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「教育DX」とは?いま効果のある6つの施策を事例とともに解説

この記事で学べること

教育DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して教育モデルや組織文化を変革し、新たな価値を創出する取り組みです。教育の質を向上させるためには、具体的な施策を実施することが重要です。

  • 教育DXの具体的な施策6選:教育DXにおいて効果的な施策には、オンライン学習、デジタル教材の活用、コミュニケーションのオンライン化、テストの自動化、データの収集と活用、生成AIの導入がある。
  • 教育DXのメリット:教育DXを推進することで、教育の質向上、業務効率化、個別最適な教育提供、ITリテラシーの向上、円滑なコミュニケーションによる負担軽減が実現できる。
  • 教育DX推進の課題と解決策:ITインフラの整備、セキュリティ対策、教職員のITリテラシー向上が課題であり、明確なビジョンと戦略の策定、学校全体での取り組み体制構築、外部支援の活用が解決策となる。

「教育業界におけるDXは、現状どうなっている?」
「教育DXを成功させるためには、具体的に何をしたらよい?」

このような疑問を抱えている方は、現在とても多いでしょう。

教育関係者の方々は、日々の業務に追われる中で、教育DXのような新たな取り組みに着手することは、時間的・人的リソースの面でも大きな負担となりがちです。しかし、教育DXはもはや一部の先進校だけの話ではなく、全国的に避けられない流れとなっています。

教育DXとは、「デジタル技術を活用して教育モデルや組織文化を変革し、新たな価値を創出すること」です。

ここで重要なのは、教育DXが単なるICT機器の導入ではなく、教育のあり方そのものを根本から見直す取り組みであるという点です。文部科学省は、GIGAスクール構想や教育データの利活用、校務DX、生成AIの活用などを柱に、教育DXを国家的プロジェクトとして推進しています。     

教育DXの概要  教育DXにおける効果的な施策には、主に以下の6つがあります。

1. 生成AIの活用(教材作成支援、質問対応、作文添削など)
2. MEXCBT(メクビット)による個別最適な評価と学習支援
3. EduSurveyの導入による学習状況の可視化と政策への反映
4. 校務DXの推進(業務効率化と教員の働き方改革)
5. ハイブリッド学習環境の整備(対面とオンラインの融合)
6. 教育データの利活用(学習ログの分析による個別指導)

これらの施策は、文部科学省やデジタル庁が発表している最新のロードマップにも明記されており、全国の自治体や学校で導入が進んでいます。

教育DXは、文部科学省を中心に政府主導で推進されており、社会の変化に対応するための不可避な流れとなっています。

多くの学校がこの取り組みから明確な効果を感じている一方で、まだ十分な対応ができていない学校も少なくありません。特に、校務DXやCBT(コンピュータ試験)の導入、生成AIの活用などは、進捗にばらつきが見られます。

DXのような大規模プロジェクトは、明確な戦略を策定し、関係者全員を巻き込んで進める必要があります。そのため、教育DXの推進を成功させるためには、目的と方法を正しく定め、既存の成功事例や信頼できる公的資料を参考にしながら、慎重に計画を進めることが重要です。

「とりあえず何かしらのデジタル技術を取り入れればいいだろう」という場当たり的な対応では、教育の質を向上させるどころか、現場の混乱を招き、現在の教育のレベルを維持することさえ困難になる可能性があります。

この記事を読むことで、教育DXの基本概念と、具体的な成功事例を通じて、どのようなアプローチが効果的であるかがわかります。どのようなメリットと注意点があるかを理解することで、自校での推進戦略を具体的に検討できるようになるでしょう。

目次 [非表示]

1.教育DXとは?「教育DX」の定義と求められる背景

教育DXとは?「教育DX」の定義と求められる背景

まずは、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何かについて理解しましょう。
教育DXという概念を正しく理解することは、効果的な取り組みを進めるための基盤となります。この概念を誤解していると、適切な目標や戦略を設定するのが難しくなってしまいます

