
「パーソナライズという言葉を聞くけれど、どんな意味?」
自社でもマーケティングにパーソナライズを取り入れるか検討しているが、どんなことができるのか具体例が知りたい」
マーケティングに関わっていてそんな疑問を持っている方も多いでしょう。
パーソナライズとは、“顧客一人ひとりの属性、興味、行動履歴などに応じて最適な情報や商品、サービスなどを提案・提供するマーケティング手法”を指す言葉です。
これまでは、市場全体に向けて同じ情報や広告を発信する“マスマーケティング”が行われていましたが、消費者のニーズが多様化するにつれて、アプローチの方法も個々人に合わせて変えていく必要が生じ、パーソナライズが注目されるようになりました。
パーソナライズの主な手法としては、以下のようなものが挙げられます。
・パーソナライズド広告 |
これによって、企業は以下のようなメリットが得られます。
・顧客のニーズにより的確に応えられる |
ただ、実施する際には以下のようなリスク、注意点に気をつけなければなりません。
・精度の高い顧客情報を集めるのは難しい |
そこでこの記事では、パーソナライズについて知っておきたいことをまとめました。
◎「パーソナライズ」の意味 |
最後まで読めば、知りたいことがわかるでしょう。
この記事で、あなたの会社でもパーソナライズを活用して顧客満足度を向上させられるよう願っています。
1.パーソナライズとは
近年、マーケティングにおいて注目度が急上昇しているのが“パーソナライズ”という手法です。
まずその意味を正しく把握するところから始めましょう。
1-1.「パーソナライズ」の意味とは?
「パーソナライズ=personalize」とは、「個別化する」「個人的なものにする」といった意味を持つ英語の動詞です。
マーケティングにおいては、顧客一人ひとりの属性、興味、行動履歴などに応じて最適な情報や商品、サービスなどを提案・提供する手法を指します。
かつての「大量生産・大量消費」の時代には、大衆(=mass)の最大多数に向けて同じの製品・サービスを大量に販売、広告するマスマーケティングの手法が主流でした。
しかし、インターネットの普及などにより消費者がさまざまな情報を手に入れることができるようになり、ニーズも多様化したことなどから、マスマーケティングは時代に合わなくなってきました。
かわって、消費者「個人=person」のニーズを把握し、それに則したマーケティングを行う「パーソナライズ」が台頭してきたというわけです。
例えば、AmazonなどのECサイトで「おすすめ商品」が表示されたことがあるかと思います。
あの機能はユーザーの過去の購入履歴や閲覧履歴などをもとに、パーソナライズされた情報です。
同じ性別、同じ年代の人であっても、それ以外の属性や行動履歴が同じでなければ、おすすめされる商品はまったく異なる、それがパーソナライズなのです。
1-2.パーソナライズの言い換え・対義語は?
パーソナライズという用語は、ビジネスシーンではマーケティング用語としてそのまま用いられることが多いものです。あえてわかりやすく言い換えるなら、
・個別化 |
などといってもいいでしょう。
「広告をパーソナライズする」という表現は、「広告を個別化する」「広告を個人に最適化する」とも言い換えられるというわけです。
一方、「パーソナライズ」の対義語は何でしょうか?
