ファンマーケティングとは、企業や商品、サービスやブランドのファンを育成し増やしていくマーケティング手法です。
ファンには「熱心な愛好家」という意味があり、ブランドや商品、サービスに強い愛着や信頼感を持った顧客を指します。ファンが増えると継続して商品やサービスを購入してくれるため、安定した利益が見込めます。それだけでなく、顧客はファンとなった企業の商品やサービスについて良かった点などを自発的に口コミやSNSで発信・拡散してくれるため、コストをかけなくても新規顧客の獲得につながります。
では、具体的にどのようにファンを獲得したらいいのか?そこで役立つのが、ファンマーケティングです。
この記事では、ファンマーケティングが注目を集める背景や具体的な手法、成功させるためのポイントをまとめて解説していきます。
◎ファンマーケティングとは
◎ファンマーケティングが注目を集める背景
◎ファンマーケティングの測定方法
◎ファンマーケティングの4つの手法
◎ファンマーケティングを活用する4つのメリット
◎ファンマーケティングを活用するデメリット
◎ファンマーケティングを成功させるためのポイント
この記事を読めばファンマーケティングの概要や手法が正しく把握でき、実践できるようになるでしょう。既存顧客を自社のファンにするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1.ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、企業や商品、サービスやブランドのファンを育成し増やしていくマーケティング手法です。ファンには「熱心な愛好家」という意味があり、ブランドや商品、サービスに強い愛着や信頼感を持った顧客を指します。
商品やサービスが溢れる成熟した市場では性能やデザイン、サービス内容などの合理的な価値だけでは差別が難しく、顧客の獲得が困難になってきました。
たとえば、お鍋やフライパンを検索してみると、非常に多くの商品が表示されます。サイズや素材、デザインが似た商品も多く、合理的な価値だけでは購入の決め手にはなりません。
そこで、自社の商品やサービス、ブランドそのものに愛着を持ち、継続して購入をしてくれるファンの育成や獲得に注目したのがファンマーケティングです。ファンマーケティングを行うと一定のリピーターやロイヤルカスタマーを抱えることができ、安定した利益を獲得できます。
また、ファンは「商品やサービスはいいものだ」と感じているため、企業やブランドが依頼をしなくても口コミやSNSで情報発信をしてくれます。その結果、自然と新規顧客や潜在顧客の獲得にもつながるのです。
昨今は、ファンマーケティングに力を入れる企業やブランドが増えてきました。
ではなぜ、今ファンマーケティングが注目を集めているのか次の章で詳しく解説していきます。
2.ファンマーケティングが注目を集める背景
ファンマーケティングが注目を集める背景として、下記の3つが挙げられます。
ファンマーケティングが注目を集める背景 |
①顧客維持率を向上させる【1:5の法則・5:25の法則】 |
2-1.顧客維持率を向上させる【1:5の法則・5:25の法則】
マーケティングには、1:5の法則と5:25の法則があります。
1:5の法則 | 新規顧客に商品やサービスを販売するには既存顧客よりも5倍のコストがかかる |
5:25の法則 | 顧客離れを5%解消すると利益が25%以上改善する |
1:5の法則は新規顧客に商品やサービスを販売するには、既存顧客に商品やサービスを販売するときの5倍のコストがかかることを提唱した法則です。
また、5:25の法則は既存の顧客離れを5%解消できれば、利益が25%以上改善することを提唱した法則です。新規顧客の獲得ばかりに注力をすると、既存顧客のフォローや維持が疎かになることがあります。
この2つの法則から、新規顧客の獲得よりも既存顧客をファン化したほうが利益を拡大しやすいことが分かるでしょう。成熟した市場でも利益を最大化する方法として、ファンマーケティングが注目されています。
2-2.安定した収益を得られる【パレートの法則】
