企業の
コミュニケーション
課題をチャットで
解決する
トランスコスモスの
コンタクトセンター支援サービス
Vol.5
チャット導入・運用サービス [後編]
トランスコスモスのチャット導入・運用支援サービスをご紹介する記事の後編では、これまでの取り組みにおける具体的な成果について、引き続き担当者二人に語ってもらいました。また、話題を集めている生成AIの活用法についても意見を聞きました。
横尾 大祐
トランスコスモス
CX事業統括 DX推進本部
DXソリューション統括部
コミュニケーションアーキテクト部 部長
伊良皆 高
トランスコスモス
CX事業統括 DX推進本部
DXソリューション統括部
コミュニケーションアーキテクト部 1課 課長
独自のチャットオペレーション認定制度
チャットがスタンダードなコミュニケーションチャネルになっている中で、トランスコスモスはその導入や運用支援にどのような付加価値をつけていくことができるのでしょうか。
横尾先にも少し触れた、チャット導入前の独自の診断サービス「チャネル最適化診断」。これが一つ大きな付加価値になると考えています。月にどのくらいの問い合わせがあって、そのうちのどのくらいをチャットで解決することができて、それによってどのくらいのコスト改善が見込めるか──。それを試算して、事前に想定されるチャット導入の費用対効果を示すことができます。
伊良皆もう一つ、チャットオペレーションの社内認定制度「チャットオペレーション実務能力認定」を独自につくっていることが挙げられます。これは「The Live Chat Master Certification」の頭文字をとって「LCM」と呼ばれています。
有人チャットの場合、オペレーターがテキストで問い合わせに対応するわけですが、それには電話応対とは異なるスキルが求められます。例えば、電話での対話では、相手の声のトーンや話し口調などで、困っているのか、怒っているのか、急いでいるのかといったことをある程度判断することができます。しかし、チャットの文面からそういったことを読み取ることはなかなかできません。また、文面によっては相手の意図そのものを理解することが難しい場合もあります。そういったチャットならではの事情を踏まえ、最適なコミュニケーションを実現し、困りごとや質問を確実に解決に導くスキルを身につけてもらうこと。それがLCMの狙いです。
横尾認定制度をつくるに当たっては、社外のコンサルティング会社の協力を仰ぎ、客観的かつ網羅的な内容を実現しました。オペレーター向けと現場の管理者向けの2つがあり、いずれも試験を受けて合格した人に対して認定を与える仕組みになっています。このような制度を用意しているのは、国内のコンタクトセンター業界では初めてだと思います。これまで約2,000名がこの認定試験に合格しています。
LCMを獲得したオペレーターや管理者がコンタクトセンターの業務を担うことによって、どのような成果が生まれているのでしょうか。
伊良皆あるお客様企業の業務で、トランスコスモスの新人オペレーターと他社の新人オペレーターのパフォーマンスを比較したことがあります。トランスコスモスの新人は、通常の業務研修とLCM認定を受けて仕事を始めたのに対し、他社のスタッフは通常の業務研修のみで仕事を開始しました。結果、トランスコスモスの新人スタッフは、業務開始から1カ月で他社スタッフの顧客満足度を平均2.8%上回りました。また対応時間も、他社スタッフより平均3分ほど短くなりました。5週目以降はさらにパフォーマンスが上がって、顧客満足度で4.5%、対応時間で約5分半の差が生まれました。
チャット運用支援による
さまざまな成果
これまでのチャット導入・運用サービスでの成功事例をいくつか教えていただけますか。
伊良皆タイプの異なる3つの成功事例をご紹介したいと思います。1つ目は、チャットを導入したもののなかなか活用されないという課題を解決した例です。この案件では、当初、全コンタクトチャネルにおける問い合わせ数の割合は、電話がおよそ84%、チャットとメールを含むノンボイスがおよそ16%でした。電話での問い合わせを減らすためにチャットを導入したのに、活用率が非常に低かったわけです。