そこでこの章では、「教育DXという言葉の意味」と「教育DXが求められる背景」について解説します。

1-1.教育DXの定義|デジタル技術を活用して教育モデルや組織文化を変革し、新たな価値を創出すること

教育DXとは、「デジタル技術を活用して教育モデルや組織文化を変革し、新たな価値を創出すること」を指します。

ここで重要なのは、教育DXが単なる教育プロセスのデジタル化ではなく、教育そのもののあり方を変革することを目指すという点です。

教育DXによる段階的な教育変革

出典:文部科学省「教育DX・教育データ利活用の現状と展望」

文部科学省が示す教育DXのイメージでは、以下のような段階的な変化が示されています。

・デジタイゼーション:紙の教材をPDF化するなど、アナログ情報のデジタル化
・デジタライゼーション:デジタル技術を活用した教育の効率化(例:オンライン授業)
・デジタルトランスフォーメーション(DX):教育の構造そのものを変革し、個別最適な学びや教育データの利活用を通じて新たな価値を創出

【教育DXによって実現できることの具体例】
文部科学省は、教育DXに有用なMEXCBT(メクビット)という教育プラットフォームを提供しています。

MEXCBTとは、MEXT(文部科学省)とCBT(Computer Based Testing:コンピュータ上で実施される試験)を組み合わせた名称で、以下のような機能を備えています。

・国や自治体が作成した問題を活用した試験・教材作成
・自動採点・学習状況のアセスメント
・学習履歴の蓄積と分析による個別支援

教育DXによる段階的な教育変革

出典:文部科学省「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について」

MEXCBTを活用することで、学習者は時間や場所にとらわれず、自分のペースで学習できるようになります。また、教員も効率的かつ効果的に学習支援を行うことが可能になります。

さらに2025年現在では、生成AIとの連携も進んでおり、MEXCBT上でAIが学習者の理解度に応じたフィードバックを提供するなど、より高度な個別最適化が実現されつつあります。

1-2.教育DXが求められる背景|未来を担うデジタル人材育成のために必要とされる

教育DXが求められる背景には、デジタル人材の育成に関連する社会的課題が存在します。

・デジタル技術の急速な発展により、将来の職業や社会構造の予測が困難になっている
・教育格差が拡大し、デジタルスキルをもたない子供たちの将来の可能性が狭まる
・デジタルネイティブ世代に対して、従来型の教育では十分な対応ができていない

これらの課題に対処するためには、デジタルスキルを主軸とした柔軟な学びが不可欠です。

2025年現在、文部科学省・デジタル庁・経済産業省が連携して「教育DXロードマップ」を策定し、以下のような方向性が示されています。

・生成AIを活用した学習支援と教員業務の効率化
・教育データの連携基盤整備による自治体間の情報共有
・多様な学びの支援(動画教材、ポートフォリオ評価、個別最適化)

現代の子どもたちは、物心ついたときからスマートフォンやタブレットに囲まれて育っており、従来の一斉授業型の教育では十分な学習効果が得られないケースもあります。

そのため、教育DXは、子どもたち一人ひとりに適した学習方法を提供し、教育の質を向上させるために、今まさに必要とされているのです。

2.【2025年】教育DXの現状と進展

【2025年】教育DXの現状と進展

次に、世の中の教育DXは実際にどの程度進んでいるのか、現状を見てみましょう。

教育DXは、文部科学省・デジタル庁・経済産業省などが連携し、政府主導で推進されています。
その結果、積極的に取り組んで効果を実感している学校もあり一方で、まだ十分に取り組めていない、あるいは活用方法が分からないという意見も少なくありません。

具体的な詳細について解説していきます。

2-1.文部科学省が提唱する教育DXの4本柱に沿って推進している

文部科学省は、教育DXを進めるにあたっての柱となる取り組みに、以下の4点を挙げています。

1)GIGAスクール構想による一人一台端末の活用をはじめとした学校教育の充実
2)大学におけるデジタル活用の推進
3)生涯学習・社会教育におけるデジタル化の推進
4)教育データの利活用による、個人の学び、教師の指導・支援の充実、EBPM等の推進

出典:文部科学省「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」

2025年には、これらに加えて「生成AIの活用」「校務DXの加速」「教育データ連携基盤の整備」などが新たな重点施策として追加され、教育DXロードマップとして整理されています

2-2.小中高校には概ね端末が行き渡り、活用が始まっている

文部科学省の調査によると、全国の小中高校では、学習者用端末の整備がほぼ完了しており、端末を週3回以上活用する学校の割合は小学校で90.6%、中学校で86.5%に達しています。