パレートの法則は、全体の売上の8割は全体を構成する2割が生み出していると提唱した法則です。
100万円の売上を獲得した場合、このうちの80万円は全体の2割を占める優良顧客層が生み出していることになります。
一般的な顧客よりも優良顧客の客単価をあげたほうが、売上に大きく貢献します。80%の利益を生み出す優良顧客に焦点を充ててマーケティングをすると、効率よく売上アップが見込めるでしょう。
2-3.市場に左右されない基盤を構築できる
「1.ファンマーケティングとは?」でも触れましたが、昨今は市場が成熟し商品やサービスの合理的な価値だけでは差別化しにくくなりました。
合理的な価値だけで商品やサービスを選べなくなると、価格競争に陥りやすくなります。
機能やデザイン、素材がほぼ同じの商品がいくつかあった場合、合理的な価値で商品の良さを見極めることが難しいです。その結果、価格が安いという判断基準で商品を選ぶ顧客が増えるでしょう。
価格競争が激化し商品やサービスの価格が下がると、企業に残る利益も減少します。
そこで、重要となるのがファンマーケティングです。ファン化した顧客は商品やサービス、企業やブランドそのものに価値を見出しているため、価格を問わず商品やサービスを購入し続けてくれます。
3.ファンマーケティングの測定方法
ファンマーケティングの効果を測定する方法として、「NPS(Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」があります。NPSは、顧客が企業やブランドにどのくらい愛着や信頼を持っているか測定するための指標です。
NPSが高いと自社やブランドに愛着を持った顧客が多いことになり、ファンマーケティングが功を奏していると言えます。NPSを測定するには、顧客を対象としたアンケートに下記の質問を加えます。顧客は0から10までの11段階の数値で回答をします。
あなたは当社(または当社の商品・サービス)を、家族や友人、同僚に薦める可能性はどのくらいありますか? |
集計した回答は「0~6:批判者」「7~8:中立者」「9~10:推奨者」の3つに分けます。
そして、下記の数式に当てはめてNPSを算出します。
推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS |
NPSについて詳しく知りたい場合は、下記の記事も参考にしてみてください。
4.ファンマーケティングの4つの手法
ファンマーケティングの主な手法には、下記の4つがあります。
ファンマーケティングの主な手法 | |
ファンミーティング | 企業やブランドが顧客と交流をする手法 |
SNSの活用 | 企業やブランド、商品名でのSNSアカウントを開設して運用する手法 |
コミュニティサイト | 顧客と企業間の対話 / 顧客同士の交流を目的にサイトを構築する手法 |
ライブコマース | ライブ配信を活用して商品やサービスを販売する手法 |
効果のあるファンマーケティングを実施するためにも、それぞれの特徴や注意点をあらかじめ把握しておきましょう。
4-1.ファンミーティング
ファンミーティングとは、企業やブランドが顧客と交流をする手法です。
工場見学や限定イベント、企業やブランドの代表者とコミュニケーションを取る機会を設けるなど、顧客と直接接点を持ち交流を図ります。
オウンドメディアやSNSなど不特定多数の顧客を対象とした情報発信とは異なり、顧客と密なコミュニケーションが取れるところが特徴です。顧客と直接交流することで良質なフィードバックも獲得でき、商品やサービスの改良、開発に活用することもできます。
4-1-1.ファンミーティングのメリット
ファンミーティングの大きなメリットは、ファン化しやすいイベントや企画を実施できるところです。
不特定多数を対象としたメディアでは、情報発信できる内容が限定されます。ファンミーティングではターゲットを限定し、内容の濃い情報発信や交流ができます。
たとえば、顧客と一緒に商品やマーケティングを考える企画を実施すると、企業やブランドの商品制作に参加できた特別感を与えられます。また、ブランドの代表者や制作者と密にコミュニケーションが取れる企画なら、互いの顔を見ながら日頃のお礼や商品に対する思いなどを伝えられます。普段は分からないブランドや企業の裏側を知ることで、安心感や信頼感を与えられます。
