カスタマーチャネルの多様化によってインターネット上での顧客との接点が増えている中で、「アクティブサポート」と呼ばれるマーケティング手法があります。
X(旧Twitter)やInstagram、Facebookなど、顧客は様々なプラットフォーム上で情報収集したり、サービスに対する感想を語ったりしています。そんな顧客のニーズや声に対応するためにも、企業は各サービスにアンテナを貼り、手厚くサポートしていく必要があります。
そこで今回は、アクティブサポートで顧客満足度を向上させるために必要な準備や方法、過去の事例について解説します。従来の電話やメールといった問い合わせ方法に加え、アクティブサポートを導入し、新たなチャネルサポートを実現しましょう。
1.アクティブサポートとは
最初に、「アクティブサポートとは何か」についてあらためて確認しておきましょう。
アクティブサポート」とは、企業側から顧客に対して直接アプローチを行い、カスタマーサポートや商品の紹介などを行うマーケティング手法のことです。
従来では、メールや電話などで問い合わせを受けた場合のみ顧客対応する「パッシブサポート」が一般的でしたが、それに対して「能動的に顧客とのつながりを持つ」のがアクティブサポートです。
例えば、企業のアクティブサポート担当者が、定期的にX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで自社の社名や製品名を含む投稿をチェックします。
そして、「うまく使えなくて困っている」という人には「こうするといいですよ」と提案したり、「こちらからチャットで問い合わせてください」と誘導したりするなど、企業側から働きかけるのがアクティブサポートだと考えればいいでしょう。
1-1.アクティブサポートがなぜ重視されるのか
アクティブサポートが重視されているのは、X(旧Twitter)やInstagramといったSNSの普及が背景にあることが挙げられます。
SNSが普及したことで、インターネット上で消費者からの評判を可視化できるようになったほか、SNSが持つ情報拡散力によってマーケティングやブランディングに活用する企業が増加しました。
商品・サービスに関する不満や悩みを持っている顧客に対して、企業側から直接コンタクトを図ることで、即座に解決策を提案することができます。このように企業からの能動的なサポートがあると、企業への信頼性や顧客満足度が向上し、将来的な顧客の獲得にもつながります。
1-2.リプライマーケティングとの違い
アクティブサポート同様に、SNS上で顧客とコミュニケーションを取る方法として、「リプライマーケティング」という手法があります。リプライマーケティングとは、顧客が投稿した内容に対して企業側がリプライ(返信)をし、サービスの周知や購入を促進させる方法です。
アクティブサポートは不満や悩みを解消することを目的としたサポートであることに対し、リプライマーケティングは自社商品・サービスを広めることを目的としているという点に違いがあります。
リプライマーケティングとしては、新しいパソコンの購入を検討している顧客の投稿にリプライし、自社のパソコンに関する特徴やメリットなどを紹介するなどで、有益な情報を直接提供することで新たな顧客を生み出すために用いられるマーケティング手法です。
【アクティブサポートとリプライマーケティングの違い】
アクティブサポート | リプライマーケティング | |
目的 | 顧客の不満や悩みを解消するためのサポート | 自社の商品やサービスを普及させるための活動 |
例 | 新しいパソコンを購入した人が、使い方がわからない・不具合がある | 新しいパソコンの購入を考えている人に、「自社の製品はこんなところが優れています」など、購入を促すような返信をする |
2.アクティブサポートの事例(SNS活用含む)
アクティブサポートの効果を高めるためには、顧客の投稿に対して、適切な対応を取らなければなりません。失敗を避けるためにも、X(旧Twitter)を活用したアクティブサポートの事例を参考にしてみてください。
2-1.不満を持つ顧客へのリプライ
大手通信会社でのアクティブサポートの事例では、X(旧Twitter)で不満を投稿する顧客にリプライし、適切なアドバイスや解決策の提案を行っています。
例えば、スマートフォンの使い方がわからないという不満に対しては、基本的な操作方法の説明を画像付きのメッセージで返すことで顧客の不満を解消することにつながり、ネガティブなイメージが広がるのを未然に防止することができます。
2-2.ハッシュタグの活用
ハッシュタグを有効に活用すると、そのキーワードを含む投稿を簡単に検索できたり、ハッシュタグを付けることにより投稿を見てもらいやすくなることから、顧客の要望に素早く対応できます。
事業として動画配信を行っている企業では、サービスに関する要望や意見を拾うために、ハッシュタグ付きの投稿を顧客に対して依頼しています。