学習者用端末の整備状況

・一人一台端末の整備率はほぼ100%
・指導者用端末の整備も進行中
 (整備済み自治体の割合は2025年時点で約90%)

端末を利用できる環境の整備状況

・普通教室の無線LAN整備率は97.8%(2024年時点)
 →100%を目指して整備中

・校務支援システムのクラウド化が進行中
 (非クラウド型は時代遅れとされている)

・教育情報セキュリティポリシーの策定済み自治体は49.1%(2025年)
 →100%を目標

学習者用端末の活用状況

・端末を活用した授業は全国的に定着しつつあり、デジタル教科書の活用率も上昇中(40.5%→80%→100%を目標)
・生成AIを校務で活用する学校の割合は2025年時点で50%、今後さらに拡大予定

出典:文部科学省「【資料5-1】教育DXに係るKPIの方向性等について」

2-3.効果を実感する反面、取り組みが十分ではないと感じる教員は少なくない

このように教育DXの実施が広がる中で、その効果を実感しているという声が多い一方、課題を感じる教員も少なくありません。

■ 教育DXに対する肯定的な意見

・約8割の児童生徒が「楽しく学べた」「分かりやすかった」と評価
・教員の約80%が「授業や校務が改善された」と回答
・学力向上や意欲の向上にも一定の効果が見られる

出典:文部科学省「学びのイノベーション事業実証研究報告書」、LearnMore「学校DXの現状調査結果速報

■教育DXに困難を感じるという意見

・リテラシーの高い教職員に業務負担が偏る:59.4%
・ICT活用方法が分からない:48.9%
・教職員向けICT環境が不十分:38.1%

出典:デジタル庁「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート

【Point】 教育DXでは「CBT(コンピュータ試験)」「完全オンライン化」でとくに取り組みが遅れがち

教育DXの施策は学校によって進行状況が異なりますが、「CBT」や「完全オンライン化」の取り組みは特に遅れが見られます。

文部科学省によると、2023年の全国小中学校を対象とした調査では、「小規模なテストにCBTを取り入れている」割合は約45.3%で2023年の34.2%から増加し、「職員会議などを対面だけではなくオンラインで実施している」割合は28.7%で2023年の20%未満から改善しています。

出典:文部科学省「教育DXロードマップ」

3.効果的な教育DXの施策6つ【事例】

効果的な教育DXの施策6つ【事例】

教育DXは必要かつ効果的な取り組みである一方で、その推進には課題を抱える学校も少なくないことが分かりました。それでは、多少の負担を受け入れてでも実行すべき施策とは何でしょうか?
また成功を収めている学校は、どのように教育DXに取り組んだのでしょうか?

ここからは、教育DXの効果的な施策6つについて、成功事例をご紹介しながら具体的に解説します。

効果的な知育DXの施策一覧

3-1.オンライン学習(事例:大阪府堺市立南八下小学校)

教育DXにおける効果的な施策の1つは、オンライン学習です。

オンライン学習とは、インターネットを介して行う学習の形式であり、遠隔地での同時双方向授業や、家庭学習における動画教材・学習支援システムの活用などが含まれます。

2025年現在では、GIGAスクール構想の進展により、全国の小中学校で一人1台端末が整備され、オンライン学習が日常的に行われるようになっています。

■ 事例:大阪府堺市立南八下小学校
堺市立南八下小学校では、探究的な学びと校務DXを融合させた先進的な取り組みを行っています。特に、Google Workspace for Educationを活用したオンライン学習環境の整備が進んでおり、児童は日々の授業でGoogle MeetやGoogle Classroomを活用しています。

■ 活用の具体例

  • 児童が自ら課題を設定し、オンラインで調べ学習や意見交換を実施。
    動画教材やクラウド資料を活用し、学びを深める。
  • 保護者向けの学習報告や連絡もオンラインで行い、家庭学習の支援体制を強化。
  • 授業設計や教材共有をGoogleドライブで行い、校内の教育力を底上げ。

この取り組みにより、以下の成果が得られています。

・学習意欲の向上:児童が自分のペースで学べる環境が整い、主体的な学びが促進された。
・教育の質の向上:教員がICTを活用した授業設計に慣れ、授業の多様性と柔軟性が向上。
・校務の効率化:オンラインでの情報共有により、教員の業務負担が軽減され、教育活動に集中できる環境が整った。

