施策に無駄なコストをかけ続けてしまうという事態を招く場合があります。
それを避けるために重要なのが、最初に成果指標を明確にしておくというものです。
目標となる数値がはっきりしていれば、そこに到達していない理由の推測や、追加で投じるべき予算の算出などをしっかり行うことができます。
リテンションマーケティングでよく使われる指標としては、以下のようなものがあります。
①リテンションレート(既存顧客維持率)
リテンションマーケティングを実施する上で最初に必ず確認しておきたい指標が、リテンションレートです。
リテンションレート(既存顧客維持率)とは |
・リテンションレート(既存顧客維持率)とは ・算出式 |
例えばその期間の初日に新規顧客が100人増えて、60日後に再利用していた顧客が30人だった場合は、「60日後のリテンションレートは30%」ということになります。
対象とする期間には決まりがないため、1年ごと、四半期ごと、1ヵ月ごと、1週間ごとなど、自社に合う期間を設定します。SaaSのように申し込みと解約が多いようなビジネスモデルの場合は、1日ごとに測定して推移をチェックしていることもあります。
自社の過去の数値や、競合他社の数値などを参考にして自社の目標を設定していくと良いでしょう。
②チャーンレート(解約率)
リテンションレートが「継続している顧客」に着目した指標であるのに対して、「解約した顧客」に着目したのがチャーンレートです。
チャーンレート(解約率)とは |
・チャーンレート(解約率)とは ・算出式 |
例えば、11月末の顧客数が100名で、12月中に解約した顧客が10名だった場合は、「10÷100×100」でチャーンレートは10%ということになります。
こちらも対象期間は自社で分析したい期間を設定すると良いでしょう。
月次の平均は、SaaSの場合は4~6%、消費財の場合は9~10%程度が目安というデータもありますが、サービス内容やビジネスフェーズ(サービス立ち上げ初期かどうか)、主要ターゲット(BtoBか、BtoCか)によっても異なるため、まずは自社の実態に即した目標を立てると良いでしょう。
③NPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)
顧客のロイヤルティの高さを数値化したものが、NPS(ネットプロモータースコア)です。
NPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)とは |
・NPS(ネットプロモータースコア)とは ・算出式 |
特徴としては、購入回数や金額などを元に計算するのではなく、顧客に対してアンケートを行う必要があるため、少し手間がかかるというデメリットがあります。
また、日本では高得点をつける人が少ないため、評価がマイナスになりやすいという特徴があります。
重要なのは、1回の調査結果で良し悪しを判断するのではなく、定期的に調査を実施して数値の推移を確認することです。
それによって、より顧客ロイヤルティを高めるためにはどうしたらよいのかを考えたり、自社のサービス水準の管理基準として使用したり、という風に活用していくのが良いでしょう。
④LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)
3章でも紹介したLTVは、リテンションマーケティングの効果を測定する上で最も重要な指標です。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは |
・LTV(顧客生涯価値)とは ・算出式(複数あり) |
LTVは、リテンションマーケティングの成果を総合的に表すものです。算出のための式は上記のようにいくつかあるため、自社のサービスに合うものを選びましょう。
最も基本の式が①で、「平均顧客単価」と「平均購買頻度」「平均継続期間」と全てかけ合わせて算出します。
例えば、1ヵ月5,000円のサービスを平均で3年間継続してくれる場合のLTVは、「5,000円×12回/年×3年=180,000円」ということになります。
②の式は、顧客1人当たりの利益を考慮して算出する方法です。
年間60,000円分のサービスを利用してくれていて、利益率が60%、平均継続期間が3年の場合は「LTV=60,000円×60%×3=108,000円」というように算出します。
③の式は、売上と費用を分けて算出するため、費用対効果を考慮した施策をとりやすくなるのが特徴の式です。
例えば平均購入単価が5,000円、平均購入回数が12回の場合、売上は60,000円となります。そして新規顧客の獲得に3,000円、顧客維持費用として1,000円かかる場合、総費用は4,000円となります。すると、「LTV=60,000円-4,000円=56,000円」ということになります。
LTVはサービスの価格やコスト構造等によって異なるため、自社の実態に即した数値目標を設計するのが良いでしょう。