他にも、優良顧客を対象にした大型イベントは特別感があり、企業やブランドのこだわりや考え方も共有でき、ファン化しやすくなるでしょう。
このように、顧客と直接関わることで人間関係が構築しやすくなり、効率よくファン化を目指せるところはファンミーティングならではの強みです。
4-1-2.ファンミーティングの注意点
ファンミーティングは、一度開催したら終わりではなく定期的に開催しなければなりません。
繰り返し開催することでファンの育成ができたり参加してみたい顧客を増やせたりするからです。しかし、ファンミーティングを繰り返し実施するには、コストや時間を要します。
とくに、大型のイベントを開催する場合は、事前に規模やコスト、準備にかかる日数を考慮しながら検討する必要があります。
4-2.SNSの活用
TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSは、ファンマーケティングに使える手法の一つです。企業やブランド、商品名でのSNSアカウントを開設すると、いつでも手軽に情報発信ができます。
心理学では、人は同じものに何度も接触するだけで好感度や評価が高まると言われています。毎日コツコツと情報発信をして顧客の目に触れる機会が増えれば、それだけで興味や関心を持ってもらえる可能性が高くなります。
また自社のSNSアカウントは、キャンペーンにも活用できます。InstagramとTwitterのキャンペーンには、主に下記のようなものがあります。
ハッシュタグキャンペーン フォロー&いいねキャンペーン リポストキャンペーン | フォロー&いいねキャンペーン フォロー&リツイートキャンペーン インスタントウィンキャンペーン フォロー&ハッシュタグ投稿キャンペーン |
短期間でも情報が広範囲に拡散でき、今まで企業やブランドを知らなかった層にもアプローチできる可能性があります。その結果、新たな潜在顧客の獲得や潜在顧客の顕在化が見込めるでしょう。
4-2-1.SNS活用のメリット
SNS活用は、企業やブランド、商品名でのSNSアカウントを開設して運用する手法です。
自社アカウントの運用は、コストをかけずに手軽に取り組めるところがメリットです。
SNSアカウントは無料で開設できるため、初期費用やランニングコストがかかりません。他のファンマーケティングの手法は少なからずコストが発生するため、手軽に始められるところは大きな魅力です。
また、SNSでは自社やブランドの情報発信はもちろんのこと、顧客との交流も可能です。
自社やブランドに関する投稿を見つけてアクティブサポートができます。
トランスコスモスが実施した「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2021」では、第三者がアクティブサポートを見て、企業・ブランドの評価が向上するという声が72.8%もあることが分かっています。
このように、SNSを活用することでより多くの人にポジティブな印象を持ってもらい、ファンとなるきっかけを与えることも可能です。
4-2-2.SNS活用の注意点
SNS活用における自社アカウントの運用は、コツコツと地道に続ける必要があります。SNSは情報の流れが速い非ストック型のメディアなので、日々情報を投稿しないと顧客の目に留まる機会が少ないです。
できるだけ高頻度で更新ができるように、運用体制を整えて開始するようにしましょう。
4-3.コミュニティサイト
コミュニティサイトとは、顧客と企業間の対話 / 顧客同士の交流を目的にサイトを構築する手法です。
コミュニティサイトでは、共通の興味や目的を持った人がオンライン上で集まることになるので、企業の好きなブランドや商品に関して本音を集めて改善し、それを還元することで、ファン化まで引き上げることが可能になります。
4-3-1.コミュニティサイトのメリット
コミュニティサイトのメリットは、情報共有や交流がしやすい、知識や経験の共有ができ、ファンがユーザーを育てるところです。
