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学校の相談窓口をコールセンターに。教職員の働き方改革に向けた先進事例をご紹介!<自治体政策立案応援シリーズ2025>レポート

近年の教育現場では、教職員の残業時間削減や負担軽減が喫緊の課題となっており、とくに保護者への対応が大きな負担となっています。

このような状況を受けて、2025年6月11日に「給特法」が改正され、教職員の働き方改革の一環として「保護者等への対応の支援」が決定しました。

本年6月から、トランスコスモスは静岡県裾野市と連携し、保護者から学校への連絡・相談を民間のコンタクトセンターで一次受けするという全国初の実証事業を開始しました。

この取り組みを紹介するため、7月にデロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社と共同で「自治体政策立案応援シリーズ2025:教職員の負担軽減に向けた先進事例のご紹介」と題したセミナーを開催。本記事では、その詳細についてレポートします。

【登壇者】

    デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 齊藤綾子様     

デロイト トーマツ
リスクアドバイザリー
合同会社

吉田 圭造様、齊藤 綾子様

裾野市教育委員会 学校教育課 課長 佐野充洋様

 


裾野市教育委員会 学校教育課 課長 

佐野 充洋様 

トランスコスモス株式会社 サービス開発本部 本部長 森紗介

 

トランスコスモス株式会社 
CX事業統括 DCC総括 サービス開発本部 本部長 

森 紗介 

1.教職員の負担軽減に向けた取り組み

文部科学省の「学校における保護者等への対応の高度化事業」において、全国的な調査や12自治体への支援に携わっているデロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社が、行政による学校問題解決のための支援についてお話してくださいました。

勤務実態調査によると、教職員にとって保護者やPTAへの対応は重要でありつつも負担感が強いことが分かりました。学校や教育委員会は、若手教職員の増加やその経験不足、保護者からの多様な要望に直面しています。

とくに、地域の保護者の孤立化が進むなかで、従来の学校単独での対応には限界があり、外部機関との連携が求められます。このため、組織的な対応の重要性が高まり、行政による支援体制の構築が必要とされています。

具体的には、各自治体で相談窓口の設置や専門家の派遣が進められ、これにより教職員の負担軽減や問題の早期解決が期待されています。とくに、教育委員会が保護者の声を直接受け取る窓口を設置や学校との連携を強化する取り組みが注目されています。

支援体制の効果としては、教職員の負担軽減、問題解決の迅速化、教育現場全体の対応力向上が挙げられています。今後は、これらの取り組みから得られた知見を広め、他の自治体にも参考にしてもらうことを目指しています。

2.コンタクトセンターのノウハウをフル動員した仕組み

コンタクトセンターのノウハウをフル動員した仕組み

各自治体で学校の相談窓口設置が進められる流れがあるなか、トランスコスモスでも実証事業を開始。ここからは、裾野市と取り組んでいる学校への問い合わせ業務についてご紹介します。

まずコンタクトセンターの一次受付の仕組みについてです。保護者や地域住民などさまざまな方の学校の問い合わせ・要望・クレームを、上図のようにコンタクトセンターにて電話・LINE・チャット・メールなどで対応しています。

その内容は随時、学校や教育委員会と連携する形です。コンタクトセンターのスタッフでは解決できない相談内容やトピックスについては、コーディネーターやカウンセラー、スクールロイヤーの方につなぐことで、適切に対処できる仕組みも整えています。

民間のコンタクトセンターが学校の相談窓口の一次受付を担う強みとしては、既存の5つのソリューションを有効活用できる点にあります。

まず、通話録音システムを導入しており、全ての電話内容を録音し、確認・記録が可能な点。次に、音声認識ツールを使い、通話した内容をAIで自動的に文字起こしし、分析できる体制です。

3つ目は、履歴管理システムがあり問い合わせ内容を一元管理できることです。4つ目として、ダッシュボードを導入し、リアルタイムで窓口の状況や問い合わせ傾向を視覚的に把握できる仕組みがあります。

そして最後に、オンライン面談システムを利用することで、カウンセラーやスクールロイヤーとの直接コミュニケーションにも対応できることです。このように、各種システムを駆使することで、効率的な対応が実現できています。

コールセンターシステムの既存ソリューション

3.ハード面・ソフト面ともにメリットが

ハード面・ソフト面ともにメリットが

相談窓口の一次受付をコンタクトセンターが担うことでさまざまな利便性があります。たとえば現在、裾野市で十数個の学校の相談窓口を担っており、どの学校でどんな問い合わせがあったかを一元的に把握しています。

