07
中小企業におけるDX導入とは
中小企業には特有の課題があり、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない現状があります。これにより起こる問題も多く、特に情報の管理や共有において顕著に表れています。この状況を解決するには、可能なところからDXを進めることが近道です。この記事では、中小企業がDXに取り組む際の手順を紹介します。
中小企業におけるDXの現状と課題
中小企業では、DXを推進するにあたって、デジタルに対する苦手意識や人材不足といった多くの課題が生まれがちです。限られた時間・コストの中で、確実な費用対効果が出るのかといった心配もあり、なかなかDXに踏み込めない企業も多いのではないでしょうか。
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が2022年5月に発表した「中小企業のDX推進に関する調査」によると、DXについて「既に取り組んでいる」「今後取り組みを検討している」と答えた企業は全体の24.8%と、調査対象となった1,000社の1/4程度しかDXを進めていないことが判明しました。また、「(DXについて)取り組む予定はない」と回答した企業は全体の41.1%と、「必要だと思うが取り組めていない」の34.1%を上回る数値となっています。
DXについての理解度に関する問いでは、「理解していない」「あまり理解していない」が全体の46.8%で、「理解している」「ある程度理解している」の37.0%を上回る結果となりました。一方で、DXについて「理解している」「ある程度理解している」と回答した企業のうち、DX推進に向けた取り組みの必要性について、「必要だと思う」が25.1%、「ある程度必要だと思う」が51.1%となり、合わせて76.2%が「DXが必要」と回答しています。
この結果を見ると、DXを理解し、推進することの必要性を感じている中小企業は一定数存在するものの、多くの企業ではそもそもDXについて理解しておらず、DXを推進する気もないことが読み取れます。DXの推進が滞っている中小企業が多い中、既にDX化に取り組んでいる中小企業は、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。
同調査では、DXを既に推進・検討していると回答した企業に対し、具体的なDXの取り組み内容についても質問しています。回答として最も多かったのが「ホームページの作成(47.2%)」で、約半数の企業が取り組んでいます。これに続くのが「営業活動・会議のオンライン化(39.5%)」、「顧客データの一元管理(38.3%)」、「文章の電子化やペーパーレス化(37.5%)」、「電子決済の導入(35.9%)」となっています。
しかし、「IoTの活用(19.4%)」、「AIの活用(16.9%)」、「デジタル人材の採用・育成(15.7%)」については、いずれも2割を切る結果となりました。これらの回答をまとめると、多くの中小企業ではDX推進どころか、ホームページすら未だに用意できておらず、IoTやAIといった高度な技術活用を始める段階ではない状況にあることがわかります。
しかしながら、既にDXに取り組んでいる企業の多くは、その恩恵を受けているようです。DXに「既に取り組んでいる」と回答した企業のうち、「成果が出ている」と答えた企業は32.9%、「ある程度成果が出ている」と答えた企業は49.4%となっており、DXによる成果が出ている企業は82.3%と8割超となっています。
また、調査対象となったすべての中小企業に対する「DX に取り組むに当たっての課題」という質問では、「DX に関わる人材が足りない(31.1%)」、「IT に関わる人材が足りない(24.9%)」など DX・IT 関連の人材不足を課題として挙げる企業が多く、次いで「具体的な効果や成果が見えない(24.1%)」、「予算の確保が難しい(22.9%)」と続き、人材と予算の不足がDX推進の大きな妨げになっていることが読み取れます。
しかしながら、DXは、数々のデジタルツールを導入して仕組みを作ることで業務時間を短縮し、チャンスを最大化するために生まれたものです。コストと人材が限られた中小企業こそ、DXを推進し、大企業との生産性ギャップを埋める必要があります。