ファン同士による問題解決も可能でファンやインフルエンサーとの交流により、知識や経験をアップデートすることでライトユーザーがコアなファンになる可能性が上がります。また、企業側からしても自社のファンの存在を認識できることで社内に向けたブランディングも確立できます。
ファンの育成により購入額を増やしてもらうことが可能です。
4-3-2.注意点
ファンマーケティングを目的としたコミュニティ運用では、自律的に発言されるための場所を作ることが重要です。
企業本位で「売上上げるための場所」という形で設定してしまうとしらけてしまい、ユーザー側の発言もなくなる可能性もあるので、どのように盛り上げていくかを検討したうえで運営していくことが重要です。
企業と顧客のコミュニケーションにより商品やサービス、ブランド価値を上げていくための場所と捉え、設計していきましょう。
4-4.ライブコマース
ライブコマースとは、ライブ配信を活用して商品やサービスを販売する手法です。
つまりECとライブ配信を組み合わせ、店舗に足を運ばなくても商品やサービスの特徴や魅力を確認しながら買い物ができる方法となります。
ライブコマースは一方的な説明ではなく、リアルタイムで顧客からの質問を受け付けて悩みや疑問点を解決しながら購買へとつなげる仕組みです。
実際にライブコマースを利用している顧客からは、商品やサービスに関する説明が分かりやすいという声があります。また、ライブコマース自体にファンがつきやすく、新規のファン獲得がしやすいところも特徴です。
4-4-1.ライブコマースのメリット
ライブコマースのメリットは、ファンの育成やファンの獲得が効率よくできるところです。
ライブコマースはリアルタイム配信を通じて、不特定多数の人に同時接客ができます。
店舗の接客では顧客と店員が一対一で接客をして商品やサービスをPRしますが、ライブコマースでは一対100人や一対1,000人が可能です。視聴者全員に質の高い情報を均一に発信ができるため、新規ファンを獲得しやすいです。
ライブコマースを実施して訴求ポイントや差別化できるポイントを伝えると説得力や安心感があり、商品やサービスに興味を持ってもらいやすくなるでしょう。
また、魅力のあるライブコマース継続していると、ライブコマース自体にファンがつく可能性があります。毎回ライブコマースを見てくれる顧客を増やせれば購入につながるのはもちろんのこと、自社やブランドのことを熟知し愛着を持ったファンに育ちます。
このように、ライブコマースは一度に多くの顧客とコミュニケーションが取れるため、ファンの獲得へとつなげやすいところがメリットです。
4-4-2.ライブコマースの注意点
ライブコマースは、配信者のトーク力や訴求力によりファンマーケティングの成果が左右されます。テレビ番組やラジオ番組のように視聴者を惹きつける話し方ができれば、商品やサービスの魅力が伝わり興味を持ってもらえます。
ライブコマースに適した人材の確保や商品やサービスの伝え方を工夫する必然があるでしょう。
企業やブランドによっては自社の社員だけでなく、インフルエンサーやタレントを起用し興味を持ってもらう施策をしていることもあります。
また、機材トラブルや配信トラブルにより快適に視聴ができないと、離脱や顧客満足度の低下を招く可能性があります。安定した配信ができるような機材と環境の準備も必要になるでしょう。
5.ファンマーケティングを活用する4つのメリット
ファンマーケティングの手法が把握できたところで、気になるのはファンマーケティングのメリットです。ファンマーケティングには、下記の4つのメリットがあります。
ファンマーケティングを活用するメリット |
①ブランディングに活用できる |
ファンマーケティングを活用する魅力を把握するためにも、一つずつ確認してみましょう。
5-1.ブランディングに活用できる
ブランディングとは、自社の価値観や考え方、情報を共有し信頼や共感を得ることで価値の向上や差別化を図る手法です。ファンマーケティングをすると、自社の思いや魅力を発信できます。
たとえば、ファンミーティングでは普段は公開していない工場や制作現場を案内しながら、ものづくりへのこだわりや価値観をより明確に伝えられます。
