18.97.9.169

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは?具体的な対策方法と好事例

「最近ニュースで耳にするようになったカスハラとは?自社でも対策が必要なのか気になっている」
「従業員からカスハラを受けたとの声が出た、カスハラを理解したうえで具体的な対策を立てたい」

昨今耳にする機会が増えた“カスハラ”という言葉。

聞いたことはあっても「どのような定義なのか」「自社にとって対策が必要なものなのか」詳しい概要を知らない方は多いのではないでしょうか?

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先が過剰な要求をしたり暴言を吐いたりするなど悪質なクレームのことです。

通常のクレームとは異なり自社に落ち度がないにも関わらず、過度な要求をしたり暴言を吐いたりする行為がカスハラに該当します。

カスタマーハラスメントの概要

カスハラは、対応した従業員に大きな負担がかかります。
企業がカスハラ対策をしないで従業員に対応を一任すると、悪影響が出る可能性があるでしょう。

企業がカスハラ対策をしないと生まれる問題

だからこそカスハラ対策は企業の安全配慮義務の一環として認識し、カスハラの判断基準を設けて必要な対策を実施することが重要です。

そこでこの記事では、カスハラの概要や企業のカスハラ対策の必要性、具体的な対策方法をまとめて解説しています。とくに、企業が実施するべき対策は、「カスハラへの備え」と「カスハラ発生時」の2段階に分けてまとめているので必見です。

◎カスハラ(カスタマーハラスメント)とは
◎カスハラ対策は従業員を守るための「安全配慮義務」
◎カスハラ対策は今すぐやるべき!しない場合に従業員・企業に与える悪影響
◎カスハラを正しく見極めるための判定基準
◎企業が行うべきカスハラ対策の事前準備
◎企業が行うべきカスハラが起きたときの対応
◎企業のカスハラ対策の好事例
◎企業がカスハラ対策に取り組むときに知っておきたいこと

この記事を最後まで読めばカスハラとはどのようなものか理解でき、自社に必要な対策が実施できるでしょう。カスハラは増加傾向にあるので、放置していると企業にとって大きなダメージを与える可能性があります。

少しでも早くカスハラに備えるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

目次 [非表示]

1.カスハラ(カスタマーハラスメント)とは

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先が過剰や要求をしたり暴言を吐いたりするなど悪質なクレームのことです。

長時間拘束をしてクレームを言う、製品に不備はないのに不当な要求をするなどが該当します。

カスハラの例

カスハラの基準は業種や企業の考え方により異なるので決められたものはありませんが、企業の現場では以下に該当するものがカスハラだと考えられています。

カスハラの条件

言動の要求内容が妥当性を欠いているもの

・自社商品、サービスと関係のない要求をする
・自社商品、サービスに過失のない要求をする

要求を実現するための手段・対応が
社会通念上不相当であるもの

・暴言を吐く
・従業員を長時間拘束する
・土下座を要求する
・SNSで企業の誹謗中傷を発信する

通常のクレームとは異なり、社会一般の常識と照らし合わせて妥当性がなく、要求を実現するための手段や態度が常識を逸脱しているものはカスハラに該当するといえるでしょう。

例えば、顧客が購入した商品に不備があり、謝罪とともに商品を交換することは妥当なクレームです。

一方で、商品を確認しても不備がないのにも関わらず長時間拘束し返金を迫る場合は、カスハラだと考えられます。

実はカスハラは消費者の権利が主張しやすくなった、SNSなどが普及して誰もが意見を言いやすくなったなどの背景から、増加傾向にあります。

過去3年のカスハラ相談件数の推移

参考:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書

カスハラはどのような企業でも起こり得ることだと捉えて、適切な対策が求められています。

2.カスハラ対策は従業員を守るための「安全配慮義務」

企業のカスハラ対策は、従業員を守るための「安全配慮義務」です。
安全配慮義務とは、労働契約法第5条で定められている従業員の心身の安全に配慮する義務のことです。

【労働契約法 第5条】

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

出典:厚生労働省「労働契約法のあらまし」

安全配慮義務は危険な作業などの肉体的な安全性とどまらず、業務をするうえで起こり得る幅広いリスクを予測し適切な配慮をすることを指しています。

カスハラが起きると従業員の心身の健康を損ねる恐れがあるので、カスハラ対策は企業の安全配慮義務の一環として取り組むべきなのです。

カスハラ対策は企業が行う「安産配慮義務」の一環として取り組むべき

実際に企業が安全配慮義務を理解してカスハラ対策をしていたことで、損害賠償請求を逃れた事例もあります。

【安全配慮義務を行っていたカスハラ事例】

買い物客とトラブルになった従業員が、会社に対し安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮に欠けていたとして、損害賠償請求を求めました。