また、ここで紹介した以外にも既存顧客の継続利用に繋げる為の指標もありますので、自社の実態に沿った目標を設定していくことが重要になってきます。
4-2.データを効率よく収集・分析する
リテンションマーケティングを成功させるために重要な2つ目のポイントは、データを効率よく収集・分析するということです。
既存顧客との良好な関係を継続するためには、以下のようなデータを集めて分析し、管理し続ける必要があります。
リテンションマーケティングで活用するデータの例 |
・顧客の過去の購入履歴 |
しかしこのようなデータは、手作業で収集して分析するとなると膨大な手間がかかってしまいます。
さらに人の手による作業はミスも招きやすいため、リテンションマーケティングを失敗なく行うなら、データ処理やマーケティング活動をサポートしてくれるシステムを活用するのがおすすめです。
リテンションマーケティングに役立つツールとしては、例えば以下のようなものがあります。
リテンションマーケティングに役立つツール |
・MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション) |
MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、顧客獲得や育成のためのマーケティング活動を可視化したり自動化したりするのをサポートしてくれるシステムです。
顧客へ行った施策に対する反応(メールを開封したのかしていないのか、など)がわかるため、効率よくアプローチを進めることができます。
SFA(セールスフォースオートメーション)は、顧客に対して電話で話した内容やアプローチ状況などを社内で共有して管理するためのツールです。
複数の担当者で同じ情報を共有できるため、引継ぎ漏れなどを防ぎ、質の高いアプローチを効率的に進めることができます。
CRM(カスタマーレレーションシップマネジメント)は、顧客情報の管理をサポ―トしてくれるシステムです。
顧客の属性や、どのようなメールを過去に送ったか、どのキャンペーンに参加してくれたか、などの情報を一元管理することができるため、顧客と自社とのつながりを可視化することが可能になります。
このようなマーケティングツールを活用することで、効率の良いリテンションマーケティングを実現していきましょう。
4-3.顧客の分類に合わせて施策を変える
成功のために重要なポイントの3つ目は、「顧客の分類に合わせて施策を変える」という点です。
顧客の元には日々たくさんのダイレクトメールが届きます。その中で自社のメールを開いてもらい内容に興味を持ってもらうためには、顧客の求めている情報や関心のありそうなオファーを精度高く提供する必要があります。
自分向けの情報だと感じてもらえないと、件名だけで「自分には関係のない情報だ」と思われて、開封されることなく削除されてしまうためです。
そんな状況に陥るのを避けるためには、顧客をうまく分類してそれぞれに合った施策を実施することが非常に重要となります。
顧客をランク付けして分類するためによく用いられるのが「RFM分析」という方法です。以下の3つの指標を用いて顧客を分析します。
RFM分析を行う際の3つの指標 |
・R(Recency):直近の購入日 |
それぞれの指標ごとに以下の図のようなイメージで5段階のランクに分けて、スコアが「5」の顧客が、最も優良な顧客だというように分類していきます。
こういった分類を行うことで、よりその顧客に合った施策を実施することができるようになります。
例えば直近の利用日が1ヵ月以内の顧客グループに対しては、サービスを利用する上で役に立つ情報を中心に送って関係性を構築していったり、購入金額が大きな顧客グループに対しては、お得意様限定キャンペーンなどの情報を提供することで特別感を出して利用促進を進めていったりします。
このようにそれぞれの顧客に合った戦略を立ててアプローチを実施していくことで、リテンションマーケティングはその効果を最大限に発揮することができるようになるのです。
より契約につながりやすい顧客を効率よく絞り込みたいというときは、「DataRobot」という機械学習自動化AIプラットフォームを利用するのがおすすめです。
Datarobotを使うと、既存の顧客リストを読み込み相関関係を分析することで、より確度の高いリストをスコア化することができます。売上向上につながりやすい顧客とそうでない顧客を自動でスコア化することが可能になるため、リテンションマーケティングを実施していく上では非常に有効なシステムだといえるでしょう。
DataRobotについて詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。
4-4.実行した施策の効果測定と改善を繰り返す
