24時間メタバースイベント開催!2Dメタバースの可能性と未来
2Dメタバースの旗手ともいえる「Gather」のパートナー企業である株式会社LocalSquareの金川和也さんと、トランスコスモスの光田による対談の様子を紹介します。
バーチャルオフィス「Gather」のイベントで1万人を集客! 2Dメタバースの可能性と未来を考える
人々の生活を大きく変える可能性を秘めた技術であり、近年ではさまざまな企業が参入するなど盛り上がりを見せているメタバース。一般的にメタバースというと3D空間を想像する人が多いですが、実は「2Dメタバース」も昨今注目を集めています。
この2Dメタバースの旗手ともいえるサービスが、2Dメタバースオフィス「Gather(ギャザー)」です。2023年5月17~18日にかけて、Gatherを活用したイベント「24時間1万人のわくわくメタバース活用EXPO2023」が開催され、来場者が1万人を突破するなど大成功のうちに閉幕。トランスコスモスも)イベントに出展し、2Dメタバースの可能性を大いに感じることができました。
今回は、Gatherのパートナー企業として「Gather Ambassador Program」に参加し、企業向けに2Dメタバースの活用コンサルティングを行う株式会社LocalSquareの金川和也さんと、トランスコスモスの光田による対談を実施。2Dメタバースの未来と日本市場における可能性について意見交換を行いました。
【参加者】
株式会社LocalSquare 代表取締役 金川 和也
トランスコスモス株式会社 CX事業統括 メタバース推進部 副部長 光田 刃
Gatherはメタバース上にリアルオフィスの機能を再現したサービス
まずはGatherがどのようなサービスなのか教えてください。
金川:
Gatherは2020年にシリコンバレーでサービスを開始した2Dメタバースオフィスです。2020年に誕生し、ユーザー数は累計1,500万人を突破しました。
Gatherのイメージをつかむには、実際の画面を見ていただくのが一番わかりやすいでしょう。昔のドラクエやポケモンのようなドット絵調のメタバース空間を自由に構築でき、ユーザーは2Dアバターの姿でその空間に入ります。
Gatherはメタバース上でリアルオフィスの機能を代替するサービスです。例えば、Gatherには自分のデスクを設定でき、そこに部署名や名前、年齢、趣味などを登録しておけます。こうすることで、Gatherの中にいる社員同士がそれぞれのパーソナリティを確認でき、コミュニケーションしやすい環境が作れるのです。
また、Gatherではアバター同士が近づくと自動でカメラとマイクがオンになり、ビデオ通話がつながります。遠くにいるときは話せないけれど、近づいたりすれ違ったりするときは話せる状態になるという、リアルオフィスでの体験を再現しているのです。
Gatherの最もポピュラーな活用法はバーチャルオフィスですが、セミナー会場や今回のようにイベント会場として使うこともできます。
光田さんは2DメタバースやGatherについてどのような印象をお持ちですか?
光田:
2DメタバースはGather以外にもいろいろなサービスがあります。ただ、Gatherを知るまでは正直、2Dメタバースにそれほどいい印象は持っていませんでした。 ただ、Gatherを使ってみるとさまざまなメリットが感じられ、2Dメタバースに対する印象もいいほうに変わりました。我々はそれまで3Dによる立体的な体験による効果との組み合わせを狙って3Dメタバースを主に提案していましたが、使い方によっては2Dメタバースのいいシーンがあり、共存できる存在だと思っています。
Gatherは日本国内でどのような使われ方をしているのでしょうか?
金川:
基本的にはオフィス利用が大半ですね。10人程度の小規模な組織から、数百人規模の組織まで幅広い企業様にご利用いただいています。その背景には、やはりコロナ禍の影響があると思います。多くの企業がリモートワークを導入し、リアルオフィスを縮小したり、閉鎖したりする会社も出てきました。 ただ、リアルオフィスではできたのにビジネスチャットやオンライン会議ツールでは難しいこともあります。「ちょっとしたことで上司に話しかける」みたいなことがそれにあたるでしょう。雑談のためにチャットで話しかけたり、オンライン会議を設定したりするのは気が引けますよね。ちょっとしたコミュニケーションは、リアルオフィスだったからこそできることだったのです。 そこで役立つのがGatherというわけです。バーチャルでありながら、リアルオフィスの機能を再現しているため、ちょっとしたコミュニケーションも自然と起きるようになります。 あとは、今回のようなイベントでの利用ですね。
実際にGatherを活用したイベント「24時間1万人のわくわくメタバース活用EXPO2023」を開催されましたが、手応えはいかがでしたか?