また、SNSでの更新でも発信する情報の内容や写真、イラストから顧客に認識して欲しいイメージを定着させることもできます。ブランドロゴや社名だけでは、どのような会社なのか顧客が理解できないケースがあります。SNSで繰り返し商品紹介をすると「この会社は環境に配慮した化粧品を販売しているのか」と、正しい認識が定着します。
企業やブランド側から情報を発信するからこそブランドや企業のイメージや考え方を正確に伝えることができ、今後の戦略へと活かせます。
5-2.顧客から良質な意見や感想をもらえる
ファンマーケティングをすると、顧客から商品やサービスに関する良質な意見や感想をもらえるでしょう。
ファンミーティングやライブコマースでは、顧客から直接フィードバックをもらえることもあります。
たとえば、ファッションブランドのライブコマースで「サイズ展開を教えてください」という質問があったとしましょう。「サイズはSとMです」と回答した際に、もう少し小さいサイズや大きいサイズも欲しいという書き込みが多ければ、次回からサイズ展開を増やすきっかけとなるでしょう。
社内やチームで商品やサービスを開発していると、どうしても視野が狭くなることがあります。ファンマーケティングを活用して顧客のリアルな声を聞くと改善点の発見や新商品のヒントを見つけることができ、企業やブランドの成長へとつながります。
5-3.ファンの獲得だけでなく新規顧客や潜在顧客の獲得もできる
ファンマーケティングは認知度の向上が見込めるため、新規顧客や潜在顧客の獲得も期待できます。
SNSを活用したキャンペーンでは、既にブランドや企業、商品を知っている顧客がリツイートやいいねをすることで、情報がどんどん拡散されていきます。
その結果、今までとは異なる客層にアプローチでき、新たな顧客獲得につながるでしょう。また、ライブコマースは今まで店舗に足を運べなかった顧客にも、商品やサービスをアプローチできます。実店舗が東京に店舗しかなく商品情報が露出していなかった場合は、ライブコマースを機に他の地域の新規顧客が獲得できる可能性があります。
「2.ファンマーケティングが注目を集める背景」でも触れましたが、新規顧客の獲得は本来時間やコストがかかるものです。ファンマーケティングを活用すればファンの育成や獲得と新規顧客獲得を同時に狙えるため、費用対効果が高いところもメリットです。
5-4.ファンがカスタマーサポートの役割を担ってくれる
熱狂的なファンは、進んで情報発信やコミュニティの形成を行います。
たとえば、A社ブランドの熱狂的なファンはA社のファンを探したりA社の情報発信ができるコミュニティを形成したりすることが多いです。
コミュニティ内では、悩みや疑問を解決するカスタマーサポートのような役割も担ってくれます。ときにはSNSやライブコマースでの新規顧客の質問に、顧客自ら回答をしてくれることもあります。
6.ファンマーケティングを活用するデメリット
6章では、ファンマーケティングを活用するデメリットをご紹介します。
事前に知っておくとファンマーケティングでの失敗を回避できるので、ぜひ参考にしてみてください。
ファンマーケティングを活用するデメリット |
①中長期的な視点で取り組む必要がある |
6-1.中長期的な視点で取り組む必要がある
ファンマーケティングは、取り組みを開始してすぐに結果が出るものではありません。新規顧客が急にファン化することは難しく、愛着心や信頼感を持った既存顧客へと育てる必要があるからです。
そのためには、結果を焦らずに中長期的な視点で取り組むことが大切です。ファンマーケティングの施策を継続して取り組める計画を立てましょう。
SNを運用する場合、短期間の運用で止めてしまってはファンが育つ前に離脱してしまいます。長期的な運用を見据えた運用体制を整えましょう。サンプリングやファンミーティング、ライブコマースなども定期的な開催ができるように、スケジュールや進行を調整しておくことが重要です。
6-2.ファンに依存しやすくなる
ファンマーケティングを進めていくと、一定のファンが売上を維持してくれるため安心感が生まれます。しかし、裏を返せば企業やブランドの利益がファンに依存している状態となります。