参考:文部科学省「StuDX Style」

このように、オンライン学習は時間や場所の制約を受けず、子供に公正かつ継続的な学習機会を提供することに役立つのです。

▼オンライン学習の実施にあたって役立つ資料
文部科学省は「StuDX Style(スタディーエックススタイル)」という情報サイトを運用しています。
StuDX Styleでは、一人1台端末の活用方法や各学校の取り組み事例、参考資料などに関する情報が提供されているので、ぜひ参考にしてみてください。

3-2.デジタル教材の活用(事例:群馬県甘楽町立福島小学校)

教育DXにおける効果的な施策の2つ目は、デジタル教材の活用です。

デジタル教材とは、電子化された教科書や動画、アプリケーションなど、端末上で利用する教材のことで、児童の理解を深めるだけでなく、主体的・協働的な学びを促進するツールとして注目されています。

■ 事例:群馬県甘楽町立福島小学校「ICT未経験からの挑戦」
福島小学校では、ICT活用に不安を抱える教員が多い中、外部有識者の支援を受けながら、段階的にデジタル教科書と学習支援ソフトの導入を進めました。教員研修と公開授業を通じて、ICT活用スキルを習得し、児童の学びに変化が現れました。

■ 活用の具体例

  • 児童がデジタル教科書に直接書き込み、自分の読み取りを整理。
    クラウド上で共有し、他者の視点と比較しながら再考する。
  • 自分の考えを瞬時に共有し、他者の意見を参考にすることで、思考の深まりが見られた。
  • 学習の過程をポートフォリオとして蓄積し、自己評価と教師によるフィードバックを通じて学びを再構築。

■ 成果と効果

・児童の思考力・表現力が向上:自分の考えを構造化して表現する力が育まれ、発表の質が高まった。
・協働的な学びの定着:他者の意見を取り入れながら、自分の考えを再構築する姿勢が育成された。
・教員の授業設計力が向上:ICTを活用した教材準備や評価方法の工夫により、授業の質が向上。

参考:文部科学省「学習者用デジタル教科書の活用による指導力向上ガイドブック」

このようにデジタル教材の活用は、効果的な授業を行って子供の学びを広げ、深めることにつながります。

3-3.コミュニケーションのオンライン化(事例:久留米市立篠山小学校)

教育DXにおける効果的な施策の3つめは、コミュニケーションのオンライン化です。
学校では、以下のような対面のコミュニケーションをオンラインに変更することができます。

・児童生徒の欠席・遅刻・早退連絡
・児童生徒や保護者との連絡・問い合わせ
・学校説明会や保護者面談
・調査・アンケート・日程調整
・職員間の情報共有や連絡・会議
・授業研究会や校内研修

これらのコミュニケーションをオンライン化することで、時間や手間、紙資料の削減が可能になり、情報共有のスピードと正確性が向上します。

■ 事例:福岡県久留米市立篠山小学校「Googleチャットによる教職員間の情報共有」
篠山小学校では、教職員間の連絡手段としてGoogleチャットを導入し、校内の情報共有を効率化しました。従来は口頭や付箋メモによる情報伝達が中心で、緊急性の高い連絡がスムーズに行えないという課題がありました。

■ 活用の具体例

  • チャットを使うことで、必要な人に必要な情報がタイムリーに届くようになった。
  • チャット上でPDFやスライド資料を共有することで、ペーパーレス化が進行。
  • やり取りの履歴が残るため、情報の抜け漏れや誤解が減少。

■ 成果と効果

・教職員の業務効率の向上:情報共有の即時性が高まり、業務のスピードと正確性が向上した。
・緊急連絡の伝達精度の改善:口頭やメモによる伝達からチャットによる即時連絡に移行したことで、緊急時の対応が迅速かつ確実になった。
・紙資料の削減によるコストカット:PDFやスライド資料のデジタル共有が可能となり、ペーパーレス化が進行。印刷コストや紙の使用量が削減された。
・情報の見える化による業務の透明性向上:チャット履歴の蓄積により、情報の抜け漏れや誤解が減少し、業務の透明性が向上した。

参考:文部科学省「学習者用デジタル教科書の活用による指導力向上ガイドブック」

このようにコミュニケーションのオンライン化は、教職員同士や児童生徒・保護者間のコミュニケーションを容易にし、効率的に共通理解を形成することに役立ちます。

3-4.テスト関連業務の自動化(事例:横浜市立神大寺小学校)