しかし企業側は苦情を述べる顧客への対応について、入社後にテキストを配布して初期対応を指導していました。さらにサポートデスクや近隣店舗のマネージャーなどとも連携をして、トラブルに備える体制も整えていることが確認されました。

そのため、トラブルが生じたときの相談体制が十分整えられていたとして、企業の安全配慮義務違反は否定されました。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

どのような企業でもカスハラをゼロにすることは難しいですが、企業側が適切なカスハラ対策を行い従業員が働きやすい環境を整えることが重要です。

【今後カスハラ対策が義務化する可能性がある】

現在、企業のカスハラ対策に関する細かな規定はありませんが、今後より細かな規定を設けてカスハラ対策を義務化する流れもあります。厚生労働省では、カスハラ対策の義務化に向けて「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定しました。

東京都では、「東京都カスタマーハラスメント防止条例」を策定する動きがあり、カスタマーハラスメントを防止する条例制定を目指しています。

このように、今後がよりカスハラ対策が重要視される流れがあるので、早い段階からカスハラ対策に取り組むといいでしょう。

参考:毎日新聞「カスハラ対策、企業に義務化へ 「マニュアル整備を」厚労省検討会

3.カスハラ対策は今すぐやるべき!従業員・企業に与える影響

カスハラ対策は安全配慮義務の側面だけでなく、従業員や企業を守るためにも欠かせません。

先ほども触れたように、カスハラは増加傾向にあります。
企業がカスハラ対策をしないと、従業員の離職や企業イメージの悪化など深刻な事態を招く可能性があります。

そこでここでは、カスハラ対策をしない場合に従業員や企業に与える悪影響を詳しく解説していきます。
企業がカスハラ対策をしないとどのようなリスクがあるのか、把握しておきましょう。

企業がカスハラ対策をしない場合に従業員・企業に与える悪影響

・従業員の休職や退職の原因になる
・従業員のパフォーマンス低下を招く
・取引先の企業や顧客との関係性が悪化する

3-1.従業員の休職や退職の原因になる

カスハラ対策をしないと、従業員の休職や退職の原因になります。
カスハラ対応した従業員は心身ともに疲弊し、これ以上業務が継続できなくなるケースがあるからです。

場合によっては従業員がカスハラは自分に責任があると追い込んでしまい、業務が向いていないと悩んでしまうこともあります。
企業がカスハラ対策をしないと、優秀な人材の流出や人材不足につながります。

カスハラ対応が原因で離職、休職を招かないためにも、心身の負担となるカスハラ対応を従業員任せにしないで企業が対策をする姿勢が大切です。

3-2.従業員のパフォーマンス低下を招く

従業員にカスハラ対応を一任すると、パフォーマンスの低下を招きます。

厚生労働省が公表している「従業員が受けたカスハラの内容」を見てみると、長時間の拘束や同じ内容を繰り返す、名誉棄損など対応する従業員の大きな負担となる内容ばかりです。

従業員が受けたカスハラの内容

長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)

52%

名誉棄損・侮辱・ひどい暴言

46.9%

著しく不当な要求(土下座など)

