
生成AIの活用によって
新たに生まれ変わった
音声認識ソリューション
トランスコスモスの
コンタクトセンター支援サービス
Vol.14
transpeech
リニューアルプロジェクト [後編]
生成AIを活用することによって、transpeech(トランスピーチ)にはこれまでになかった画期的な機能が加わりました。その機能の内容と、それがコンタクトセンターの現場やエンドユーザー、そしてお客様企業にもたらす価値について、引き続きプロジェクトチームのメンバーに語ってもらいました。


伊藤 英紀
CX事業統括
デジタルカスタマーコミュニケーション総括
サービス開発本部
AIデータ企画部 副部長


村田 秀一
CX事業統括
デジタルカスタマーコミュニケーション総括
サービス開発本部
AIデータ企画部 AIソリューション課
ビジネスアーキテクト

4つの新機能がもたらす
新しい価値
リニューアルプロジェクトにより進化を遂げた、新しいtranspeech(トランスピーチ)の具体的な機能について教えてください。
村田主に4つの機能があります。テキスト化された対話を要約する機能、テキストの中から重要なVOC(顧客の声)を抽出する機能、問い合わせの内容をもとにFAQを作成する機能、カスタマーハラスメントをアラートする機能。その4つです。いずれも生成AIによって自動的に行われます。
それらの機能によって、現場のオペレーターの業務はどう変わるのでしょうか。また、それがお客様企業やエンドユーザーにどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
伊藤要約、VOC抽出、FAQ作成、カスハラの報告といった作業は、これまで人の手で行わなければなりませんでした。それらが自動化されたことで、オペレーターの業務負荷が圧倒的に下がることになります。それによってオペレーターは問い合わせへの対応に集中できるようになるので、応対品質の向上が期待できます。また、応対後の後処理の作業が大幅に軽減されるため、次の問い合わせ対応にスムーズに移ることができます。結果、電話をお待たせする時間が大幅に短縮されることになります。
待ち時間が減り、応対品質が上がること。そしてそれによって、CX(顧客体験)が大きく向上すること。それが問い合わせをされるエンドユーザーの皆さんにとっての最大のメリットです。CXが上がれば、お客様企業のブランドイメージも向上し、ロイヤルカスタマーが増えることが期待できます。それがお客様企業にとってのメリットです。そのようなメリットの循環をつくることができると私たちは考えています。
村田もう一点、コストを削減できるのもお客様企業にとって大きなメリットになります。これまで、多くの入電に対応したり、待ち時間を短縮したりするためには、オペレーターの人数を増やす必要がありました。新transpeechでさまざまな作業が自動化できることによって、一人ひとりのオペレーターの生産性が上がるので、これまでと同じ人数、もしくはより少ない人数でこれまで以上のサービスを提供できるようになります。結果、人件費を抑えられる。それも大きなメリットと言えます。
生成AIを活用することによって、VOCの精度が上がり、お客様企業への提案の幅が広がる。そんな効果もありそうです。
村田おっしゃるとおりですね。従来のVOCの抽出作業は、個々のオペレーターのスキルに依存する部分が少なくありませんでした。オペレーターが「これは貴重な意見だ」と判断したものがVOCとして残される仕組みになっていたからです。対話の中に重要なVOCが含まれていたとしても、オペレーターがそれを「重要である」とみなさなければVOCとして記録されませんでした。しかし新transpeechでは、あらかじめVOCにつながりそうな観点を生成AIに指示しておくことによって、全通話内容から抜け漏れなくVOCを抽出することができます。
VOCの精度が上がり、提案のクオリティが向上すれば、お客様企業の商品やサービス改善、あるいは新しい商品開発などにこれまで以上に寄与することができます。それによって、現場のオペレーターのモチベーションが向上することも期待できると思います。
生成AI活用によって試される人間の判断力や想像力
現在多くの企業が生成AIの活用にチャレンジしています。トランスコスモスの社内でも、さまざまな部署が生成AIの最適な利用方法を模索しています。その中で、transpeechが先陣を切って生成AIを実装できた理由をお聞かせください。
村田transpeechのもともとのコアな機能は、音声のテキスト化です。テキストデータから何かを「生成」するのは、文字どおり生成AIが最も得意とする機能です。その点で、transpeechと生成AIは非常に相性がよかったということだと思います。私たちの取り組みを見て、社内のほかの部署から生成AIに関するさまざまな質問が寄せられています。今回のプロジェクトの知見をぜひ社内に広く提供していきたいですね。
生成AIにはいろんな可能性がある一方で、リスクもあると言われます。その点について考えをお聞かせください。
伊藤先ほども話したように、生成AIの進化のスピードは非常に速く、新しい機能がどんどん登場しています。今後も私たちの想像を超えるような用途が生まれてくると思います。
しかし便利な機能が次々に生まれることで、それに対する依存度が増していく危険性もあります。生成AIはあくまでも便利なツールであって、それを使うのは人間です。ツールをどのように使うかを考えたり、生成AIが出してきた結果のよしあしを判断したりするのは私たち一人ひとりの役目です。その点を忘れてはいけないと思っています。
村田よく指摘されることですが、AIには「ハルシネーション」という問題があります。「もっともらしいウソをつく」という問題です。例えば、通話からVOCを抽出する際、実際には話されていない内容をVOCとして出してくる可能性があります。プロンプト(AIへの指示)をどれだけ工夫しても、ハルシネーションは完全にゼロになることはおそらくないと思います。
ですから、AIが出してきたアウトプットを最終的に人の目でチェックする工程が必要になります。誤りを見抜く力だけでなく、伊藤さんが言うように、AIが出してきたものからよりよいものを選び出す判断力、あるいは、VOCの背後にあるものを想像する力、お客様企業の課題の本質を捉える力──。そういったものがこれまで以上に求められるようになると考えています。

