自治体フロントヤードに関する調査2024
2023年の総務省の方針をきっかけに自治体DXの新たなテーマとして注目されているのが「自治体フロントヤード改革」です。
「自治体フロントヤード改革」は住民と行政の接点(フロントヤード)を改革することで、住民サービスの利便性向上と業務の効率化を進めることが目的です。それにより人的資源のシフトを促し、持続可能な行政サービスの提供体制を確保していくことが狙いです。
各自治体が工夫をし、デジタル化・オンライン化を進めているところもありますが、導入するにあたり様々な検討が必要になることも事実です。
今回は行政サービスを受けたことがある人を対象に行政サービスの手続きをどのように行い、何が求められているのかを調査しました。
調査概要
調査名:自治体フロントヤードに関する調査2024
調査方法:インターネット調査
調査期間:2024年6月17日~2024年6月20日
調査対象:過去1年以内に都道府県や市区町村などの役所に行って手続きをしたり役所が提供するホームページなどから手続きをした、全国10代~60代の男女2,326名
調査結果
基本調査
役所での手続き経験について調査したところ最も手続き経験が多いのは「市役所」となった。居住地の規模によるが、都道府県庁よりは多くの届け出を行う先である市区町村役場が住民にとって最も身近であると言えるようです。
また役所へ行くにあたって利用する交通機関や所要時間などについても調査しました。
来庁時の交通手段では車(自家用車)を利用する人が多く公共交通機関の利用は少ないことがわかりました。
役所までの所要時間は30分未満が約9割となりました。
来庁する時間帯は午前中が最も多く、次いで13時から15時の日中の時間帯が多いようです。
結果、役所へ来庁する住民は「午前中」に「車(自家用車)」で「15分程度かけて」来庁する人が多いということがわかります。
役所への来庁目的は「戸籍や住民票の取得」が約35%
役所で行った手続きの中で最も多かったのは「戸籍や住民票の取得」となりました。現在はマイナンバーカードでコンビニエンスストアからも取得が可能になっていますが、それでも役所に来庁して取得する人がまだまだ多いといえるようです。
また、「その他」についてはマイナンバーカードの手続き関連が約半数を占める結果となりました。
手続きの内訳を年代別に分けると、子育てや出生・婚姻などの届け出に関しては若い世代、年金や障がい福祉に関する手続きは高齢世代が多いことがわかります。
ただ、手続きとして多い「戸籍等の取得」や「証明書の発行」、「転入転出手続き」などはどの年代においても平均的に利用されていることから、幅広い世代で利用できるデジタル化を目指すことがフロントヤード改革にとっては重要だといえるでしょう。
行政サービスを利用する住民の36.6%が事前行動せずに直接役所へ来庁
役所へ来庁するまえに行う行動について調査したところ、「事前に調べたりせずに直接来庁する」と回答した人が最も多く、36.6%となりました。
また何か行動する場合は「オンラインでの手続きができないか調べる」や「オンラインで必要な書類をプリントアウトする」など、オンライン上で事前に情報収集するケースが多いことも分かりました。
デジタル化・オンライン化を進めても、そういったサービスを知らずに直接来庁される方も多いことがわかります。
新たにデジタルツールを導入し、利用率を上げるためには、住民への周知や誘導なども重要になってくるようです。
事前行動を行った約75%が来庁時の手続きの短縮になっている
では、役所への来庁前に何かしらの手続きを行った人たちは、実際、来庁した際に手続き時間の短縮になっているのでしょうか。事前に手続きをしたと回答した人を対象に調査した結果がこちらです。
事前に書類を準備することで記入時間を減らせたと回答する人や、中にはオンラインで手続きが済み、来庁せずに済んだと回答する人もいました。
「時間に短縮にならなかった」と回答した人も24.2%いましたが、逆に言えば、約75%の人が何かしら短縮できたということになります。
住民が事前に行動することで短縮できる取り組みを導入することで、自治体フロントヤード改革が目指す「書かせない」「待たせない」「迷わせない」「行かせない」を実現することが可能となります。
事前に行った行動による来庁時の時間短縮の割合を手続き別でも見てみましょう。
介護や年金、出生手続きなど、体調などで実際に来庁することが難しい可能性がある人向けの手続きでは書類を送るだけで手続きが済むような取り組みも導入されているようです。
また、特に利用者の多い手続きについては、事前に書式をホームページなどで取得することで、役所での記入時間の短縮につなげる取り組みを行っているようです。
上記の手続以外でも、「事前に書類がもれなく記入できていたので記入時間が短縮できた」は比較的上位に挙がっていました。このことからまずは記入時間の短縮から導入・取り組みを始めている役所が多いことがうかがえます。
役所での手続きの大変さは「待たされること」と感じる人が30%以上
役所での手続きにおいて大変だと感じることについては、「手続きのための待ち時間が長いこと」が最も多く、次いで「役所が平日の日中しかやっておらず仕事を休まないといけない」となりました。
コンビニエンスストアでの書類発行や、出張所等での土日や夜間の受付を行っているところもありますが、役所での手続きには「時間がかかる」こと「限られた日にしか手続きできないこと」の印象が根強く残っているようです。
では、実際に手続きの時間はどのくらいで完結するのが理想なのでしょうか。
こちらも併せて調査をしました。
結果として30分未満が約55%となりました、1時間以上かかると約85%の人が長いと感じるようです。
目安としては来庁してから30分~1時間未満で手続きが完結できるような仕組み作りが必要だといえます。
今後の役所での手続きに望むのは「オンライン完結」
今後役所の手続きで「できるようになると便利」と感じることは「オンラインでの手続き完結」「コンビニエンスストアで取得できる」「土日」や「夜間」の手続きなど時間を選ばず、いつでも手続きできることが求められていることがわかりました。
役所に勤める職員の方の負担を増やさず、このような住民のニーズにこたえるためには、オンライン化やデジタル化が不可欠です。
フロントヤード改革で来庁時の待ち時間を減らすこと、来庁しなくてもオンライン上でいつでも手続きできることなどを推進することで住民の満足度は大きく向上するでしょう。
まとめ
住民の方が現状どのように感じているかの調査結果をお伝えしてきました。
自治体に来庁するための時間はかからない人が多いようですが、来庁してからの時間がかかること、限られた時間でしか手続きができないことについては改革を求められていることがわかりました。
自治体フロントヤード改革についてはこちらの記事でも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
フロントヤード改革にはデジタル化、オンライン化が欠かせません。
どこを改革していくか、何を導入するかを判断するのは難しく、自治体ごとに異なります。
このような取り組みはノウハウを持ったパートナー企業と進めるのも一つの手です。
トランスコスモスでは、自治体の現状に合わせたご提案も行っています。
ぜひお気軽にご相談ください。