24.9%

脅迫

14.6%

暴行・障害

6.5%

その他

4.9%

参考:参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

先ほども触れたように、カスハラは増加傾向にあります。
負担になる対応ばかり続けていると、業務に対するやる気が低下していくのも無理がありません。

実際にカスハラを受けた従業員は「怒りや不安を覚えた」「仕事に対する意欲が減退した」などと回答しており、パフォーマンス低下の原因となっていることが分かります。

カスハラの従業員に対する営業

参考:参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

また、本来はスムーズに対応できる業務であっても、カスハラ対応に時間と労力を費やすことで、企業全体のパフォーマンス低下につながることも考えられるでしょう。

従業員が本来の力を発揮して生き生きと働くためにも、カスハラ対策は欠かせません。

3-3.取引先の企業や顧客との関係性が悪化する

カスハラ対策をしないと、2つの視点から取引先の企業や顧客との関係性が悪化する恐れがあります。

取引先の企業や顧客との関係性が悪化する要因

業務への支障

・カスハラ対応により他の業務が遅れる可能性がある

企業イメージの低下

・カスハラを目撃した顧客の印象が悪化するリスクがある
・SNSなどでマイナスイメージを拡散されるとブランド・企業イメージが低下する可能性がある

店舗やコンタクトセンター(コールセンター)で頻繫にカスハラ対応をしていると、他の顧客の待ち時間が増えます。複数人で対応をしている場合は、業務が遅れるなど大きな支障が出ることも考えられるでしょう。

また、カスハラの中には、ブログやSNSで風評被害や誹謗中傷に該当する内容を拡散するケースも見受けられます。

実際に、SNSで従業員の名札をアップして、個人情報を拡散する被害も起きています。
企業としての姿勢や対応方法が決まっていないと適切な対応ができず、企業、ブランドのイメージが低下することが考えられます。

このように、カスハラを放置すると、顧客や取引先企業と良好な関係を築きにくくなります。
企業としてカスハラを容認できない姿勢を示し適切な対応をするためにも、カスハラ対策は必要だといえるでしょう。

4.カスハラを正しく見極めるための判定基準

カスハラの基礎知識を理解したところで、企業のカスハラ対策の必要性を実感できたかと思います。
企業がカスハラ対策を進めるうえで、まず気になるのはカスハラの判定基準でしょう。

1.カスハラ(カスタマーハラスメント)とは」でも触れたように、カスハラの基準は業種や企業の考え方により異なるため、明確な定めがありません。

だからこそ、自社が何を持ってカスハラと判断するのか明確な基準を策定することが非常に重要です。
1つの基準として、以下の条件に該当するものがカスハラだと考えられています。

【カスハラの条件】

・言動の要求の内容が妥当性を欠いているもの
・要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であるもの