英語の「personalize」の反対語は「depersonalize」、「個性をなくさせる」「客観化する」といった意味です。
しかし、マーケティング用語としてのパーソナライズの対義語は、概ねマスマーケティングと考えてよさそうです。
これは前述したように、消費者を属性などによってセグメントせずに、すべての人に向けて画一的な情報、商品、サービスなどを提供する手法です。
パーソナライズは個人向け、マスマーケティングは全体向け、とターゲットが正反対になっています。
1-3.パーソナライズと「レコメンド」「カスタマイズ」の違い
パーソナライズと意味の似た言葉に「レコメンド」と「カスタマイズ」があります。
それぞれどう使い分けられるのでしょうか?違いを表にまとめましたので、以下を見てください。
パーソナライズ | レコメンド | カスタマイズ | |
単語の意味 | personalize | recommend | customize |
マーケティング用語としての意味 | 個人個人に最適な情報やサービスを提供する | 同じ属性、傾向の消費者向けに、適した情報を提供する | 消費者が自分で興味のある情報、必要なサービスなどを選択・設定する |
主体 | 企業側が行う | 企業側が行う | 消費者が自身で行う |
具体例 | ・ECサイトでその人個人の「購買履歴からのおすすめ」が表示される | ・ECサイトで「この商品を買った人が合わせて買ったもの」(複数の人の購買傾向)が表示される | ・SNSで表示される項目や内容などをユーザー自身が設定する |
端的にいえば、「パーソナライズ=企業が消費者一人ひとりに向けて最適化したマーケティング」「レコメンド=企業が同じ属性の人たちに向けて行うマーケティング」「カスタマイズ=消費者自身が情報を自分向けに最適化すること」だと言えるでしょう。
2.パーソナライズの主な手法6つとその事例
パーソナライズとはどんなものか、大枠は理解できたかと思います。が、「もっと具体的に、例を知りたい」という人も多いでしょう。
そこでこの章では、パーソナライズの具体的な手法から主なものを6つ紹介しておきます。
・パーソナライズド広告 |
2-1.パーソナライズド広告
みなさんが最もよく目にするパーソナライズ事例のひとつが“パーソナライズド広告”です。
Webサイトを見ていると、Webページに貼り付けられている広告とは別に、ポップアップなどでさまざまな広告が表示されることがよくありますが、あれがパーソナライズド広告です。
仕組みとしては、GoogleやYahoo! JAPANといったポータルサイトが、ユーザー 一人ひとりの閲覧履歴、購入履歴、検索履歴、位置情報、SNS情報などをもとにして、その人に最適な広告を表示するようになっています。
例えば、「引っ越しをしようか」と考えて、インターネットで物件を検索したり家賃相場を調べたりすると、そのあとに不動産会社の物件情報が広告表示されることがあります。
それも、エリアや家賃などが自分の想定に近い物件ばかりが表示されるので、思わす広告をクリックして不動産サイトに飛んでしまったりするでしょう。
これは、広告をユーザー個人に向けてパーソナライズしているためです。
パーソナライズド広告はその人の興味や関心を捉えているので、コンバージョンや購入率をアップさせる効果が期待できます。
2-2.ECサイトのレコメンド機能
もうひとつ身近なパーソナライズの例が、“ECサイトのレコメンド機能”です。
Amazonや楽天市場などのECサイトを開くと、「閲覧履歴に基づくおすすめ商品」「あなたにおすすめの商品」といった表示がされます。
これは文字通り、そのサイトで過去に購入した商品や検索履歴、閲覧履歴、お気に入りや欲しいものリストに保存した商品などの情報をもとに、「そのユーザーが欲しいであろう商品」をパーソナライズしているのです。
単純に「過去に検索した商品」を表示するのではなく、「類似商品や関連商品」や「自分が欲しいと気づいていないけれど、実は必要な商品」が表示されることもあり、購入につながりやすい手法と言えるでしょう。
ちなみにECサイトのレコメンド機能には、上記のように個人にパーソナライズしたものだけでなく、「この商品を買った人が一緒に買っているもの」といった「似たような属性の複数の人向け」の手法も使われています。
いわば「1-3.パーソナライズと「レコメンド」「カスタマイズ」の違い」で説明した「パーソナライズ」と「レコメンド」の両方を併用しているわけで、これにより、ユーザーのニーズを多角的に捉えることができるようです。
2-3.SNSのパーソナライズド表示
InstagramやX(旧Twitter)、FacebookなどのSNSで、「知り合いかも」などと特定のアカウントを提示されたり、興味のありそうな投稿や広告をおすすめされたりすることがありますが、これはSNSに“パーソナライズド表示”の機能が備わっているからです。
SNSは、個人情報のかたまりです。
ユーザーの属性はもちろん、投稿した写真やコメント、フォローしたりつながったりしている人間関係、「いいね」をした投稿、検索ワードなどの豊富な情報が集まります。
それをもとに、昔の同級生のアカウントを知らせたり、同じ趣味嗜好で親しくなれる可能性があるアカウント同士を紹介しあったり、好みに合いそうな商品やイベントをおすすめしたりと、細かなパーソナライズ表示を行うことができるのです。