顧客からの要望が実現した際には、自社アカウントでの発表や、要望を発信した顧客へのコンタクトも行い、企業と顧客の密接なつながりを実現しています。
2-3.サポート専用のアカウントを作成
大手パソコンメーカーでは、サポート専用のアカウントをX(旧Twitter)で作成しています。使用上のトラブルだけでなく、パソコンの使い方や疑問点に関する投稿に対して技術的知識のある専門チームからリプライし、手厚くサポートしています。
2-4.イメージキャラクターを作る
アクティブサポートは、文字でのやり取りが主流となるため、ありきたりなテンプレートのような文面だと、なかなか印象に残りにくいという課題があります。
そこで、ある小売店では、X(旧Twitter)のアイコンにイメージキャラクターを採用し、キャラクターの口調を用いてリプライすることで、親しみやすく記憶に残りやすいサポートを実施しています。
【トランスコスモスのアクティブサポート導入事例】 SurfaceシリーズのX(旧Twitter)とLINE@を連携、 日本マイクロソフト株式会社様では、ノートPCやタブレットなど一台で何役もこなす Surface シリーズについて、各種ソーシャルアカウントを運用していて、それらを活用して、下記の課題を持っていました。 【課題】 そこで、トランスコスモスがX(旧Twitter)とLINE@のアカウント運用を行うこととなりました。 【具体的に行った施策】
セールス目的ではない気軽なコミュニケーションを心掛け、ユーザーに寄り添った対応を行っていった結果、ポジティブなブランドの口コミが広がり、 ・LINE@の友だち数(ファン)が1年間で約6倍に増加 という成果が上がっています。 詳しくはこちら:日本マイクロソフト株式会社 |
3.アクティブサポートのメリット
消費者の不満や悩みを解決できるというほかにも、アクティブサポートにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、アクティブサポートのメリットをいくつか紹介します。
・SNSにあふれるユーザーのリアルな声を把握することができる |
3-1.SNSにあふれるユーザーのリアルな声を把握することができる
アクティブコミュニケーションを行う際には、まず自社の社名や商品名・サービス名など、どのような意見・評価があるのかをWeb上で常時調べる「エゴサーチ」を実施してモニタリングをする必要があります。
このモニタリングを実施すると、コンタクトセンター(コールセンター)などの問い合わせ窓口に届くVOC=顧客の声とはまた異なる意見、疑問、不満、要望などが浮かび上がってくるでしょう。
これらは、能動的に企業にコンタクトをとる顧客ではない、もっと幅広い顧客層のリアルな声です。
ポジティブな意見、ネガティブな反応、どちらにも分類できない些細なつぶやきまでフォロー、分析することで、より顧客に適したアプローチができるようになるはずです。
3-2.ユーザーの声の影響力をアクティブコミュニケーションで広げることができる
現代は、SNSなどを通じて誰でも自分の意見を発信できる時代です。
Web上に放たれたひとつのつぶやきが大きな反響を巻き起こし、世の中を動かすこともあります。
ときには企業が大々的に発信したコンテンツや広告より、消費者ひとりの声のほうが大きな影響を与える場合もあるでしょう。
アクティブサポートには、この現象をうまく利用できる可能性があります。
例えば、エゴサーチでのモニタリングで見つけた「話題を集める可能性のある投稿やコンテンツ」に対して、企業側から適切な反応を返すことで、より情報を拡散させて影響力を広げることもできるのです。
3-3.ユーザーが求める情報、求める共感をタイムリーに送ることで、ユーザーの心を動かしファンの創出につなげられる
もうひとつ、アクティブサポートの大きなメリットとして「タイムリーな反応ができる」ことが挙げられます。
SNSなどをモニタリングしていると、ユーザーの「今」がわかります。
「今このことで困っている」
「今すぐこれについて知りたい」
「今これが欲しい、必要」
「今この気持ちを誰かと共有したい」
そんな投稿をするのは、その人の気持ちが高まっている瞬間でしょう。
企業側がそのタイミングを逃さず、適切な反応を返せば、ユーザーの心を掴むことができるはずです。
困っている人にすぐに必要な情報や商品を教えれば、行動に移したり商品を購入したりする可能性はグッと高まります。
その結果、企業のブランド力や顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
4.アクティブサポートを始める前の準備
アクティブサポートを始める際には、社内での万全な準備が必要です。
まず、アクティブサポートの専門チームを立ち上げ、SNSの使い方だけでなく、自社商品・サービスの詳細、よくある質問と回答を把握しておきます。