獲得したファンが永久にファンでいてくれればいいのですが、時代の流れや経済状況の変化で離脱する可能性は充分にあります。
多くのファンが立て続けに離脱した際に、急に焦らなくていいように企業やブランドとしての成長やマーケティングを止めないようにしましょう。
7.ファンマーケティングに向いている企業
ファンマーケティングに向いている企業としては、次の3つが挙げられます。
ファンマーケティングが向いている企業 |
・既存顧客のロイヤルティを向上させたい企業 |
7-1.既存顧客のロイヤルティを向上させたい企業
ファンマーケティングは、既存顧客の育成やロイヤルティの向上を目的とした施策です。自社の商品やサービスをリピートしているものの、愛着心や信頼感に欠けている顧客は一定数います。
そのような顧客との関係性を深めてロイヤルティを向上させることで、より良い関係性を構築できます。たとえば、商品やサービスの購入だけでなく積極的な新規顧客の紹介や口コミなども期待できるでしょう。
・既存顧客はいるもののロイヤルティが向上しない
・既存顧客を自社のファンへと育てたい
という場合は、ファンマーケティングの活用が向いています。
7-2.情報発信に慣れている企業
「4.ファンマーケティングの4つの手法」でも解説したように、ファンマーケティングは基本的に企業側から積極的に情報発信を行います。
そのため、オウンドメディアやSNSの運用、イベントの開催など、情報発信に慣れている企業にとってはチャレンジしやすい施策です。たとえば、すでにイベント開催を実施している場合は、ファンとの交流という視点を加えるだけで簡単にファンミーティングが実施できるでしょう。
既にSNSの運用をしている場合は、ファンへのアプローチをプラスするとファンマーケティングに活用できます。このように、自社からの情報発信の基盤を持っている場合は、難なくファンマーケティングに取り組めるでしょう。
7-3.ファンをターゲットとしたサービス展開を検討している企業
自社のファンをターゲットとしたサービスや商品展開を検討している企業も、ファンマーケティングに向いています。たとえば、一般販売している商品とは別にワンランク上の商品やセットを用意し、ファンのみに販売することで安定した収益を獲得する方法が当てはまります。
他にも、自社の商品やブランドのファンのみをターゲットとしたイベントの開催など、ファンにターゲットを絞ったサービス展開を実施している企業も増えています。
自社のファンをターゲットとするには一定数のファンを抱える必要があるので、まずはファンマーケティングを実施することが欠かせないでしょう。
8.ファンマーケティングを成功させるための4つのポイント
最後に、ファンマーケティングを成功させるための4つのポイントをご紹介します。
ファンマーケティングを成功させるための4つのポイント |
①「共感」「愛着」「信頼」の3つを意識する |
どのポイントもあらかじめ知っておくと簡単に実践できるので、チェックしておきましょう。
8-1.「共感」「愛着」「信頼」の3つを意識する
1つ目は、顧客からの「共感」「愛着」「信頼」を意識した施策を行うことです。
企業やブランドへの愛着や信頼、共感が欠けていると優良顧客やリピーターで止まってしまいます。顧客をファンにするには、収益への貢献だけでなく内面的な部分が非常に重要です。
共感 | 企業やブランド、商品やサービスの考え方や思い、姿勢に共感している |
愛着 | 企業やブランド、商品やサービスに心から惹かれて愛着がある |
信頼 | 企業やブランド、商品やサービスに信頼がある |
共感や愛着を高めるには、企業やブランドのストーリーや考え方を伝えることが大切です。商品やサービスを手に取るだけでは分からない部分を丁寧に伝えることで、思いに共感してもらえる可能性があります。
1つの商品を作るまでの苦労や制作秘話などバックグラウンドが分かると企業やブランドに対するイメージが変わり、愛着を持ってもらいやすくなります。
信頼を高めるには、顧客との関係性が重要です。ファンミーティングやライブコマースなど直接顧客と会話をする際には、真摯に対応することで信頼関係が築きやすくなります。
8-2.ファンの定義と目標を明確にする