これは、各SNSがユーザーの満足度向上のために行っている施策ですが、一方で個人情報やプライバシーの問題に抵触する恐れもありますので、最新の注意が必要だとも言えるでしょう。
2-4.コンテンツ配信
NetflixやAmazonプライムビデオなどの動画配信サービスやYouTubeなどの動画共有プラットフォーム、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスといったコンテンツ配信サービスでも、パーソナライズが導入されています。
ユーザーの属性や過去の視聴履歴などをもとに、興味がありそうなコンテンツをおすすめ表示する仕組みです。
このようなサービスでは、コンテンツ数が膨大なのでユーザーはどれを選ぶか迷ってしまうこともしばしばあります。
そこで、その人の好みにパーソナライズしたコンテンツを紹介することで、利用機会を増やし満足度を向上させようというわけです。
この場合、パーソナライズに利用されるデータは、ユーザーが視聴したコンテンツのジャンルや内容、出演者やアーティスト、視聴時間、視聴した時間帯、属性や好みが似た人の視聴履歴などで、それをもとにおすすめ作品が選ばれます。
例えばYouTubeやTikTokで、「ひとつの動画を見ると、似たような動画が次々自動的に再生されるので、延々と見続けてしまう」という経験をしたことのある人も多いでしょう。
これはまさにパーソナライズの目的通りの結果だと言えます。
2-5.メールのパーソナライズ
また、ダイレクトメールやメールマガジンにもパーソナライズの手法が取り入れられています。
顧客の属性、居住地域や行動エリア、購入履歴や利用履歴などに応じて、最適な情報を最適なタイミングで送信するのです。
例えば、
・過去に購入した商品情報から、興味のありそうな別の商品をレコメンドする |
といったことが可能です。
顧客全体に同じ内容のメールを一斉送信すると、開封しない顧客も多いでしょう。
が、メールをパーソナライズして、タイトルで「あなた向けの情報です」ということがわかるようにすれば、開封率のアップが期待できます。
2-6.パーソナライズド検索
もうひとつ、“パーソナライズド検索”というものも挙げておきましょう。
これは、検索エンジンが検索結果をユーザーごとにパーソナライズして表示するというものです。
その人の過去の検索履歴や直近の検索履歴、位置情報などから、検索結果をその人に最適化します。
そのため、この機能がある検索エンジンでは、同じキーワードで検索しても人によって表示される検索結果が異なる場合があるのです。
パーソナライズド検索の代表例といえば、Googleでしょう。
例えば「ラーメン」と検索すると、検索した人が今いる場所の近辺のラーメン店情報が上位にずらっと表示されることがあるでしょう。
あれは位置情報などをもとに、表示する情報を最適化しているためです。
一方で、Googleの場合は「シークレットウィンドウ」で検索するとパーソナライズされません。
パーソナライズされることで、ユーザーが望まない情報の偏りが生じてしまう恐れがあるため、客観的な検索結果を得たい場合はシークレットウィンドウを利用するといいでしょう。
3.「B to C」と「B to B」でのパーソナライズの違い
ただ、ひと口にパーソナライズといっても「B to C」向けに実施する場合と「B to B」向けとでは使い分けが必要です。その違いを表にまとめました。
B to Cの場合 | B to Bの場合 | |
パーソナライズの対象 | 消費者個人 | 企業など法人 |
購入・利用の決済に関わる人 | 本人ひとりで決められる場合が多い | 複数人・複数段階で決済することも多い |
購入・利用までにかかる期間 | 比較的に短く、即決定することも可能 | 数週間、数ヶ月かかる場合もある |
パーソナライズに利用する情報 | ・属性 | ・見込み度、関心度 |
B to Cの場合は、相手が消費者個人であり、その人自身が購入や利用を決定する場合が多いでしょう。
つまり、その個人に対してパーソナライズすることになります。
性別や年齢などの属性、興味や関心を持っていること、好み、過去に自社商品の購入履歴や利用履歴があればその内容など、集められる情報に応じてアプローチ方法を変えましょう。
一方B to Bの場合は、パーソナライズする対象が企業などの法人です。
担当者にアプローチしても、実際に商品の購入やサービスの利用を決定するのはその人ではない場合も多いため、その個人にパーソナライズするのとは異なりますので注意しましょう。
それよりも、相手が企業として自社製品や自社サービスにどの程度興味があるのか、過去に取引履歴があるならどんな内容だったか、現在の課題などどのような状況なのか、といったことを踏まえて、アプローチ方法をパーソナライズする必要があります。
また、契約成立までに時間もかかりますので、アプローチのしかたもそのときどきの相手の状況などに合わせて変えていくといいでしょう。
4.マーケティングにおいてパーソナライズが重視される理由
ここまでで、パーソナライズというマーケティング手法がどんなものか、よくわかったかと思います。
しかし、そもそもなぜいまビジネスにおいてパーソナライズが注目されているのでしょうか?