さらに問い合わせ内容を共有し蓄積することで、実証実験を続けるうちに問い合わせの傾向が明確になり、良い対応や悪い対応に関する知見も増えていくため、今後の対応精度を向上させることができると考えています。

また、コンタクトセンターの導入は教職員の方々労働環境の改善にもつながっています。電話対応が減ることで本来の業務に集中しやすくなり、一次受付という“ワンクッション”があることで、メンタルが安定しストレスの軽減にも寄与しています。

4.事業の現状報告

事業の現状報告

実証事業の現状として、まず保護者からの連絡の状況については電話での連絡が約90%を占めており、LINEやメールなど他の手段はほとんど利用されていません。この状況が認知度や使いやすさに起因しているのかは、裾野市の担当者と連携しながら見極めていく必要があります。

次に対応状況の比率について、約60%の問い合わせが学校に取り次がれ、対応されています。一方、コンタクトセンターで解決できるケースは30%未満にとどまっています。学校の負担を軽減するためには、コンタクトセンターで解決できる割合を増やすことが重要な課題です。

学校への問い合わせの種類と割合を表したグラフ

問い合わせの種類について、最も多いのは学校行事や確認事項に関するもので、全体の約30%を占めています。その次に、学校や教師への要望、忘れ物や休みの連絡が続いています。とくに要望に関する問い合わせは、コンタクトセンターでのヒアリングに時間がかかることがあります。

実際、学校現場でこれらの対応を行うと大きな負担になることが容易に想像できるため、できるだけコンタクトセンターで対応することで、しっかりと機能を果たしていきたいと考えています。

5.学校と保護者のコミュニケーションを円滑にするために

学校と保護者のコミュニケーションを円滑にするために

実証事業を始めて見えてきた課題の一つは、窓口の認知度が十分でない点です。現在、窓口への問い合わせ件数は急増しておらず、それにより学校に直接問い合わせをする方が多いと考えられます。

コンタクトセンターへの認知を高め、保護者が気軽に電話をかけられる環境を整える必要があります。また、連絡手段の多様化や学校への取り次ぎの多さも課題であり、これらを解決することで保護者との円滑な連携を促進したいと考えています。

今後の展望としては、相互連絡機能の強化やルールの見直しが必要です。コンタクトセンター運営の知見を活かし、デジタル技術を取り入れて窓口運営をよりスムーズに進めるための取り組みを推進していきたいと考えています。

最終的には、より良いサービスを提供し、学校と保護者のコミュニケーションが円滑に進むことを目指します。

6.コンタクトセンター導入について裾野市からのフィードバック

最後に、本実証事業について裾野市教育委員会 学校教育課の佐野充洋様からのフィードバックをご紹介します。

教職員の保護者対応への精神的負担が大きい現状を踏まえ、教職員が安心できる環境を整え、自らの力を発揮できるようにしてほしいという思いから今回の事業開始に至りました。

学校現場では、コンタクトセンターを挟むと対応が遅れるのではないかという懸念もありましたが、事前にどの問題を優先的に扱うかを精査し、コンタクトセンターから学校への連絡タイミングを調整しています。

また、コンタクトセンターの導入がコミュニケーションを希薄化させるのではないかという懸念があったため、学校側には丁寧な対応を求めています。事業者との連携も強化し、学校情報をコンタクトセンターに提供することで、迅速な問題解決を図る体制が整えられています。

実証事業が始まってから約1か月半が経過し、学校へのアンケートを実施した結果、多くの教職員が初期対応をコンタクトセンターが担っていることに感謝していました。とくに保護者からの苦情が減少し、教職員に余裕ができたことが評価されています。

また、コンタクトセンターが入ったことで、教職員は冷静に問題を整理し、保護者も落ち着いて話ができると感じています。しかし、依然として学校への直接の問い合わせが多く、教職員の理解不足も課題です。

コンタクトセンターのオペレーターが学校文化を理解するまでに時間がかかることもありました。教育委員会は定期的に打ち合わせを行い、これらの課題解決にむけて改善を重ねていきます。

トランスコスモスは今後もコンタクトセンター事業を通じて教職員の働き方改革へのサポートを進めてまいります。ご興味のある自治体様はぜひ気軽にお問い合わせくださいませ。

トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
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