3.145.166.7

02

顧客ロイヤルティとは?安定的な利益を自社にもたらす方法

前回は、 カスタマーエクスペリエンス(CX) についてご紹介しました。今回は、このカスタマーエクスペリエンス(CX)と相関関係にある「顧客ロイヤルティ」にスポットを当ててみます。
収益を高め、維持するためには欠かせないといわれている「顧客ロイヤルティ」。では、顧客ロイヤルティを高めるためには、何が必要なのでしょうか。 ここでは顧客ロイヤルティの基礎知識や向上のための手法について解説していきます。

顧客ロイヤルティとは、「Loyalty(忠誠心)」から派生した用語で、顧客が企業やブランド、商品に抱く愛着や信頼を意味します。「この顧客はロイヤルティが高い」「顧客ロイヤルティの向上を図りたい」というように使われます。 顧客満足度が高いからといって、必ずしも顧客は購入を続けるわけではありません。そこで、商品やサービスに対する短期的で評価の高い顧客満足度だけでなく、長期的に持続する愛着や信頼の要素、つまり「顧客ロイヤルティ」の考え方が注目され始めました。

顧客ロイヤルティには、心理的ロイヤルティと行動的ロイヤルティの2種類があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

心理的ロイヤルティ

心理的ロイヤルティとは、企業やブランド、商品に対する愛着や信頼度を測る指標です。たとえば、ブランド名が購入の決め手になっている、コミュニティサイトに参加している、などは心理的ロイヤルティが高いことを示します。

行動的ロイヤルティ

行動的ロイヤルティとは、商品を購入したり、他者に推薦したりする行動の頻度や強さを測る指標です。つまり、企業にとって望ましい行動を起こしてもらう度合いを示します。具体的には、購入額や購入頻度、他者への紹介件数などで測定されます。

顧客の分類

心理的ロイヤルティや行動的ロイヤルティは、双方が高い顧客だけとは限りません。それぞれの高さや低さを組み合わせると、4パターンに分類できます。

リピーターとして、自社商品やサービスを継続的に購入してくれる。それが顧客ロイヤルティを高めることで得られる大きな成果ですが、それだけというわけではありません。顧客ロイヤルティを高めるメリットには、下記のようなものがあります。

01. リピート率が向上する

顧客ロイヤルティが高まると、ブランド自体への信頼が厚くなるため、リピート率が向上します。なかでも消費財の場合は、長期間にわたって同じ商品を購入してもらえる傾向があります。顧客ロイヤルティへの注目は、消費者自らがインターネットで情報検索でき、競合他社に乗り換えられやすい現代ではとくに重要です。価格競争を避けながらリピーターを増やすには、自社への愛着や信頼感を持ってもらうための施策が欠かせません。

02. 解約率が低下する

顧客ロイヤルティが高ければ、企業への信頼感から、競合他社へ移りにくくなります。たとえ競合他社がキャンペーンや割引などをおこなっても、安易に乗り換えるユーザーが減ります。たとえば、サブスクリプション型サービスでは、顧客の意志で契約を継続してもらうことがもっとも望ましい状態です。違約金や複数年契約の割引などによって顧客を囲い込む戦略もありますが、長期的に契約してもらえる保証はありません。

03. 顧客単価を上げられる

顧客ロイヤルティが高いと、商品やブランドへの安心感がある状態で購入するため、定期的な購入だけでなく、より高単価の上位商品を購入する機会が高まります。また、関連商品を勧めるクロスセルや、上位商品へのグレードアップを勧めるアップセルの施策が成功しやすいことも特徴で、顧客単価が上昇する傾向が見られます。

04. クチコミでの拡散を期待できる

企業やブランド、商品に対して愛着を持っている顧客は、他の人にも同じような体験をしてほしいと考え、良いクチコミを広めてくれます。SNSやブログ、ECモールのコメント機能などの普及とともに、一般消費者のレビューやクチコミの重要性が増してきました。顧客ロイヤルティの高いユーザーのクチコミが拡散されることによって、新規顧客の獲得や拡大が期待できます。

05. 評価や意見を吸い上げやすい

ロイヤルティの高い顧客は、自分のお気に入りの商品やサービスが改善・改良されることに肯定的です。ですから、モニター調査などを行うと、公正かつ詳細な意見を出してくれることが多く、商品開発に役立ってくれます。