それは主に以下の2つの理由からです。
・消費者のニーズが多様化し、マスマーケティングに限界が見えた |
4-1.消費者のニーズが多様化し、マスマーケティングに限界が見えた
前述したように、かつての大量生産・大量消費の時代には、すべての消費者に向けて同じ情報、広告を発信するマスマーケティングが効果を発揮していました。
消費者の情報源も、マスメディアであるテレビ、新聞、ラジオ、雑誌などが中心だったため、マーケティングもそれらを中心に行えば、多数の人に届いて心を動かすことが可能でしたが、インターネットの登場で、この状況が変化しました。
消費者は、それまでマスマーケティングによって一方的に与えられてきた情報以外にも、多様な選択肢があることを知りました。その結果、消費者のニーズも多様化し、同じひとつの広告を発信しても効果を得にくくなってきたのです。
また、マスマーケティングの舞台であるマスメディアの影響力も低下しています。
新聞の購読数、テレビの視聴率、雑誌の発行部数などはどんどん下がっていて、その点でもマス広告の効果は以前より期待できなくなってきたと言えるでしょう。
このように、マスマーケティングの有効性に限界が見えてきたことで、かわって注目されるようになったのがパーソナライズです。
多様化したニーズに応えるには、情報も多様化していく必要があったというわけです。
4-2.顧客自身が必要な情報にアクセスできるようになった
さらに、同じくインターネットの普及によって、消費者自身がWebを通じてさまざまな情報にアクセスできるようになったのも一因です。
情報は、マス広告で“与えられるもの”ではなく、“自ら探すもの、選ぶもの”に変わってきました。
マーケティングも“見つけてもらう”“選んでもらう”方向にシフトする必要が生じたのです。
無数に溢れる情報の中で興味を惹きつけるために、消費者一人ひとりのニーズや好みに合わせたアプローチが求められるようになってきたというわけです。
5.パーソナライズのメリット
パーソナライズが注目される理由がわかりました。
では、マーケティングにおいてパーソナライズを取り入れることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
それは主に、以下の6点です。
・顧客のニーズにより的確に応えられる |
5-1.顧客のニーズにより的確に応えられる
1つ目のメリットは、顧客のニーズにより的確に応えられることです。
パーソナライズでは、顧客の属性や行動履歴などさまざまなデータをもとに、その人が興味を持つであろう情報、欲しいと思われる商品などを分析します。
つまり、マスマーケティングなどと比較して、一人ひとりのニーズをより的確に把握することができるわけです。
これをもとに、個人に合わせた情報や広告を発信するので、顧客側からすれば「自分に必要なものを教えてくれた」と感じられる可能性がグッと高まるでしょう。
5-2.顧客との信頼関係を築くことができる
また、顧客との信頼関係を築くことができるのも2つ目のメリットでしょう。
前項のように顧客のニーズに的確に応えることを繰り返していくと、顧客は「自分のことをよくわかってくれている」「必要なときに必要な情報をくれる」と感じるようになります。
その結果、「この企業は信頼できる」と関係性が深まるのです。
これにより、顧客満足度も高まりますし、ファン作りにつなげることも可能になります。
5-3.顧客の継続利用を促せる
3つ目のメリットは、顧客の継続利用を促せることです。
パーソナライズでは、顧客に発信する情報を最適化するだけでなく、タイミングも最適化する必要があります。
「欲しい情報を、欲しいときに」提供するわけです。
これができれば、顧客はその商品やサービスを継続的に利用してくれるようになるはずです。