カスタマーの生の声を
ビジネス資産に変えていく
今後、新transpeechの活用が広がっていくことによって、コンタクトセンターはどう変化していくと思われますか。
村田これまで、センター現場のオペレーターには幅広いスキルが求められてきました。問い合わせに対応するだけでなく、回答に必要な資料を探したり、会話の内容を記録したりしながら、できるだけ短い時間でエンドユーザーに満足していただける答えを提示することが必要でした。しかし、そのようなスキルをなかなか身につけることができず、離職してしまうオペレーターがこれまで一定数いました。
新transpeechの開発に成功し、従来のtranspeech以上にオペレーターの業務をサポートできるようになったことで、現場の負荷は格段に下がります。それによって、オペレーターのスキルのハードルが下がり、定着率が上がっていくことが期待できます。それが1つ大きな変化になると思います。
伊藤そうですね。新transpeechはスキル補填の観点はもちろんですが、個々のオペレーターが持つポテンシャルを最大化させることも重要視しています。ベテランが持つスキルを最大限に引き出すことはもちろん、職歴が浅い人でも研修期間の短縮が可能であったり、短期間で中堅メンバーと同じくらいのパフォーマンスが出せるようになったりというイメージです。人材獲得がより厳しさを増している昨今において、リソースマネジメントの根幹を変えていくようなきっかけになると嬉しいです。
お客様企業にとってのコンタクトセンターの位置づけも変わりそうですか。
伊藤変えていきたいですね。コンタクトセンターは、お客様企業にとって顧客の生の声を直接収集できる数少ないチャネルの1つです。その声をデータ化し、生成AIと組み合わせることでこれまで以上に有用なビジネス資産にしていけるサービスが新transpeechです。コストセンターと見られがちなコンタクトセンターから、新しい価値を生み出しお客様企業の成長に寄与するプロフィットセンターとしてのコンタクトセンターへ──。新transpeechを活用することによって、その流れを加速させられると私たちは考えています。
村田トランスコスモスには、ウェブサイトを構築したり、デジタル広告展開を支援したりする部門もあります。新transpeech活用によって新たに見出すことができたVOCを、お客様企業のマーケティングコミュニケーションなどにいかしていくことも十分可能です。それもまた、コンタクトセンターをプロフィットセンターにしていく道筋の1つだと思います。

新transpeechのリリースは
ゴールではなくスタート
新transpeechの機能は今後さらに拡張していくのでしょうか。
伊藤生成AIにはさまざまな機能があり、日々進化し続けています。ご説明したように、今回リリースした新transpeechは、その中でも最低限の機能に絞り込んでいます。今後機能を拡張し、より強力なツールに成長させていきたいと考えています。
例えば、トークスクリプトと呼ばれる対話シナリオをデジタル化し、最適なものを自動で提示してくれる機能、受け答えの最適なワードをリアルタイムで指示してくれる機能、お客様のお困りごとにマッチしたFAQを自動で表示してくれる機能などを搭載していく構想があります。一部はすでに開発に着手しています。オペレーターの隣にアシスタントが一人いて、いろいろな手助けをしてくれる。transpeechをそんなソリューションに育てていきたいですね。
村田transpeechというアシスタントがいることによって、オペレーターは対話に集中し、コミュニケーション力を向上させることに注力できるようになります。人間的なスキルに磨きをかけるためのツール。それがtranspeechであるということを、今後広くご説明していきたいと思っています。
このプロジェクトの経験を、今後ご自身のキャリアにどのようにいかしていきたいとお考えですか。
村田今回私は一メンバーとしてプロジェクトに参加しました。すぐには難しいと思いますが、いつか伊藤さんのようにPMとして責任ある役割を任せてもらえる存在になっていきたいと思っています。
このプロジェクトで生成AIについて深く学ぶことができました。事業現場で生成AIを使うポイントについても、多くの知見を得られたと感じています。私はエンジニアではないものの、現場の実務とAIのマッチングについては、社内のいろいろな部署にノウハウを提供できると思います。「現場とAIを結びつけるプロ」として認知してもらえるようになること。それもこれからの大きな目標です。
伊藤transpeechリニューアルプロジェクトはいったん区切りを迎えましたが、あくまで第一部の完結です。実は今、第二部の開発が始まっており、25年度内にリリース予定です。さらに運用、保守、サポートといった次のフェーズに移行していきます。リニューアルプロジェクトでの学びを次のプロジェクトにいかして、メンバーからより信頼してもらえるリーダーになっていきたいですね。
新transpeechのリリースは、ゴールではなくスタートです。生成AIという最先端の技術を上手に使ってtranspeechを継続的にバージョンアップしていき、お客様企業の皆さんや社内のメンバーたちをあっと驚かせるような価値を生み出していきたい。そう考えています。これからもチームの仲間たちと一緒に挑戦を続けていくつもりです。
※記載の内容・役職等などの情報はすべて取材(2025年2月)時点のものです。
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