中小企業が今すぐ導入すべき3つのDX
DXにはさまざまな分野があるため、何から取り組むか悩んでしまうかもしれません。デジタルツールの得意とするところは、データの管理や共有、作業の自動化にあります。まずはこれらの特性を活かして、売上に貢献しやすい部門から始めるのがおすすめです。他の部門は、成果が出てからDX予算を上げて対応するとよいでしょう。
ここでは、優先度の高い3つのDXについて解説します。
マーケティング・営業活動のDX
マーケティング・営業活動のDXは売上に直結するにもかかわらず、中小企業で取り組んでいる企業は多くありません。DXが進んでいない企業には、「これまで集めた顧客情報を上手く活用できていない」「顧客情報が属人化されバラバラに管理されている」といった課題が見られる傾向にあります。
その結果、マーケティング業務においては施策の振り返りが十分にできていない、顧客の行動や興味に合わせたメール配信ができていないといった課題や、営業活動においては事務作業が増えるだけでなく、社内での情報伝達が上手くいかずリモートワークができない、営業担当ごとのスキルや経験値に大きな差ができてしまうといった事態が起きてしまいます。
上記のような課題を防ぐには、会社単位で顧客情報を管理・共有することが大切です。顧客情報をクラウドシステムで一元管理・共有することで各案件の進捗をリアルタイムで確認できます。加えて、これまでの営業活動をデータ化し、蓄積・分析することで見込み度の精度や受注率が向上し、収益の最大化につながります。
またBtoBにおいては、ホームページ制作からIPアドレスターゲティングとMAを活用した運営で成果を上げている企業もいます。興味がある場合は、こちらをご覧ください。
カスタマーサービスのDX
多くの中小企業では、カスタマーサービスの運用における課題については「人手不足」が挙げられます。問い合わせ対応業務の効率化や、属人化している問い合わせ対応の標準化を行いたいと思いつつも、チャネルの増加による対応の複雑化や大量の問い合わせに対応するので精一杯で、リソースを割くことができない状況にあります。
上記の課題には、お問い合わせを音声AIやAIチャットボットで自動応答・受付ができる「AIエージェント」の導入が有効です。AIチャットボットが顧客からの簡単な質問に対応することで、オペレーターにつながるまでの待ち時間を削減できます。また、オペレーターに割り当てられる簡単な問い合わせが減り、人間の判断を必要とする高度で複雑な問題に集中できるというメリットがあります。それによって担当者の時間を節約できれば、シームレスなカスタマーエクスペリエンス(CX)の構築にもつながります。
さらに、顧客が自身で課題を解決する手段として、FAQ(よくある質問)ページの作成・整備もあります。過去の問い合わせデータや対応の際に満足度の高かった内容をFAQに蓄積、社内で共有することでサポート部全体の対応品質向上が見込めます。
管理部門(総務/人事/経理など)のDX
管理部門の業務は直接売り上げにはつながりませんが、多くの時間とマンパワーを費やす部門です。そして、管理部門の業務は定型的な繰り返しの業務が多いため、DXが得意とする分野でもあります。
たとえば、請求書や契約書のデジタル化、稟議書のクラウド上での共有などが代表的です。これらの業務をデジタル化するだけでも、かなりの時間が節約できます。とくに契約書はクラウド上で契約を締結できるサービスを使えば、押印の手間からも解放されます。
また、かさばりがちな書類もデジタル上で保管できるため、スペースの節約や書類紛失防止などにも効果的です。業務スペースが限られる中小企業ほど、デジタル化の導入をおすすめします。
このように、マーケティング・営業活動、カスタマーサポート、管理部門のDXを推進することで、基本業務を時短して、注力したい業務に集中することができます。リソースの少ない中小企業だからこそDXに積極的に取り組むべきです。
時間とコストが限られていると、なかなか踏み出しにくいところですが、可能なところからひとつずつ取り組むことで、将来的には大きなリソース確保やコスト削減が可能になります。そして、新たな顧客獲得や業務拡大につなげられるようになるでしょう。まずは、お気軽にトランスコスモスにご相談ください。