教育DXにおける効果的な施策の5つ目は、テストの自動化です。
学校現場では、以下のようなテスト関連業務をデジタル化・自動化することが可能です。

・テスト問題の作成
・テストの配布・回収
・採点作業(選択式・記述式)
・成績の集計・分析
・授業改善へのフィードバック活用

専用のシステムを利用することで、問題の作成や配布・採点をコンピュータに代行してもらうことができます。

これによって、テスト業務が効率化されるだけではなく、問題の質を担保したり、得られたデータを学習に活かしたりすることが可能になります。これらの業務を自動化することで、教員の負担軽減だけでなく、学習の質向上や個別最適化にもつながります。

■ 事例①:横浜市立神大寺小学校「EdLogクリップ採点支援システムの活用」
神奈川県横浜市の神大寺小学校では、EdLogクリップ採点支援システムを導入し、単元テストの採点をデジタル化しています。テスト用紙をスキャンし、設問ごとに×(バツ)をつけて採点する方式で、採点業務にかかる時間は従来の約5分の1に短縮されました。

■ 活用の具体例

  • 従来の手作業に比べ、採点時間が約80%削減。
  • 設問ごとの誤答傾向が一目でわかり、授業改善に活用。
  • 「ひまわり先生」という点数集計ソフトと連携し、保護者向け資料の作成にも活用。

■ 成果と効果

・教員の業務効率の向上:採点作業の負担が軽減され、授業準備に時間を充てられるようになった。
・授業改善の促進:誤答傾向の分析により、指導内容の見直しが可能に。
・保護者との情報共有の強化:成績データを活用した資料作成により、保護者との理解促進が図られた。

参考:教育家庭新聞「小学校でデジタル採点システム活用 全校で推進~横浜市立神大寺小学校」

■ 事例②:先生AIアシストLab(EDIX東京2025より)
2025年のEDIX東京では、ソフトバンクが展示した「先生AIアシストLab」が注目を集めました。このサービスは、生成AIを活用して、教材・テストの作成から採点までを一括で支援するものです。

■ 活用の具体例

  • PDF教材を読み込ませるだけで、四択・穴埋め・並び替え・記述式など多様な形式の問題を自動生成。
  • 文脈を理解し、「意味が正しければ正解」「キーワードが含まれていれば部分点」など柔軟な採点が可能。
  • プロンプト入力などの知識がなくても、直感的に操作できる設計。

■ 成果と効果

・授業準備の効率化:教材から問題作成までをAIが支援し、教員の準備時間を大幅に削減。
・成績評価の精度向上:記述式の柔軟な採点により、学習理解の深さをより正確に評価可能。
・教育の個別最適化:AIが学習履歴をもとに問題を調整することで、児童生徒一人ひとりに合った学びを提供。

参考:ソフトバンク株式会社「EDIX東京2025展示「先生AIアシストLab」紹介」

このようにテストの自動化は、テストにかかる手間と時間を削減するだけでなく、学びを最適化することにも役立ちます。

3-5.データの収集と活用(事例:千葉県柏市教育委員会)

教育DXにおける効果的な施策の6つ目は、データの収集と活用です。
学校には、以下のようなデータが存在します。

・学籍情報
・出欠席情報
・健康観察記録
・日常所見情報
・成績評定情報
・アンケート結果(児童生徒・保護者・教員)
・学習履歴
・指導計画情報など

これらのデータを一元的に集約・可視化し、分析することで、教育の質向上や業務改善、個別支援の強化につながります。

■ 事例①:千葉県柏市教育委員会「利用状況可視化機能による教育改善」
柏市教育委員会では、Webセキュリティ製品「i-FILTER@Cloud GIGAスクール版」を導入し、児童生徒33,000台、教員2,000台、校務端末2,300台に展開。端末の利用状況を可視化する機能を活用し、児童生徒の学習傾向や利用時間を把握しています。

■ 活用の具体例

  • 深夜利用の傾向を把握し、保護者と連携して生活習慣の改善を支援。
  • 利用時間と学習成果の相関を分析し、授業設計に反映。
  • 教員の勤怠データやアンケート結果をもとに、学校行事の見直しを実施。