金川:
参加者1万人という目標を掲げて開催した結果、約10,800人の方に集まっていただきました。参加者同士の積極的なコミュニケーションも生まれており、大成功だったと実感しています。
光田:
私も参加しましたが、Gatherの中に常に人がいるという状況がおもしろかったですね。24時間ぶっ続けで開催されたので、参加者による何かしらのイベントがいつでもGather内で行われていて盛り上がっていました。 Gather内を歩いたり、横を向いたりすると、そうしたイベントでの参加者同士の会話が漏れ聞こえてきたりして、リアルイベントの感覚にとても近い。また、2Dメタバースイベントならではのメリットとして、準備の工数がそれほどかからないことですね。 トランスコスモスも今回出展したのですが、スケジュールがタイトで、準備にはそれほど多くの時間をかけられなかったんです。これが仮に3Dメタバースイベントだったら、出展するコンテンツもリッチにする必要があるので大変だったと思います。これは、2Dだからこそのメリットですね。
3Dメタバースにはない、2Dメタバースならではの魅力
2Dメタバースと3Dメタバースの違いや、2Dメタバースのこれからの可能性について教えてください。
金川:
2Dメタバースが3Dメタバースと違うところは、コミュニケーションに特化していることです。メタバースオフィスを俯瞰的に見てほかの人の状況を一覧できるのは、2Dメタバースならではでしょう。また、3Dに比べてあまり容量が必要ないのも2Dのメリットです。古いPCでも難なく扱えますし、ユーザーの環境を問わないことで、汎用性も高いといえます。
運営側としても、2D空間のほうが構築コストを抑えられます。構築した空間を修正したいときなども、3Dはスキルを持った限られた人しかできませんが、2Dは比較的誰でも簡単に行えます。
反対に、3D空間だからこそのよさも、もちろんあります。現実世界に寄せて作れる分、情報量が多く臨場感が出せるのはメリットですね。レセプションパーティーをメタバースで行うなど、エンタメ要素を持たせたいイベントなどには、3Dメタバースが向いているのではないでしょうか。
光田:
金川さんと同意見ですね。コミュニケーションに特化したオフィス利用なら、2Dメタバースを推奨します。軽くて読み込み速度も速いので、大規模なオフィスであるほど2Dのほうが有利です。3Dメタバースは、まだまだ2Dと比べて処理が重い部分があり、人が大勢いると、チャンネルを分けるなどしないと、アバターが表示できないことがあります。
一方、3Dメタバースのメリットは、「モノ」が空間の中にしっかりと置けることですね。例えば、家電の購入を検討する際、メタバース上で実物を見られるのは3Dメタバースならでは。360°いろいろな角度から好きなように確認できたり、普段表現できない世界感を表現できたりするのは、2Dメタバースはもちろん、写真や動画でもできないことです。
「マインクラフト」や「フォートナイト」のようなゲームで遊んできたα世代が慣れているのは2Dよりむしろ3Dでしょうし、メタバースがこれから当たり前になっていく中で、2Dと3Dは共存し、使い分けていくことになるでしょう。
では、そのような発展に向けて、2Dメタバースにはどのような課題や障壁があるとお考えですか?
金川:
2Dならではのメリットや魅力を、しっかり伝えられるかが課題だと思っています。通信技術はどんどん発達していますし、ゲーム領域ではすでにユーザーが4億人もいるような3Dメタバースが生まれています。 そうした中で、3Dメタバースが標準になってしまうと、わざわざ2Dメタバースを使う人が少なくなってしまうのではと懸念しています。 一方で、仮にそうした状況になっても、よりカジュアルにコミュニケーションできるという2Dメタバースの特長に魅力を感じてくれる人はいると思うので、そうしたユーザーが2Dメタバースに流れてきてくれればと期待もしています。
光田:
確かに、ゲームで3Dメタバースに慣れている世代が育っていくと、3Dメタバースが標準になる可能性はあると思います。ただ、ZoomやGoogle Meetを利用していたビジネスパーソンからすると、仕事では2Dメタバースで十分だと感じるのではないでしょうか。接続し続けても通信容量が少ないという特長は、今後も3Dメタバースにはない2Dメタバースならではのメリットです。 その観点から考えると、2Dメタバースは3Dメタバースと競合するものではなく、むしろZoomやGoogle Meetのようなコミュニケーションツールを置き換えていく存在だと思っています。
では、法人が2Dメタバースを利用する場合、どのような活用例が考えられますか?
金川:
バーチャルオフィス利用のほか、展示会や採用説明会、新人研修などに活用する企業さまもいらっしゃいます。また、コロナ禍ではZoom飲みが流行しましたが、それだけだと味気ないということで「Gather飲み」をされていた企業もあったようです。あとは、美術館のようなギャラリーとして活用する例もありますね。
光田:
今回のイベントのように、人を集めてエキスポのような形で活用するのはおもしろいですね。例えば、自社で採用イベントを開催して、マーケや営業、生産など、部署ごとにテナントを出展するといった使い方もできそうです。
成功事例を増やしてメタバース参入のハードルを下げたい
今後、日本市場における2Dメタバースの発展に向けて、どのような取り組みを行っていきますか?
金川:
日本はメタバースの活用自体が、世界に比べるとまだまだ少ないのが現状です。まずは、業界全体でメタバースそのものを盛り上げていく取り組みをしていけたらと思っています。
その上で、2Dメタバースを活用したイベントを積極的に開催し、成功例を増やしていきたいと考えています。それにより、ビジネスにおけるメタバース参入のハードルを下げたいですね。
2Dメタバースとして、世界累計ユーザー数1,500万人を誇るGatherとしては、世界の事例を国内に落とし込んでいくことが役割だと考えています。そのためにも、いろいろな企業と連携していきたいです。
光田:
オフィスとして2Dメタバースを使う場合、お客様からはよく「ほかのツールと連携したい」という声も寄せられます。そこは、API連携なども含めて提案できるようにしたいと思います。
また、日本企業はとにかく事例を大事にするので、金川さんがおっしゃるように事例や実績をどんどん作っていきたいですね。
今はまだ、メタバースがビジネスシーンで広まっていくかどうかがわからない状況です。黎明期はとても大事な時期なので、慎重に伸ばしていきたいと考えています。
金川:
トランスコスモスさんは多くの企業に最適なメタバースソリューションを提供されており、2Dメタバースと3Dメタバースの両方の強みを理解されています。
メタバースプラットフォーム同士を連携させるような事例はまだないはずなので、そういった連携性も追求しながらいっしょにメタバース市場を活性化させたいですね。
(記事の内容は2023年6月時点のものです)
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