2つ目は、ファンの定義とファンマーケティングの目標を明確にすることです。
ファンには「熱心な愛好家」と意味がありますが、定義は企業やブランドごとに異なります。どのような顧客をファンと呼ぶのか明確にしておかないと、ファンマーケティングが成功しているのか把握できません。
自社のファンを定義するときには、理想となるペルソナを設定することがおすすめです。年齢層や家族構成、趣味など細かな部分まで設定し、ペルソナと企業やブランドがどのような関わりを持っているのか描いておきます。
その上で、現実的なファンの定義を設定します。
たとえば、先ほどご紹介したNPSを参考にNPSで9~10を獲得して購入頻度が年4~6回の人など、明確な基準を作りましょう。自社のファンの定義が明確になると、サンプリングやファンミーティングの対象も選出しやすいです。
ファンの定義が決まったら、ファンマーケティングの目標を設定します。「自社のファンを昨年比110%にする」「ファンミーティングに200人招待できるようにする」など、具体的な内容が好ましいです。ファンの定義と目標が決まれば、手法や計画が立てられるようになり効率よく進められます。
8-3.ファンとのタッチポイントを複数持つ
3つ目は、ファンとのタッチポイントを複数持つことです。
「4.ファンマーケティングの4つの手法」でもお伝えしたとおり、ファンマーケティングにはさまざまな手法があります。どれか1つを実践するのはなく、複合的に組み合わせることで相乗効果が見込めます。
ファンミーティングを開催した様子をSNSで拡散すれば、ファンミーティングに参加してみたいと感じる顧客も出てくるでしょう。また、ライブコマース前にSNSで周知をすると、視聴者が増える可能性があります。
このように、一つの手法で終わるのではなく自社の商品やサービスと相性のいい手法を複数組み合わせて多方面からアプローチできるようにしましょう。ファンとのタッチポイントは可視化をして、どのような手法があるのか発信することも大切です。
8-4.ファン同士がつながりを持てる場を提供する
4つ目は、ファン同士のつながりが持てる場を提供することです。ある程度ファンが増えてきたらファン同士の横のつながりを作ることで、ファンのコミュニティが広がっていきます。
ファンのコミュニティができればその中で情報交換や紹介などができ、勝手に自社のファンの輪が大きくなっていくでしょう。
ファン同士のつながりは、ファンミーティングやサロンなどで構築できます。たとえば、ファンミーティングの開催時に参加者同士が交流できる時間を設けると、ファン同士のつながりが生まれます。
一定のロイヤルティを満たした顧客を対象としたオンラインサロンやSNSがある場合は、その中で交流できる仕組みを作るとファン同士の交流が活発化します。
まとめ
いかがでしたか?ファンマーケティングの定義や手法が把握でき、実際に取り組めるようになったかと思います。
最後に、この記事の内容をまとめてみると
〇ファンマーケティングとは
〇ファンマーケティングが注目を集める背景
〇ファンマーケティングの測定方法
〇ファンマーケティングの手法は次の4つ
1)ファンミーティング
2)SNSの活用
3)サンプリング
4)ライブコマース
〇ファンマーケティングを活用するメリットは次の4つ
1)自ら情報を選別し発信できるため、自社のブランディングに活用できる
2)顧客から良質なフィードバックをもらえる
3)ファンの獲得だけでなく新規顧客や潜在顧客の獲得もできる
4)ファンがカスタマーサポートの役割を担ってくれる
〇ファンマーケティングのデメリット
1)短期間で成果が出る手法ではないため、中長期的な視点で取り組む必要がある
2)成果が出てくるとファンの存在に依存しやすくなる
〇ファンマーケティングを成功させるためのポイントは次の4つ
1)顧客からの「共感」「愛着」「信頼」を意識した施策を行う
2)自社のファンの定義と目標を明確にする
3)複数の手法を活用してファンとのタッチポイントを増やす
4)ファン同士がつながりを持てる場を提供する
この記事を参考にファンマーケティングを理解して、既存顧客をファン化できる施策ができるようになることを願っています。