この条件を実際に企業が受けたカスハラに当てはめることができる行為がカスハラだと捉えられるでしょう。

カスハラの項目

カスハラの例

言動の要求の内容が妥当性を欠いているもの

・言いがかりによる金銭の要求
・私物の故障による金銭の要求
・難癖をつけたキャンセル料の未払い
・入手困難な商品の購入要求
・制度上できないサービスの要求

要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であるもの

時間の拘束

・長時間居座る
・業務の妨げになる拘束

リピート

・頻繫に来店をしてクレームを繰り返す
・複数の部署をまたいでクレームを言う

暴言

・大声と暴言で執拗に対応者を責める
・店内で大声を出して秩序を乱す
・土下座を要求する

揚げ足取り

・自分の要求が通らないと言葉尻を揃える
・一方的に落ち度を責め続ける
・論点をすり替えて執拗に責める

権威

・顧客や取引先の立場を主張して暴言を吐く
・顧客や取引先の立場を主張して無理な要求をする

脅迫

・物を壊す、潰すなどの発言で脅す
・反社会的な言動をする
・SNSで拡散すると暴露をほのめかす

SNSへの投稿

・個人名を公開する
・企業や従業員の信頼を損ねる投稿をする

わいせつ行為

・従業員を盗撮する
・従業員に付きまとう

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

カスハラは正当な理由のない過度な要求や時間的な拘束、暴言など多岐に渡ると考えられます。
また、業種や業務内容によっても、対象になるカスハラは異なるでしょう。

コンタクトセンターの場合の例

・長時間一方的に電話をし続ける
・何度も繰り返しクレームを架電してくる

運送業の場合の例

・正当な理由での遅延による値下げ要求
・破損していない商品について買い替えを要求

基本的なカスハラの基準を参考にしつつ自社の業務内容やカスハラの傾向などを踏まえて、カスハラの基準を検討しましょう。

5.企業が行うべきカスハラ対策の事前準備

企業が行うべきカスハラ対策の事前準備のステップ

企業が実際にカスハラ対策をするときは「カスハラに対する事前準備」と「カスハラが起きたときの対応」の2つの視点で進めていきます。

ここでは、企業が行うべきカスハラ対策の事前準備のステップをご紹介します。
カスハラが起こる前に企業として、どのような対策ができるのか参考にしてみてください。

5-1.カスハラに対する姿勢を明確にする

まずは、企業のカスハラに対する姿勢を明確にします。
カスハラに対する企業の姿勢が分からないと、具体的な対応策が検討できません。

以下のようなポイントを確認しながら、自社はどのようにカスハラに向き合うのか決めておきましょう。

【カスハラに対する姿勢を示すポイント】
・カスハラに対する自社の姿勢を決める(断固として許さないなど)
・カスハラに対する基準と対処を決める(入店拒否、警察に連絡など)
・カスハラに対する自社の姿勢を外部に示す(ポスター掲示・ホームページに記載など)

例えば「従業員を守るためにカスハラを許さない」という姿勢を決めて、各店舗にポスター掲示をするとカスハラを許さない企業であることが周知できます。

併せて、カスハラへの対処法も記載できれば、カスハラ防止にもつながるでしょう。
また、カスハラに対する姿勢を従業員と共有することで「カスハラ対策をしてくれる」「安心して働ける」など不安感を払拭できます。

このように、自社としてどのような姿勢でカスハラと向き合っているのか明確にしておきましょう。

5-2.従業員がカスハラを受けたときの相談窓口を設置する

従業員がカスハラを受けたときに一人で抱え込まなくていいように、相談窓口を設置します。

相談窓口の役割は、主に2つです。

相談窓口の2つの役割

カスハラ対応のサポート

カスハラの事実確認などを行いどのように対応するべきかサポートする

従業員のメンタルケア

カスハラ対応が負担となった従業員の心のケアをする

カスハラ対応のサポートではカスハラの事実確認をしながら、どのように対応すればいいのかサポートします。

4.カスハラを正しく見極めるための判定基準」でも触れたように、カスハラには様々な行為があるので従業員だけでは判断できないことが多いです。

そこで、現場の管理監督者や相談対応者などが在籍する相談窓口と連携しながら対処することで、不安を取り除きつつ迅速な解決を図れます。

また、カスハラ対応をした従業員は、ストレスや不安を抱えるケースがあります。
特に、従業員に対する脅迫や暴言、わいせつ行為などを受けた場合は、適切なケアが必要です。

相談窓口を通して産業医などに相談するなど、カスハラ対応後の従業員のケアも念頭に置いた窓口設計も必要でしょう。

【カスハラ専用の窓口が難しい場合はハラスメント相談窓口にカスハラ対応機能を持たせよう】

カスハラ対応に特化した窓口を設けることが難しい場合は、既存のハラスメント相談窓口にカスハラ対応ができる機能を持たせることも1つの方法です。

カスハラ対応の教育や導線設計は必要ですが、窓口対応に慣れている人員で対応できるため、短期間で稼働を開始しやすくなるでしょう。

5-3.カスハラが起きたときの対応方法を決める

事前にカスハラが起きたときの対応方法を決めておくことも重要です。
カスハラの定義や企業の姿勢により対応方法は異なりますが、主に以下の2つを決めておくといいでしょう。

決めておきたいカスハラ対応方法

カスハラ発生時のフロー

カスハラが起きたときに誰がどのように対応するのかフローを決めておく

カスハラごとの具体的な対応方法

自社で起こり得る代表的なカスハラの具体的な対応方法を決める

まずは、カスハラが起きたときに、誰がどのように対応するのかフローを決めておきましょう。
例えば、コンタクトセンターの場合は、オペレーターがカスハラを受けたらまずは保留にしてスーパーバイザーに代わります。

スーパーバイザーが対応しても解決しない場合は、カスハラ対応専用の窓口に連携する方法が検討できます。

カスハラごとの具体的な対応方法では、自社で起こり得る代表的なカスハラの具体的な対応方法を決めておきます。

特に顧客と直接的に接する業種の場合は、急にカスハラ対応を迫られても、正しい判断がしにくいです。
事前にある程度対応方法を決めておけば、マニュアルに沿った対応ができます。