その課題を解決するために僕たちが行ったのは、電話をかけてきた人が電話番号をどこで知ったかをアンケート調査することでした。調査の結果、多くの人がホームページにまずアクセスし、そこに記載されている電話番号を見て電話をかけてきたことがわかりました。ホームページにはチャット窓口も設置されていたのですが、かなりの人がそちらを選ばずに、電話での問い合わせを選んでいたということです。ということは、チャットに誘導する導線に問題があるということです。
そこで僕たちは、電話よりもチャット窓口が目立つようにホームページを改修することをご提案しました。その結果、ノンボイスでの問い合わせが約80%まで大幅に向上しました。これはチャットを活用する人が増えて、電話で問い合わせをする人が減ったことを意味します。
素晴らしい成果ですね。2つ目の事例についてもご説明ください。
伊良皆2つ目は、離脱率を下げることに成功した取り組みです。この案件では、チャットボット導入を僕たちがご支援し、運用はお客様企業内で行っていました。しかし、離脱率が37%と非常に高く、チャットが困りごとや質問の解決にあまり寄与できていないというのがお客様企業のお悩みでした。
この課題を解決するために僕たちが行ったのは、チャットのシナリオの見直しでした。チャットのシナリオには、選択肢を選びながら進んでいくパターンと、テキストで質問などを入力するパターンの二つがあります。この案件におけるチャットは、後者の仕組みがメインになっていました。そこで、過去に入力されたテキストのキーワードなどを分析し、どのような問い合わせが多いかを想定し、それをシナリオ化して、問い合わせの内容に即した選択肢を示す設計にしました。その取り組みの結果、離脱率を10%まで下げることに成功しました。つまり、10人中9人は求める回答に行きつくことができるようになったということです。
3つ目は、チャットボットによる解決率を向上させた事例です。このケースでは、解決率が8.8%と非常に低いことが大きな問題となっていました。9割の人の問い合わせが解決できていなかったということです。これもシナリオを改善することで、18.5%まで解決率を上げることができました。
解決率が約10%上がったわけですね。
伊良皆数字だけを見るとそれほど向上していないようにも思えますが、この案件では、キャンペーンへの問い合わせにチャットを活用していて、一つのキャンペーンが終わるたびにシナリオを変えなければならないという事情がありました。僕たちが取り組んだのは、前のキャンペーンでのやり取りから、次のキャンペーンで想定される問い合わせ内容を見極め、それをシナリオ化するという作業です。まずはその取り組みによって、10%近く解決率を上げることができたわけです。今後もシナリオの改善を続けることで、さらに数値を向上させることができると僕たちは考えています。また、この取り組みの結果、73%あった離脱率を45%まで下げることにも成功しました。この数値もさらに下げることが可能だと思います。
コンタクトセンターにおけるAI活用のモデルをつくる
現在、生成AIを始めとする新しいテクノロジーが急速な勢いで進化しています。チャットの領域で最新のテクノロジーをどう活用していくか。お考えをお聞かせください。
横尾これまでトランスコスモスは、独自のチャットボット構築ノウハウを蓄積してきました。しかしながら、昨今のLLM(大規模言語モデル)を活用したChatGPTなどの生成AIによって、それらのノウハウが陳腐化してしまう恐れがあると危惧しています。チャットに対する新しい向き合い方が求められるようになっていると思っています。
生成AIの活用方法にはいくつかの方向性が考えられます。現状では回答を完全に制御することが難しく、顧客に対して正確な案内ができない可能性があるため、すぐに顧客対応に使用することは難しいと考えています。現在は、チャット導入前の診断をAIに委ねて工数を削減したり、チャットボットに組み込むFAQ案を自動生成したりする取り組みを進めています。
大きな可能性があると感じているのは、オペレーターの育成・研修にAIを活用する方法です。オペレーターがAIを相手に電話やチャットでのやり取りを訓練できるようになれば、教育担当者の調整や研修場所の制限などがなくなり、オペレーターのスキルアップに寄与しながら人件費を抑えることも可能になります。