■ 成果と効果

・教育の質向上:データに基づく授業改善や指導の最適化が進行。
・業務の効率化:校務支援システムと連携し、教員の負担軽減を実現。
・保護者との連携強化:データを活用した説明資料により、保護者の理解と協力を促進。

参考:文部科学省「全国の学校における働き方改革事例集」

■ 事例②:渋谷区・戸田市・奈良県の教育データ活用
全国でも教育データの活用が進んでおり、以下のような事例が報告されています。

  • Microsoft Azureを活用し、生徒の学習状況をリアルタイムで可視化。苦手科目の特定と個別補習を実施。
  • 出席率や生活習慣のデータを分析し、不登校の兆候を早期発見。支援体制を強化。
  • クラウド型学習支援プラットフォーム「Classi」を導入し、学習サイクルの最適化を支援。

参考:Hakky Handbook「教育データ活用事例」

このようにデータの活用と収集は、現状を客観的に評価し、教育や業務の成果を最大化するための戦略を立てることに役立ちます。

4.教育DXを推進することで得られる5つのメリット

教育DXを推進することで得られる5つのメリット

教育DXの方法についてイメージできたところで、提案に必要なのは「取り組むことのメリット」です。前章の成功事例からも感じられたかと思いますが、改めて整理すると、教育DXには以下5つのメリットがあります。

・【学校】教育の質が向上する
・【学校】業務が効率化する
・【児童生徒・保護者】個々の特性に合わせた教育が受けられる
・【児童生徒・保護者】ITリテラシーが向上する
・【児童生徒・保護者・学校】円滑なコミュニケーションによる業務効率化・負担軽減

4-1.【学校】教育の質が向上する

教育DXによって、学校は教育の質を大きく向上させることができます。

教育の質とは、個々の学習者が望む成果を得られるように支援することです。2025年に改訂された「教育DXロードマップ」では、「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」の実現を目指し、以下のような取り組みが推進されています

・個別最適な学習支援(生成AIや学習ログの活用)
・協働的・対話的な授業の実現(オンライン・ハイブリッド型)
・時間・場所にとらわれない教材活用(デジタル教科書・eポータル)
・リアルタイムなフィードバック(学習データの可視化)

例えば、生成AIを活用して児童生徒の理解度に応じた課題を自動生成したり、海外の専門家とオンラインで交流する探究型授業などが実施されています。

2025年の調査では、児童生徒の約65%が「自分に合った授業になっていない」と感じている一方で、教育DXの導入により、学習者の満足度や学力向上が報告されています。
参考:デジタル庁・文部科学省ほか「教育DXロードマップ(2025年6月改訂版)」

4-2.【学校】業務が効率化する

教育DXの推進により、学校業務の効率化も進んでいます。

2025年の「次世代校務DXガイドブック」では、校務支援システムやクラウド環境の整備によって、教員の業務負担を軽減し、児童生徒と向き合う時間の確保が可能になるとされています。

また、生成AIの活用により、教材作成やテスト採点、学習記録の分析などが効率化され、教員の働き方改革にも寄与しています。
参考:文部科学省「次世代校務 DX ガイドブック」

4-3.【児童生徒・保護者】個々の特性に合わせた教育が受けられる

教育DXは、児童生徒の多様な特性に応じた教育の提供を可能にします。

2025年の教育DXロードマップでは、学習者の興味関心や習熟度に応じて教材や学習方法を最適化することが重視されています。

・苦手分野は動画教材で繰り返し学習
・得意分野は探究型課題で深掘り
・自宅学習・グループワークの選択
・視覚・聴覚・触覚などに応じた教材形式

参考:デジタル庁・文部科学省ほか「教育DXロードマップ(2025年6月改訂版)」

また、学習eポータルやMEXCBTなどのツールを活用することで、学習履歴や理解度に基づいた指導が可能になります。

4-4.【児童生徒・保護者】ITリテラシーが向上する

教育DXの推進により、児童生徒・保護者のITリテラシーも向上しています。
昨今は生成AIやクラウドサービスの活用が一般化し、情報モラルやセキュリティ意識の育成が教育現場で重要視されています。

ITリテラシーは、将来の進路や職業選択において不可欠なスキルであり、教育DXはその基盤を築く役割を果たしています。教育DXの推進は、子供たちの進路における基礎的なスキルを保証するという点で、もはや急務であると言っても過言ではありません。