カスハラの事例

具体的な対応方法

何度も理不尽な内容の対応を求める

内容を録音して対応できない旨を伝える。それでも繰り返し訪問して対応を求める場合は、上司に相談して警察への連携を検討する。

大声で怒鳴り声を出す

周囲の迷惑になることを伝えて、大声を出さないように促す。それでも辞めない場合は、上司に相談して退去を求める。

カスハラの具体的な対応方法は随時更新をして、万が一のときに的な対応ができるように備えましょう。

5-4.従業員に周知する

企業のカスハラ対策の流れが決まったら、従業員に周知しましょう。
従業員がカスハラ対策について把握していないと、いざという時に行動できないからです。

具体的には、事前に内容を共有しておくといいでしょう。

【従業員と共有したいカスハラ対策の内容】
・カスハラの基準
・カスハラ対策の必要性
・企業が行うカスハラ対策
・カスハラを受けたときの対応
・カスハラの相談窓口

企業のカスハラ対策の方針やカスハラが起きたときの対応を事前に共有しておくと、従業員の安心感につながります。また、従業員への周知と併せて、カスハラが起きたときの研修も実施するといいでしょう。

研修をしていないといざカスハラ対応が迫られたときに、適切な方法で対応できない可能性があるからです。

実際にカスハラが起きたことを想定し、自社のマニュアルに沿った対応をできるのか実践することで、自社のカスハラ対策が浸透しやすくなります。

6.企業が行うべきカスハラが起きたときの対応

企業が行うべきカスハラ対策が分かったところで、実際にカスハラが起きたときの対応をご紹介します。

基本的にはカスハラ対策の事前準備で決めたことに沿って対応すれば問題ありませんが、どのようなポイントを押さえるべきか参考にしてみてください。

企業が行うべきカスハラが起きたときの対応

・事前に決めた手順でカスハラ対応する
・再発防止の検討をする

6-1.事前に決めた手順でカスハラ対応する

実際にカスハラが起きた場合は、事前に決めておいたカスハラ対応の方法とフローに沿って対応をします。

カスハラが起きたときに焦らないよう「接客する場所にマニュアルを置いておく」「会計付近に相談窓口の電話を貼っておく」などすると、適切な方法に沿って対応しやすいでしょう。

また、大声を出している顧客がいる、暴言を吐いているなど周囲から見てもカスハラだと分かる場合は、できる限り対応している従業員1人に任せないでフォローを検討してください。

ただし、状況によっては大きなトラブルに発展する可能性があるため、周囲から見て判断が難しい場合は、相談窓口や警察などに連絡をしたほうがいいでしょう。

6-2.再発防止策の検討をする

カスハラが起きた後は、再発防止策の検討をします。
カスハラは悪質なクレームなのでクレームそのものには企業の落ち度がないケースが多いです。

しかし、カスハラへの初期対応は適切だったか、カスハラ対応のフローは適切だったかなど、カスハラ対応自体は改善できる点があるかもしれません。

実際のカスハラ対応を振り返り、対策を検討しましょう。

【カスハラの再発防止策のポイント】
・カスハラ対応を振り返って改善策を見つける
・カスハラの事例を社内で共有する
・カスハラマニュアルや事例集を更新する

カスハラ対応を経て具体的な事例を社内で共有することで、同じようなカスハラが起きたときにスムーズに対応できるようになるでしょう。

7.企業のカスハラ対策事例

企業が行うべきカスハラ対策が分かったところで、企業が実際にどのようにカスハラ対策をしているのか気になるところです。

ここでは、企業が実施しているカスハラ対策事例をご紹介します。
企業がどのようにカスハラ対策を推進しているのか分かるので、参考にしてみてください。

企業名

カスハラ対策の内容

ヤマト運輸株式会社

・カスタマーハラスメント対応マニュアルの作成
・専用の相談窓口設置
・カスハラ情報の共有
・研修の実施

フリー株式会社

・カスタマーハラスメント専門チームの立ち上げ
・専門窓口の設置及び、連携フローの周知
・カスタマーハラスメント被害者のケア
・適切な対応に向けた外部専門機関への相談
・カスタマーハラスメント対応用ガイドラインの作成

株式会社イトーヨーカ堂

・悪質クレーム対応実務ハンドブックの配布
・従業員マニュアルの見直し
・カスハラを受けたときのフローの整備

7-1.ヤマト運輸株式会社|コンタクトセンター(コールセンター)のカスハラ対策

荷物の配送業をしているヤマト運輸株式会社では、同じ顧客からの苦情がコンタクトセンターに続いていました。苦情の内容は「オペレーターの態度が悪い」「まだ辞めていなかったのか」などの暴言で、オペレーターが萎縮してしまったのです。