リテンションマーケティングは「一度施策を実行したらそれで終わり」というものではなく、常に効果測定と改善を繰り返していくことで成果があらわれてくるものです。
そのため、「4-1.最初に成果指標を明確にする」で紹介した指標の中から、自社で管理していきたい指標を選び、週に1回、月に1回、などと頻度を決めて推移をチェックしていくようにしましょう。
その中で、なかなか効果が出ない点が見つかればどんどん改善を行いPDCAサイクルを回していくことが大切です。
一番意味がないのは、最初に決めた施策を何も考えずにそのままやり続けることです。顧客に対して何かアクションをとると結果は必ず数字として表れるのに、それを活かさないのはもったいないことです。
メールの開封率が悪かったのならタイトルのつけ方を変更してみる、メールの途中までしか読まない人が多かったなら重要な内容を一番最初に持ってくるようにする、キャンペーンリンクを踏むところまでは良かったがその後申し込みに至らなかったのなら申し込みページの動線を変更する、など、改善できる箇所は必ずどこかに存在します。
定期的な効果測定によって結果を確認し、常に改善を繰り返すことで、より有効なリテンションマーケティングを実現していきましょう。
4-5.得られたデータをもとにサービス改善などにつなげる
リテンションマーケティングを成功させるためには、その過程で得られたデータをサービス改善に活かすことも重要になります。
継続して自社サービスを利用してもらうためには、顧客がそのサービスに対して満足しているという状態をキープしなければなりません。
そのためには、実際の顧客の行動を分析して得られたデータを元に、より満足度を高めるための策を講じていくことが大切です。
例えば動画配信サービスとして有名なNetflixでは、ユーザーがどんなコンテンツを観たのか、あるいは観なかったのか、どのくらいの速度で、どんなデバイスで、1日のうちのどの時間帯に観たのか、などの細かい行動を分析しています。
そしてそれらのデータを元にして、ユーザーごとにおすすめのコンテンツをレコメンドすることでサービスの利便性を向上させているのが、Netflixの強みなのです。
実際に、ユーザーが視聴したコンテンツの大多数(75%前後とみられる)はレコメンドシステムによって選ばれたものだったそうで、多くのユーザーがこのサービスに魅力を感じているということがわかります。
このように、顧客の行動データをもとに有効な施策を検討して実行することで継続利用率が高まり、LTVの向上につなげていくことができるのです。
4-6.コンタクトセンターを有効活用する
リテンションマーケティングを成功させるためには、既存顧客との関係性を構築し続けることが重要になります。
そのため、普段から顧客と接点を取り続けることが出来るコンタクトセンターで、顧客をサポートしつつ様々な施策を実施していくのが重要になります。
「3-3.休眠顧客を掘り起こすことで売上を増やせる」で紹介した休眠顧客へのアクションや「3-4.既存顧客の発信する評判を通じて新規顧客を増やせる」で紹介したSNSサポートだけでなく、顧客サポート全般を対応しているコンタクトセンターであれば、顧客データだけでなくサービスに対しての満足度など顧客状況等もヒアリングしていくことが容易です。
リテンションマーケティングを検討される際は、コンタクトセンターの活用方法を考えなおすのも良いでしょう。その際には、トランスコスモスであればコンタクトセンターを有効活用するための、現状診断から再構築、運営までお手伝いすることが可能です。
興味のある方はこちらからお問い合わせください。
またリテンションマーケティングを成功させるためのコンタクトセンター運営に関しては、こちらの記事も参考になりますので、ご一読ください。
まとめ
リテンションマーケティングとは以下のようなマーケティング手法のことを指します。
リテンションマーケティングとは |
既存顧客との安定した関係を維持するためのマーケティング施策のこと。リピート購入や継続利用、購買単価向上などを促進する施策を行うことで、効率よく売上を向上させる効果がある。 |
この記事では、リテンションマーケティングを導入して自社の売上を向上させたいという人に向けて、以下のようにその重要性やメリット、成功のためのポイントをお伝えしてきました。
リテンションマーケティングが重要な理由 |
新規顧客を獲得するよりも既存顧客の維持に注力をしたほうが効率よく売上につながるから |
リテンションマーケティングを実施するメリット |
・LTV(顧客生涯価値)の向上につながる |
リテンションマーケティングを成功させるためのポイント |
・最初に成果指標を明確にする |
最後までお読みいただいたことで、リテンションマーケティングを正しくとり入れて自社ビジネスに活かしていくイメージを持つことができたのではないでしょうか。
自社の既存顧客へ効率よくアプローチを行うことで、LTVを高めて売上拡大を目指していきましょう。