4-5.【児童生徒・保護者・学校】円滑なコミュニケーションによる業務効率化・負担軽減

教育DXにより、児童生徒・保護者と学校とのコミュニケーションが円滑になり、業務効率化や教職員の負担軽減、働き方改革が実現します。

従来の対面や紙書類のやりとりに加えて、メールやビデオ通話、学習eポータルなどを活用することで、保護者との連絡や児童生徒の質問対応が迅速に行えるようになります。これにより、教職員は業務を効率的に進めることができ、負担が軽減されるため、働き方改革にも寄与します。

このような環境下で、児童生徒が教員に気軽に質問でき、疑問を迅速に解決できるほか、保護者と教員の連絡が密になることで、子供の状況を正確に把握できるようになります。

教育DXによって、児童生徒・保護者と学校との連携が強化され、問題解決や信頼関係の構築が促進されます。

5.教育DXを推進する上で解決が必要な3つの課題

教育DXを推進する上で解決が必要な3つの課題

教育DXには多くのメリットがありますが、推進を阻む課題も存在します。
スムーズに取り組みを進めるためにはこれらの課題を解決が必要になるため、把握しておきことが重要です。

教育DXを推進する上での課題は、主に以下の3つです。それぞれの内容について、解説していきます。

教育DXを推進する上で解決が必要な課題の一覧

5-1.ITインフラの整備

教育DXの基盤となるITインフラの整備は、最も重要な課題の一つです。
これを受けて、文部科学省は「Next GIGA構想(GIGAスクール構想第2期)」を策定し、2025〜2027年にかけて以下のような再整備を進めています。

・高速・安定したネットワーク環境の整備
・端末の更新・スペック向上
・校務支援システムのクラウド化
・多様な学習ツールとの連携支援

これらの整備により、児童生徒がストレスなく学習できる環境を整えるとともに、教職員の業務効率化も図られます。
参考:文部科学省「学校のICT環境整備3か年計画」

5-2.セキュリティ対策

教育DXでは、児童生徒の個人情報や学習履歴など、機微な情報を扱うため、情報セキュリティの強化が不可欠です。

教育の現場では、児童生徒の成績やテスト問題など、重要な情報が数多く扱われます。そのため、電子化やオンライン利用にあたっては、それらが漏洩しないよう厳重に管理することが欠かせません。

また、情報の不適切な使用によって児童生徒のプライバシーが侵害されたり、いじめなどのトラブルが発生したりしないよう、情報モラルの周知・育成を徹底することが求められます。

文部科学省は2025年3月に「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改訂し、以下のような対策を推奨しています。

・情報資産の重要度に応じた分類と管理
・多要素認証の導入
・アクセス権限の厳格な設定
・セキュリティポリシーの策定と周知

また、教職員や児童生徒に対する情報モラル教育も強化されており、トラブルの未然防止に向けた取り組みが進められています。
参考:文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」

5-3.教職員のITリテラシー向上

教育DXの成否を左右するのが、教職員のITリテラシーです。教職員のITリテラシー向上も、教育DXの進度を大きく左右する課題です。

2025年に改訂された「教育DXロードマップ」では、教職員がデジタル技術を活用して教育を変革できるよう、以下の支援策が明記されています3。

・ITリテラシーの高い支援人材の配置
・教職員向けのDX研修の充実
・リスキリング(新たなスキルの獲得)の推進
・教育データの活用支援

特に、生成AIや学習ログの活用が進む中で、教職員がそれらを適切に使いこなす力が求められています。

Point!

教職員にも求められる「リスキリング」の重要性
近年、社会全体で「リスキリング(Re-skilling)」という概念が急速に注目を集めています。これは、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代において、職業人が新たなスキルを獲得し、変化に適応するための学び直しを意味します。

経済産業省はリスキリングを以下のように定義しています。


「新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
出典:経済産業省「リスキリングとはーDX時代の人材戦略と世界の潮流ー」


この考え方は、企業人だけでなく、教育現場の教職員にも強く求められるようになっています。教育DXの推進にあたっては、単にICT機器を使いこなすだけでなく、生成AIや学習ログの活用、データに基づく指導設計など、教育の質を高めるための新しいスキルが必要です。