オペレーターは繰り返される暴言を真摯に受け止めてしまい、約1ヶ月間業務ができない状況に陥りました。

そこで、カスハラに対する指針・考え方を整理して従業員に伝える必要があると強く思い、カスハラ対策を開始しました。

カスハラ対策を開始するにあたりオペレーターにアンケートを実施したところ、約8割がカスハラを受けている実態が明らかになりました。

「企業として取り組みを進めなければ従業員を守れない」と強く感じたそうです。
その後、ヤマト運輸株式会社では、具体的なカスハラ対策を実施しました。

カスハラ対策

具体的な内容

カスタマーハラスメント対応マニュアルの作成

・「対応者への理不尽な個人攻撃には毅然とした態度で対応する」方針を掲げている、
・「カスハラ発言リスト」や「(カスハラ文言集」などから構成されている

専用の相談窓口設置

・相談者のカスハラに関する判断力の向上を目指す窓口を設置

カスハラ情報の共有

・カスハラ対応後にはレポートを作成して社内データベースに登録
・データベースは全社で共有して確認できる

研修の実施

・カスタマーハラスメント対応マニュアルを活用した研修の実施

カスハラ発言リストは、「カスハラ発言」と「カスハラの可能性のある発言」に分けて、発言の具体例と対応フローを記載しています。

また「カスタマーハラスメント対応マニュアル」では、対応に困ったときに参考にできる文言集を記載し、冷静な対応ができるようにサポートしています。

カスハラ対策に取り組んだことで社内にカスハラという言葉が浸透して、カスハラ行為に対しては徐々に毅然とした対応ができるようになってきているそうです。

参考:厚生労働省あかるい職場応援団「社員の健全な業務を守るため、カスハラ対策の取組を始動

7-2.フリー株式会社|従業員が安心して働ける環境を整備

クラウド会計ソフトなどを提供しているフリー株式会社では、脅迫を含む40分以上続くクレームを受けたとサポートデスクから相談がありました。

この内容を法務部に相談し対策を講じるための「カスタマーハラスメント対策プロジェクト」を立ち上げたそうです。

まずは情報をまとめて、経営層に提言を実施。経営層からはポジティブなアクションをもらうことができ、本格的に進めることになりました。

【カスタマーハラスメント対策プロジェクトを進めるための提言】
・現場で起きている具体例
・カスタマーハラスメント対策がないことのメリット・デメリット
・当社としてカスタマーハラスメントとクレームの線引き

2023年2月9日から「カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方」を自社のホームページで公開。

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に基づきカスハラに該当する行為があった場合には、サービスやサポートの提供をお断りする場合があると明記しています。

社内のカスハラ対応では、以下のような取り組みをしています。

【社内でのカスハラ対応の取り組み】
・カスタマーハラスメント専門チームの立ち上げ
・専門窓口の設置及び、連携フローの周知
・カスタマーハラスメント被害者のケア
・適切な対応に向けた外部専門機関への相談
・カスタマーハラスメント対応用ガイドラインの作成

カスタマーハラスメント対応用ガイドラインには、カスハラの判断をしやすくする事例集や未然防止のアイデアを掲載している点が特徴です。

カスハラ対策に取り組んだことで、顧客からは賛同の声が、従業員からはハラスメントを受けるか受けないかに関わらず、安心感につながるという声があったそうです。

参考:厚生労働省あかるい職場応援団「カスタマーハラスメントへの取組により従業員の安心感を獲得!

7-3.株式会社イトーヨーカ堂|マニュアル整備と育成でカスハラ対策に取り組む

全国展開している総合スーパー株式会社イトーヨーカ堂は、社会的背景の変化から悪質なクレームに悩まされるようになったそうです。

しかし、悪質なクレームの基準がないことや接客マニュアルに労働者を保護する視点がないことから、労働組合からも対策を求める声があがるようになりました。

そこで、従業員が販売業務に専念できる環境づくりを目指してカスハラ対策を実施。

カスハラ対策

具体的な内容

悪質クレーム対応実務ハンドブックの配布

厚生労働省が公表するカスハラ対策企業マニュアルと併せて悪質クレーム対応実務ハンドブックを配布

従業員マニュアルの見直し

カスハラに対して具体的な判断基準や対応方法を見直して記載

カスハラを受けたときのフローの整備

店舗では統括マネージャーとお客様サービス部長が最終的な窓口になり、それでも難しい場合は本社や管轄の警察と連携しながら対応するフローを整備

カスハラ対策ではマニュアルを配布するだけでなく既存の従業員マニュアルを見直して、具体的な判断、対応ができるようにしました。

また、カスハラを受けたときには統括マネージャーとお客様サービス部長が最終的な窓口になり、それでも難しい場合は本社や管轄の警察と連携しながら対応するフローを整備しています。