また、専門チームだけでなく、回答できない質問に対しては技術・開発チーム、マーケティングチームといった複数部署とも連携を取り、情報共有しやすい環境を構築します。
多くの場合、アクティブサポートでは素早い返信が求められます。例えば、消費者が自社商品を購入したのに電源が入らないトラブルが続くと、ネガティブな情報が拡散されやすくなるため、たとえ休日であっても対応できるような準備をしておかなければなりません。
顧客側では即時の返信を期待していることから、休日だけでなく、担当者が休暇を取っている際の運用体制についても考えておきましょう。
5.アクティブサポートを行う方法
それでは、実際にアクティブサポートを運用する方法について解説します。各ステップのポイントを押さえながら、効率的に運用しましょう。
5-1.ソーシャルリスニングで事前調査を実施する
まずは、ソーシャルリスニングで事前調査を実施します。
ソーシャルリスニングとは、SNSやブログ、掲示板といったインターネット上にある顧客のコメントを収集し、マーケティングに反映することです。あらかじめ自社商品・サービスに対して何を求めているのかを調査することで、アクティブサポートの効果を高めやすくなります。
5-2.キーワードの設定
次に、キーワードの設定です。
SNS上で顧客のコメントを発見するには、特定のキーワードで検索しなければなりません。代表的なキーワードとして、企業名、商品・サービス名、独特な特徴、製品番号などが挙げられます。
また、ソーシャルリスニングの調査結果から、サジェストキーワードや競合他社の類似商品・サービス名もキーワードとして含んでおくことも必要です。
5-3.アクティブサポートの運用開始
ソーシャルリスニングの事前調査と検索キーワードの設定が完了したあとは、アクティブサポートの運用を開始します。
アクティブサポートの運用の流れとしては、最初にSNS上でキーワードを検索します。
自社に関する投稿の中から不満や悩みを抱えている顧客がいる場合、対応可否をチーム内で判断し、解決に向けてメッセージのやりとりを始めます。
また、アクティブサポートと同時に、企業アカウントから自発的に情報発信することも重要です。新製品の情報に加え、キャンペーンやクーポンなど、顧客にとってポジティブな情報を定期的に発信しましょう。
6.アクティブサポートを行う上での注意点
最後に、アクティブサポートを行う上での注意点を確認しておきましょう。
顧客満足度の向上に効果のあるアクティブサポートですが、方法を間違えると不満の増大につながってしまう恐れがあるため注意が必要です。
6-1.少ない回数で済ませる
アクティブサポートは、端的に相手に対して情報を届けることが重要です。
商品にトラブルが発生しているのにも関わらず、メッセージのやりとりを繰り返していると、顧客にとってストレスになってしまう可能性があります。少ないやりとりの中で解決策を提示し、それでも顧客の不満を対処できない場合には個別に電話やメールでの対応を行いましょう。
6-2.テンプレートの文章を使用しない
テンプレートの文章を用いると、マニュアル対応のような印象を与えてしまうことから、顧客が不満を感じる可能性があります。顧客は、企業側に対して真摯なサポートを期待しているため、サポートメンバーの声をそのまま反映し、顧客に寄り添いながら悩みを解決することが求められます。
6-3.顧客と適切な距離を保つ
SNSなどで顧客に返信する際には、距離感も重要です。
あまりフランクな対応だと「馴れ馴れしい」と不快に感じる人もいますし、堅苦しすぎると前項のテンプレート対応のような印象を与えかねません。
中にはそもそも反応を返されたくない人もいるでしょう。
・企業の性質や特徴 |
などを踏まえて、それぞれに適した距離感、言葉遣い、テンションを見極める必要があります。
また、ユーザー同士でコメントのやり取りが成立している途中に割り込むのも避けたほうがよいでしょう。
6-4.炎上リスクの対策
SNSの普及によって個人がインターネット上で発言しやすくなった反面、炎上に発展する不適切な投稿も増加しています。
炎上に発展するケースは個人の顧客だけでなく、企業も避けるべき課題です。一度炎上してしまうと悪評が広がってしまうだけでなく、不買活動にもつながり、経営にも影響を及ぼしかねません。顧客へリプライや投稿をする際には、さまざまな観点から不適切な内容でないかを確認する必要があります。
まとめ
自社に対する顧客のリアルな声を拾うためには、積極的にX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを活用して、交流を深める必要があります。顧客が抱えている不満を素早く解決したり、企業に求めているものを商品やサービスに反映したりすることでビジネスにも好影響を与えます。
トランスコスモスは、10年以上に渡ってアクティブサポートの実績があり、顧客の顧客満足度向上に寄与します。顧客対応の新たなチャネルサポートの導入を検討されている方は、この機会にぜひお問い合わせください。