
生成AIの活用によって
新たに生まれ変わった
音声認識ソリューション
トランスコスモスの
コンタクトセンター支援サービス
Vol.14
transpeech
リニューアルプロジェクト[前編]
これまでコンタクトセンターの現場でたくさんの成果を生み出してきたトランスコスモスの音声認識ソリューション「transpeech(トランスピーチ)」。そのリニューアルプロジェクトが2023年5月に始動し、ついにこの2月、リニューアルの一区切りとなるゴールを迎えました。プロジェクトの目的や苦労、新たな価値など、今なお進化を続けるtranspeechについて、プロジェクトマネージャーの伊藤英紀と、プロジェクトメンバーの村田秀一に語ってもらいました。


伊藤 英紀
CX事業統括
デジタルカスタマーコミュニケーション総括
サービス開発本部
AIデータ企画部 副部長


村田 秀一
CX事業統括
デジタルカスタマーコミュニケーション総括
サービス開発本部
AIデータ企画部 AIソリューション課
ビジネスアーキテクト

生成AIの機能を搭載し
活用環境をオープン化する
トランスコスモスの音声認識ソリューションtranspeech(トランスピーチ)は、これまで多くの案件で活用されてきました。はじめに、このソリューションの機能についてあらためてご説明いただけますか。
村田コンタクトセンターにおける通話内容を自動でテキスト化するのがtranspeechのコアの機能です。この機能を活用して、業務工数の効率化や品質向上はもとより、VOC(顧客の声)を可視化し、お客様企業に対して商品やサービスの改善を提案するといった取り組みをこれまで行ってきました。
ほかにも、対話の中で出てきた特定のワードに対応する資料を自動表示させたり、現場管理者が各オペレーターの対話内容をモニタリングしたりする機能などがあります。
transpeechをリニューアルするプロジェクトがついにこの2月、リニューアルの一区切りとなるゴールを迎えました。このプロジェクトの目的はどのようなものだったのですか。
伊藤目的は大きく2つありました。1つは、生成AIを活用してオペレーターを支援する機能を拡充すること、もう1つは、transpeechをオープンなネットワーク環境下で使えるようにすることです。
これまでのtranspeechは、セキュリティの観点からトランスコスモスが用意したクローズドなネットワークの中でのみ活用できるソリューションでした。transpeechが取り扱うデータには、エンドユーザーのプライバシー情報などが含まれます。それを保護するために、使える環境を制限したわけです。ただ、そのトレードオフとしてお客様企業の環境にはご提供ができないという制約が生じていました。
しかし近年、セキュリティ技術の進歩によって、オープンネットワークを活用したクラウド環境でも万全なデータ保護ができるようになってきました。そこで、transpeechの活用をオープン化してソリューションの価値をこれまで以上に広めていきたい。そう考えました。
従来のtranspeechに新たな機能を加えることが目的だったのでしょうか。
伊藤これまで提供してきたtranspeechと、今回のプロジェクトで開発した新transpeechは異なった基盤をもつソリューションです。従来のtranspeechは、外部ベンダーのプロダクトをベースにしたものでした。それに対して新transpeechは、一から内製で開発しています。今後、しばらくは新旧のtranspeechが併存していくことになりますが、中期的には、新しいtranspeechへの完全移行を目指しています。
プロジェクトで発揮されたトランスコスモスの総合力
プロジェクトのプロセスをまとめると、どのような流れだったのでしょうか。
伊藤2022年11月にオープンAI社のChatGPTがリリースされ、そこから生成AIに一気に注目が集まるようになったのはご存じのとおりです。私たちのチームも、情報収集を重ねながら23年5月から現行のtranspeechに生成AI機能をアドオンするトライアルを始めました。最初につくったプロトタイプは、音声をテキスト化したデータをAIで要約するというものです。コンタクトセンターの現場で実証実験を行い、オペレーターの業務支援に対する有効性を確認し、同年11月に正式に開発プロジェクトを発足させました。
そこから足掛け1年のプロジェクトとなったわけですね。プロジェクトにおけるそれぞれの役割についてお聞かせください。
伊藤私がプロジェクトマネージャー(PM)として、延べ30人ほどいたプロジェクトチームを総括していました。村田さんには、新しいtranspeechに必要とされる生成AIの機能を現場視点で考える役割を担ってもらいました。
村田私のトランスコスモスにおける仕事のスタートはオペレーターでした。その後、現場リーダー、スーパーバイザー、オペレーションマネージャーといったポジションを経験してきました。コンタクトセンター現場で何が必要とされているかを深く理解していること。それが自分の強みであると思っています。その強みを生かしてプロトタイピングの段階から、生成AIの機能の絞り込みや、より使いやすいインターフェースを考案するといった作業に従事しました。
プロジェクトの中では、社内外のさまざまなプレイヤーとの連携もあったかと思います。どのようなフォーメーションだったのでしょうか。
伊藤社内は、アプリケーションのプロである私たちのチーム、クラウド活用のプロであるインフラチーム、UI/UXデザインのプロであるウェブチーム。この3チームが連携する形をつくりました。
社外のプレイヤーとしては、AI活用のコンサルティングを手掛けるグループ会社のマシンラーニング・ソリューションズ、アプリケーション開発ベンダー、インフラベンダーにご協力いただいたほか、AIエンジンのプラットフォーマーであるマイクロソフト社にもサポートをいただきました。
社内連携で「オールトランスコスモス」の力を実感した場面はありましたか。
伊藤社内メンバーを主軸に、アプリケーションとインフラとUI/UXデザインを高いレベルでチーム組成できるコンタクトセンターベンダーは、おそらく国内ではトランスコスモスだけだと思います。そこにこの会社の総合力を感じましたね。