たとえば、以前に購入した消耗品がなくなりそうなタイミングで、リニューアルして改良された新商品をおすすめされると、続けて購入する可能性は高まるでしょう。
このように、一人ひとりの状況を把握してアプローチすることで、顧客が競合他社に流れることを防ぎ、継続利用を促すことができるのです。
5-4.既存の顧客を囲い込むことができる
さらに、既存の顧客を囲い込むことができるのもメリットのひとつです。
前項のように、継続利用を促すだけでなく、別の商品の購入・サービス利用につなげたり、顧客単価をあげることも可能です。
例えば、いま購入している商品とは別に、その顧客が必要としているであろう商品や、興味を持ちそうな商品があればそれを紹介します。
その際に、「◯◯を3回以上ご購入のあなたへ20%割引」などパーソナライズしたキャンペーンやクーポンなどを提供すれば、顧客に「自分はお得意さまなのだ」という意識を持たせ、自社の優良顧客として囲い込むことができるでしょう。
5-5.潜在ニーズを掘り起こすことができる
もうひとつ、意外なメリットとしては潜在ニーズを掘り起こすことができる点も挙げられます。
企業側は、顧客のさまざまなデータを分析することで、その人に何が必要か、どんなものを好むかを知ることができますが、実はそれらは必ずしも顧客自身が自覚していることとは限りません。
パーソナライズの結果おすすめされた商品を見て、「自分は商品Aが欲しいと思っていたけれど、この商品Bのほうがもっといいな」と気づくことがあるのです。
これは、顧客自身はそれまで知ることのなかった潜在ニーズで、パーソナライズがなければ商品Bとは出会うこともなかったかもしれません。
つまり、「顧客が欲しいもの」だけでなく、「欲しいと思ってもいなかったもの」まで購入・利用につなげる可能性があるのが、パーソナライズという手法だと言えるでしょう。
5-6.マーケティング施策を効率化できる
最後のメリットは、マーケティング施策を効率化できることです。
マスマーケティングでは、不特定多数の消費者、あるいは市場全体に向けてマーケティングを行います。
そのため、情報や広告の受け手には、「その商品は必要ではない」「興味がない」という人も多く含まれてしまうのが難点でした。
その点パーソナライズを行えば、「必要な人」「興味がある人」のみに情報を届けることができます。
広告のムダ打ちなどを減らすことができ、マーケティングを効率的に行えるようになるのです。
6.パーソナライズの危険性・注意点
一方で、パーソナライズを行う際にはリスクや注意点もあります。
それは主に以下の5点です。
・精度の高い顧客情報を集めるのは難しい |
6-1.精度の高い顧客情報を集めるのは難しい
パーソナライズを正確に行うには、顧客の属性だけでなく購入履歴や行動履歴、位置情報、興味関心などできるだけ多くの情報を集める必要があります。
しかも、それらの情報に間違いがあればパーソナライズも不正確になってしまいますので、精度の高いものでなければなりません。
これはなかなか難しいことです。
例えばGoogleやAmazonなどであれば、ユーザーが利用するだけでさまざまな情報が蓄積されていきます。
一方、メーカーや小売業などの企業であれば、どのようにして情報を集めるかが問題です。
ECサイトがあればECサイトで収集できますが、ない場合は会員登録制にするなどして情報収集する必要があるでしょう。
また、顧客アンケートも有効です。
最近では、個人情報を明かしたがらない人も多いので、回答することに特典を設けるなどの工夫が求められるでしょう。
【成功のポイント】 ・ECサイトがあれば、そこから精度の高い顧客情報を収集する |
6-2.顧客が望んでいない商品・情報を提供してしまう恐れがある
情報収集と並んで難しいのが、集めた情報の分析です。