生成AIには、しばしば指摘されているように、「巧妙な嘘」をつく、知識として登録されている情報が最新ではない、顧客の敵対的な指示にも従ってしまうといった問題があります。それらをいかに制御できるかが今後の課題になると思います。制御さえできれば、チャット、電話の自動音声、人間をリアルにCG化したバーチャルヒューマンなどの領域で大いに活用できる可能性があると僕たちは考えています。
生成AIを上手に活用することで、人材不足に対応することが可能になるという見方もあります。
横尾まさにそのとおりだと思います。日本の労働人口は、ご存じのとおり、今後減少していく一方であり、すでにさまざまな業界で人材不足が顕在化してきています。コンタクトセンターもその一つです。その解決策としてAIを活用することはとても有効です。もちろん、AIにコミュニケーションをある程度委ねるとしても、コンシェルジュ的なきめ細やかな対応は今後も人間にしかできないと考えられます。また、技術を活用する主体となるのも人間です。よく言われていることですが、AIが進化すればするほど、人間にしかできないことは何かを見極めていくことが大事になると思います。
コンタクトセンターにおける人とAIの分業のモデルをつくっていくことが、トランスコスモスの一つの使命と言えるかもしれませんね。
横尾そう思います。重要なのは、新しいテクノロジーを導入することではなく、テクノロジーを使って企業や消費者を幸せにすることです。その目的を忘れないようにして、AIの活用法を考えることが何より大事だと考えています。
僕個人の考えとなりますが、日本はディープラーニングを始めとしたAI領域で、欧米のテック企業に後れを取っている現状があると思っています。しかし日本人には、製品やサービスをとことん使いこなすことができるという強みがあります。生成AIの領域でもその強みを発揮して、テック企業が思いつかないような素晴らしい活用方法を生み出していけるのではないかと思います。
最新のテクノロジーを使いこなして、いかに新しいCX(顧客体験)を提供できるか。いかに企業の成長に寄与できるか──。そういった視点でAI活用のモデルを考えていきたいですね。
お客様企業の
真のパートナーに
今後、チャットの導入・運用支援を通じてお客様企業にどう貢献していきたいか。最後にそれぞれの想いをお聞かせください。
伊良皆お客様企業が何を課題と感じ、何を目指していきたいのか。それをしっかり把握して、目的をぶらさずに支援に取り組んでいきたいと考えています。足元の実績ばかりに目が行ってしまうと、細かな改善だけが目的になってしまうケースが往々にしてあります。その改善は何のために必要なのか。それによって何を達成したいのか。そういった視点を忘れないようにしたいですね。
それからもう一つ、お客様企業の側でも把握していないような課題を発見して、その解決法を積極的に提案していきたいと思っています。例えば、VOCを収集する際も、コンタクトセンターだけでなく、SNSから企業や商品に関する声を拾っていくという方法があります。そのような方法論を提示して、お客様企業のビジネス成果に寄与していくことをこれからの目標にしたいと思っています。
横尾お客様企業にとって真の意味でのパートナーになりたい。そう僕は考えています。僕たちはお客様企業のご担当者とやり取りをさせていただいているわけですが、そのご担当者が持っていらっしゃるイメージと企業全体の方針にずれがあるケースもあります。そういった場合に、本当にやるべきことは何かをしっかり話し合うことが大切だと僕は思っています。それが結果として、お客様企業のメリットになるからです。その方向性を共有させていただいたうえで、コンタクトセンターのプロとして具体的な方針を提案させていただくのが、パートナーシップのあるべき姿だと思います。お客様企業のことを本当に親身になって考えられるパートナーになっていきたい。それが僕たちの強い想いです。
※本記事に記載されている情報は、2023年8月時点のものです
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