機能を絞り込み
早急な開発を目指す
プロジェクトの中で最も苦労したのはどのような点でしたか。
伊藤機能の絞り込みとスピード感のバランスですね。新しいtranspeechによって私たちが目指したのは、現場のオペレーターの仕事をこれまで以上に強力にサポートするサービスをつくることでした。生成AIにはさまざまな活用用途があるので、transpeechに盛り込みたいサポートメニューはたくさんありました。しかしメニューを増やせば増やすほど、コストと時間がかかります。まずは必要最低限の機能を取捨選択し、できるだけ早くリリースしようと私たちは考えました。その機能の選定にとても苦労しました。
もう1つ、生成AIの進化のスピードも悩ましい点でした。生成AIが世の中に登場して以来の進化は目覚ましく、現在も日々新しいことができるようになっています。新transpeechの開発は1年近いプロジェクトでしたので、その間に生成AIがどんどん進化していくことは容易に想像されました。新transpeechが完成したときには、実装した機能がすでにアウトオブデートになっている。そんな事態になることをとても心配していました。
仮に、プロジェクトが長引いて開発にさらなる時間を要することになれば、このようなリスクはさらに高まります。いかに遅延なくプロジェクトを進行させて、最初の完成形をつくるか。そこに神経を集中させました。
機能を絞り込むにあたっては、現場の視点をもつ村田さんの判断が重要だったのではないでしょうか。
村田いろいろな提案をさせてもらいました。伊藤さんが言うように、新transpeech開発の目的は、現場のオペレーターをサポートする機能を向上させることです。そのためにできることは、技術的にはたくさんありました。当初は「あれもやりたい、これもやりたい」という感じだったのですが、コストと時間を踏まえ、「現場で今一番求められているものは何か」と考えて、必要最小限の機能に絞り込んでいきました。その判断は本当にたいへんでしたね。

プロジェクトを成功に導いた
リーダーシップと団結力
プロジェクトを完遂した今、どのような点でご自身の成長を実感できますか。
伊藤PMの経験は過去にもあったのですが、最後に担当してからしばらく時間が経っていました。今回およそ10年ぶりにPMを任されて、感覚を取り戻すのが最初は大変でした。幸い優秀なメンバーをアサインできたこともあって、各分野のプロの意見を聞きながら、大きなトラブルなくプロジェクトを進めることができました。走りながら学ばせてもらう。そんな感じでしたね。今回学んだことは、間違いなくこれからのキャリアにいかされると思っています。
プロジェクトメンバーである村田さんから見て、PMとしての伊藤さんはどのような存在でしたか。
村田お世辞ではまったくなく、素晴らしいPMだといつも感じていました。伊藤さんは、カリスマ性でメンバーをぐいぐい引っ張るタイプのリーダーというよりは、あらゆる人とフラットにコミュニケーションをとりながら、チーム全体の足並みを揃えていくタイプのリーダーです。いわゆるサーバント型リーダーですね。
とても印象に残っているのは、レスポンスが遅かったり、まったくレスポンスがなかったりするメンバーに対しても、叱責したりイライラしたりすることなく、常に温和なスタンスを保って対話を続けていたことです。リーダーが怒ったりあせったりすることがないので、プロジェクトチーム全体の雰囲気がよくなり、みんなで同じ方向を目指すことができた。それがこのプロジェクトの成功の大きな要因だったと思います。
実際には、ハラハラする場面もあったのではないでしょうか。
伊藤もちろんです(笑)。内心ではいつも、「最良ではなくとも最善としてどうすべきか」と自問自答を繰り返していました。プロジェクトはPM一人が動かしていくものではありません。メンバー全員の力で成功させていくものです。私自身もプロジェクトメンバーの一員としてほかのメンバーと一致団結しつつ、一方では常に視座を高くして二歩三歩と先の状態をイメージし、個々のメンバーが持てる最大の力を発揮できるよう導くことで、何とか遅延なくプロジェクトを完遂することができました。
※記載の内容・役職等などの情報はすべて取材(2025年2月)時点のものです。
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