この分析が不正確だったり、「こういう人はこれが好きなはず」といった思い込みがあったりすると、顧客が何を必要としているかを見誤ってしまいます。
その結果、顧客が望んでいない商品や情報をすすめてしまい、期待した成果があげられない恐れがあるので注意してください。常にデータに基づいた客観的な分析を心がけましょう。
【成功のポイント】 ・思い込みなどを排除し、データに基づいた客観的な分析を心がけるaa |
6-3.顧客情報は状況により変遷する
もうひとつ、パーソナライズの正確性を失わせる要素として、顧客側の変化を考慮する必要があります。
顧客の興味や好み、状況は時々刻々と移り変わっていくものです。
それに対して、いつまでも同じパーソナライズ設定でアプローチし続けると、「もうこれには興味がない」「この商品は必要無くなった」など顧客本人とのズレが生じてしまうのです。
例えば、未婚のときは美容やファッションが興味の中心だった女性が、結婚後は夫婦でのおうち時間を充実させることに関心が移ることもあるでしょう。
事務職で比較的休みが取りやすかった人も、転職して忙しくなってしまうと、旅行に行ったり趣味に費やしたりしていた時間を仕事の勉強や資格取得に回すようになるかもしれません。
そうなれば、当然必要なものや欲しいものも変わってきます。
この変化を見逃さないよう、企業側は定期的に顧客情報を更新する必要があるでしょう。
【成功のポイント】 ・顧客情報は一度取得したものをそのまま利用せず、定期的に最新情報に更新する |
6-4.情報に偏りが生じると、信頼度が低下してしまう
また、パーソナライズによって提供される情報が偏りすぎてしまうことにも注意が必要です。
顧客のニーズだけに注目して情報を選別していると、同じようなものばかりを発信してしまう恐れがあります。
例えば、商品Aを何度か購入した人に、Aや類似商品Bばかりをおすすめするなどのケースです。
となると、実際はその企業はもっと多種多様な商品を扱っているとしても、顧客側はそれらについて知る機会を持てません。
さらには、顧客に「同じ商品しかすすめられない」「情報がコントロールされているのではないか」という不満や不信感を抱かせて、信頼感を損なうことも考えられます。
パーソナライズした情報を提供しつつも、その他の情報にもアクセスできる方法を用意するなど、偏りすぎないような工夫が必要です。
【成功のポイント】 ・パーソナライズした情報だけに絞り込まず、関連情報も紹介したり、他の情報にアクセスできる動線を残したりする |
6-5.しつこいと感じられてマイナスの印象を与えるかもしれない
前項とも関係しますが、情報発信の頻度にも注意が必要です。
自分の必要に合った広告でも、何度も繰り返し表示されたりDMを連打されたりすると、好印象よりも「しつこい」などのネガティブなイメージを持たれかねません。
そのようなことがないよう、顧客の反応を見ながら頻度を調整したり、内容に変化を持たせたりしましょう。
【成功のポイント】 ・情報発信の頻度が多すぎないか、顧客の反応をつねにモニタリングして調整する |
まとめ
いかがでしたか?
パーソナライズについて、知りたいことがわかったかと思います。
ではあらためて、記事のポイントをおさえておきましょう。
◎「パーソナライズ」とは、「顧客一人ひとりの属性、興味、行動履歴などに応じて最適な情報や商品、サービスなどを提案・提供するマーケティング手法」
◎パーソナライズの主な手法6つとは、
・パーソナライズド広告 |
◎パーソナライズのメリットは、
・顧客のニーズにより的確に応えられる |
◎パーソナライズの危険性・注意点は、
・精度の高い顧客情報を集めるのは難しい |
これを踏まえて、あなたの会社がパーソナライズをうまく導入し、顧客満足度を向上させられるよう願っています。