カスハラ対策のガイドラインを制定したことで、スムーズな対応ができるようになったそうです。
現場で働く従業員にも、会社がきちんと守ってくれるという安心感が生まれていると感じているとのことです。

参考:厚生労働省あかるい職場応援団「従業員が本来の業務に専念できる職場環境を目指して

8.企業がカスハラ対策に取り組むときに知っておきたいこと

最後に、企業がカスハラ対策に取り組むときに知っておきたいことをご紹介します。
事前に知っておくことで自社のカスハラ対策に反映できる内容ばかりなので、ぜひチェックしてみてください。

企業がカスハラ対策に取り組むときに知っておきたいこと

・悪質なカスハラは犯罪行為だと認識して従業員だけで対応しない
・できる限り複数人でカスハラ対応をする
・正当なクレームとカスハラを区別できるよう研修する

8-1.悪質なカスハラは従業員だけで対応しない

1つ目は、悪質なカスハラは従業員だけでは対応しないことです。

カスハラの内容によっては、法律に抵触する可能性があります。

カスハラが抵触する可能性がある法律の例

傷害罪

従業員などに怪我を負わせる
(15年以下の懲役・50万円以下の罰金)

暴行罪

従業員などに暴行を加える
(2年以下の懲役・30万円以下の罰金など)

脅迫罪

企業や従業員に対して脅迫行為をする
(2年以下の懲役・30万円以下の罰金)

名誉棄損罪

企業や従業員の名誉棄損にあたる発言をする
(3年以下の懲役・50万円以下の罰金)

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

このような行為に該当しそうなカスハラを受けた場合は、社内だけで解決しようとしないで警察や弁護士と連携して対応しましょう。

例えば、カスハラを受けている従業員が暴行を加えられているところを目撃した場合は、すぐに警察に連絡をして犯罪行為として対応してもらう必要があります。

どのようなカスハラが犯罪行為に該当するのか判断しにくい部分もあるので、カスハラの対応方法を決める段階で「犯罪行為に該当する可能性があるカスハラ」として区別しておくといいでしょう。

8-2.できる限り複数人でカスハラ対応をする

2つ目は、できる限り複数人でカスハラ対応をすることです。
カスハラ対応を1人の従業員に任せると負担が大きく、心身の不調を起こす原因になる可能性があります。

できる限り複数人で対応をして、カスハラ対応の負担が偏らないようにしましょう。
カスハラ対応を複数人で行うためには、項目を決めておくことがポイントです。

【複数人でカスハラ対応をするために決めておくこと】
・カスハラを受けている従業員を見かけたときのサポート役(リーダーがサポートするなど)
・カスハラを受けたときにすぐに連絡するなどサポートを要請するフローの設計
・カスハラ当事者が複数人であるときの対応

例えば、カスハラを受けている従業員をみかけたときにリーダーがサポートすると決めておけば、従業員が1人で孤立奮闘する時間を減らせます。

【複数人での対応は危機管理の視点からも有効】
複数人でのカスハラ対応は、危機管理の視点からも有効です。カスハラ当事者が暴行をする場合、1人では警察に連絡しにくいです。
複数人で対応すれば、警察に連絡する、逃げ場を確保するなど次の対策を検討しやすくなります。

8-3.正当なクレームとカスハラを区別できるよう研修する

3つ目は、正当なクレームとカスハラを区別できるように研修することです。
正当なクレームをカスハラ扱いすると、取引先の企業や顧客から反感を買うことになります。
何がクレームで何がカスハラなのか、事前に共有することが大切です。

【クレームとカスハラを区別する共有例】
・ケーススタディの共有(カスハラの例とクレームの例を学ぶ)
・ロールプレイングの実施
・カスハラの基礎知識の習得
・カスハラとクレームの判断がつかないときの対応