文部科学省とデジタル庁が共同で策定した「教育DXロードマップ(2025年版)」では、教職員のリスキリングを支援する施策として以下が挙げられています。

・ITリテラシーの高い支援人材の配置
・教職員向けのDX研修の充実
・学習eポータルや生成AIの活用方法の習得
・教育データの分析・活用スキルの育成

また、経済産業省が運営する「マナビDX」などのプラットフォームでは、教職員を含む社会人向けに無料・有料のデジタルスキル講座が提供されており、リスキリングの実践を後押ししています。

6.教育DXを成功させるために押さえるべき3つのポイント

教育DXを成功させるために押さえるべき3つのポイント

最後に、教育DXを成功させるために押さえるべきポイントをお伝えしておきます。

教育DXは、単なるICT導入ではなく、教育の質や学びの在り方を根本から変革する取り組みです。2025年6月に改訂された「教育DXロードマップ」では、成功に向けた重要な視点として、以下の3点が強調されています。

・明確なビジョンと戦略を策定する
・学校全体で取り組む体制を構築する
・外部支援を積極的に活用する

6-1.明確なビジョンと戦略を策定する

教育DXを成功させるためには、取り組む前に「何のためにDXを進めるのか」というビジョンを明確にし、それに基づいた戦略を策定することが不可欠です。

デジタル庁が策定した「教育DXロードマップ」では、以下のようなビジョンが掲げられています。

「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」
出典:デジタル庁「教育DXロードマップ」

このビジョンを実現するためには、学校ごとに「何を変えたいのか」「どのような学びを目指すのか」を明文化し、段階的な計画を立てることが重要です。

6-2.学校全体で取り組む体制を構築する

教育DXは、教職員だけでなく、児童生徒・保護者・教育委員会・自治体・外部支援者など、多様な関係者が一丸となって取り組むことが成功の鍵です。

文部科学省の「次世代校務DXガイドブック」では、都道府県単位での連携や、学校・首長部局・事業者との共通認識の形成が推奨されています。

「教育委員会を主な読み手として想定し、学校、首長部局、関連事業者等の幅広い関係者との共通認識を図る」
出典:文部科学省「次世代校務DXガイドブック」

校内での合意形成や、教職員間の役割分担、保護者への説明・理解促進など、**「自分ごと化」**を促す工夫が求められます。

6-3.外部支援を積極的に活用する

教育DXは専門性が高く、学校単独での推進には限界があります。そこで、外部の専門機関や支援サービスを活用することが推奨されています。

教育DXロードマップでは、以下のような外部支援の活用が明記されています。

・教育DXサービスマップやデジタルマーケットプレイス(DMP)を通じた情報収集
・民間事業者との連携による導入・運用支援
・教育委員会による支援人材の配置や研修機会の提供

「教育委員会・学校におかれては、標準規格に準拠したサービスを効果的に活用し、教育DXに向けた学習者のための積極的な取組を期待したい」
出典:デジタル庁「教育DXロードマップ(PDF)」

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何から始めればよいのかわからない、教職員の研修についても相談したいなど、どのようなことでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

この記事では、教育DXの基礎知識について詳しく解説しました。以下に要点をまとめます。

教育DXとは、「デジタル技術を活用して教育モデルや組織文化を変革し、新たな価値を創出すること」です。

教育DXにおける一定の成果を上げるために効果的な施策は、主に以下の6つです。

1) オンライン学習
2) デジタル教材の活用
3) コミュニケーションのオンライン化
4)テストの自動化
5)データの収集と活用

このように教育DXに取り組むことで得られるメリットには、以下のようなものがあります。

・【学校】教育の質が向上する
・【学校】業務が効率化する
・【児童生徒・保護者】個々の特性に合わせた教育が受けられる
・【児童生徒・保護者】ITリテラシーが向上する
・【児童生徒・保護者・学校】円滑なコミュニケーションによる業務効率化・負担軽減

一方で、教育DXを推進するために解決すべき課題もあります。

・ITインフラの整備
・セキュリティ対策
・教職員のITリテラシー向上

教育DXを成功させるためには、以下のポイントを押さえましょう。

・明確なビジョンと戦略を策定する
・学校全体で取り組む体制を構築する
・外部支援を積極的に活用する

教育DXは、学びを通して社会の発展に貢献する取り組みであり、回避できない時代の流れでもあります。

ぜひこの記事を参考にして、自校における教育DXの実現が具体化されることを祈っております。

トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
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