ロールプレイングでカスハラとクレームを見分ける対応ができれば、日常業務でもミスをする可能性が低くなります。また、カスハラとクレームの見分けがつかないときにはまずどうすればいいのか対応を決めておけば、誤った判断をしにくくなるでしょう。

9.コンタクトセンター(コールセンター)のカスハラ対策で困った場合はトランスコスモスの「trans-DX for Support」をご利用ください

ここまで、カスハラの概要や企業でのカスハラ対策の具体的な方法を解説してきました。
カスハラが増加する中、従業員を守りながらサービス提供を続けるためには適切なカスハラ対策が欠かせません。

私たちトランスコスモスでは、生成AIを活用した包括的なソリューションを提供し、コンタクトセンターのカスハラ対策を支援しています。

カスハラ対策の定義の策定から運用まで一貫してサポートできる点が特徴です。

サポート内容

概要

カスハラ対策の宣言と教育の実施

・カスハラに対する宣言をまとめてカスハラに対する従業員支援とした体系的な対策を実施
・対応マニュアルを整備しており、従業員用のメンタルヘルス窓口も開設

音声認識・感情認識活用

・通話中の音声をリアルタイムで解析して管理者がフォローできる仕組みを実現
・感情モニタリング
・リアルタイム4感情分析
・高圧的/攻撃的発言・対応時にはアラート通知

※音声認識分析サービス「transpeech」の導入が必要です

チャットサポート中心への移行

・チャットサポートに移行すると感情的な発言を減らせる傾向がある
・効率的なサポートを実現
・迅速なチケット管理や対応がチャットツールで提供
・Webフォームを通じてレコードからチャットへアクセスする導線設計を構築

「コンタクトセンターのカスハラ対策に悩んでいる」「」コンタクトセンターのカスハラ対策が進まない」など、コンタクトセンターの具体的なカスハラ対策にお悩みの場合は、ぜひ「トランスコスモス」にご相談ください。

またこういったサポート対策以外にもトランスコスモスでは、ゲームメタバースを活用したユーザーの意識改革に取り組んでいます。

メタバースの中で現実に起きている社会問題を再現し、若者やその親に向けてゲームの内容からアプローチを行っています。

リアルイベントでも活用することで、自社の取り組みを浸透させることにも寄与しています。少し異なるアプローチになりますが、様々な角度からカスハラ対策に取り組んでいる企業というブランディングも可能なので、興味がございましたらトランスコスモスまでお問い合わせください。

まとめ

この記事では、カスハラの概要や企業の対策の必要性、具体的な対策方法などカスハラに関する基礎知識を解説しました。
最後に簡単に振り返ってみましょう。

〇カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先が過剰や要求をしたり暴言を吐いたりするなど悪質なクレームのこと

〇カスハラ対策は企業の安全配慮義務の一環として取り組むべき

〇企業がカスハラ対策をしない場合に従業員・企業に与える悪影響

1.従業員の休職や退職の原因になる
2.従業員のパフォーマンス低下を招く
3.取引先の企業や顧客との関係性が悪化する

〇カスハラの基準は業種や企業の考え方により異なり明確な定めはないが、以下の条件に該当するものがカスハラだと考えられている

1.言動の要求の内容が妥当性を欠いているもの
2.要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であるもの

〇企業が行うべきカスハラ対策の事前準備のステップ

1.カスハラに対する姿勢を明確にする
2.従業員がカスハラを受けたときの相談窓口を設置する
3.カスハラが起きたときの対応方法を決める
4.従業員に周知する

〇企業が行うべきカスハラ対策が起きたときの対応

1.事前に決めた手順でカスハラ対応する
2.再発防止の検討をする

〇企業がカスハラ対策に取り組む前に知っておきたいこと

1.悪質なカスハラは犯罪行為だと認識して従業員だけで対応しない
2.できる限り複数人でカスハラ対応をする
3.正当なクレームとカスハラを区別できるよう研修する

従業員が不安やストレスを感じずに最大限のパフォーマンスを発揮するには、企業のカスハラ対策が重要です。

コンタクトセンターのカスハラ対策にお悩みの場合は、私たち「トランスコスモス」にお気軽にお問い合わせください。

トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションのノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。