ここでは、顧客ロイヤルティを測る代表的な指標を6つ紹介します。精度を高めるためには、複数の指標による測定が重要です。

01. 顧客満足度

顧客満足度は、顧客が自社商品やサービスに対して持つ満足度を数値化したもので、商品・サービス購入前の期待値と実際の満足度の差などで算出します。顧客ロイヤルティが企業に対する愛着や信頼を重視するのに対して、顧客満足度は商材に対する具体的な評価を重視します。
顧客満足度を測定する具体的な方法はアンケート調査が一般的です。Webサイトにアンケートフォームを設けたり、コンタクトセンターで直接ヒアリングしたりするなど、自社に合った方法を選びましょう。 しかし、顧客満足度だけが高くても、サポートが悪い、購入までのプロセスが手間といった理由で離れてしまうこともあるため、後述するCESなどと組み合わせて使用する必要があります。

02. アップセル・クロスセル率

アップセルは、より高額な商品やサービスを紹介して移行してもらうことで顧客の単価アップを図り、クロスセルは、関連する商品やサービスを追加で購入・利用してもらう手法です。
アップセルやクロスセルの成功率は、顧客ロイヤルティが高いと上がる傾向にあるため、顧客ロイヤルティを計測する指標になります。しかしながら、他に良い商品やサービスが無いので仕方なく高額な商品やサービス、関連商品を購入している状態であることも考えられます。
アップセルやクロスセルが成功するからといって、必ずしも顧客ロイヤルティが高い状態であるとはいえないため、他の指標と組み合わせて使用する必要があります。

03. 顧客維持率

顧客維持率とは、特定期間内に取引を継続できている顧客がどれだけいるかを示す指標で、「リテンションレート」とも呼ばれます。顧客維持率を測ることで、自社を継続的に利用している顧客ロイヤルティの高いユーザーの割合がわかります。企業へのロイヤルティに焦点を当てており、解約率とは相対する関係にあります。
顧客維持率の計算式は以下のとおりです。

04. 解約率

解約率は、ある期間にサービスの利用を停止した顧客の割合で、「チャーンレート」とも呼ばれます。解約率を見ることで、顧客がどの程度、商品・サービスから離反しているかがわかります。顧客解約率の計算式は以下のとおりです。

解約率が低ければ顧客ロイヤルティが高いようにも見えますが、他社への乗り換えが手間であることや、課金されていることを意識していないなどの理由で、解約率が低い場合もあるので注意が必要です。

05. LTV(ライフ・タイム・バリュー)

LTV(ライフ・タイム・バリュー=顧客生涯価値)とは、取引開始から取引終了までの間に顧客がもたらす価値です。 LTVの計算式は代表的なものだけでも複数あります。これらの中から自社に合ったものを使用するとよいでしょう。

重要なのは、長期的に、かつ購入頻度や取引期間など複数の要素で顧客を評価している点です。そのため精度の高い行動ロイヤルティの測定が可能です。ただし、解約率と同じく他社への乗り換えが手間であることや、課金されていることを意識していないなどの理由で、LTVが高くなることもあるので注意が必要です。

06. NPS®(ネット・プロモーター・スコア)

NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、行動ロイヤルティが高いユーザーを洗い出す際に便利な指標です。業種・商材によらず活用でき、簡易な方法で顧客ロイヤルティを測定できるため、もっとも代表的な指標とされています。NPSの測定手順は以下のとおりです。

「自社商品やサービスを家族や友人、周囲の人に勧める可能性がどのくらいあるか?」という内容で顧客にアンケート調査を実施して、0~10の11段階で回答してもらいます。回答結果から以下のように顧客を分類します。

全体に対する推奨者の割合と批判者の割合を、以下の計算式でNPSを求めます。

NPSの値がプラスならば一定のロイヤルティが確保できているといえます。NPSで取得したデータに対しては、以下のような対策を打っていけます。

  • 「推奨者」を手厚くフォローして、さらに売上を伸ばす
  • 「中立者」のロイヤルティを高めて、「推奨者」になってもらう
  • 「批判者」をサポートして、ひとまず「中立者」に引き上げる

しかしながら、NPSだけでは「行動ロイヤルティは低いが、心理ロイヤルティが高いユーザー」を把握できません。顧客がどの程度課題解決に苦労しているかの把握も不可能です。後述するCESやNRSなどの指標と合わせて使用するとよいでしょう。

ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー 、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標又はサービスマークです。

これまで見てきたような代表的な指標による顧客ロイヤルティ測定の限界を補うべく、近年さまざまな新しい指標が開発されています。ここではその一部をご紹介します。

01. CES

CESとは、カスタマーエフォートスコア(Customer Effort Score)の略で、「顧客努力指標」と訳され、顧客が自身の課題を解決するために要した負担を“見える化”したものです。 労力は少ない方が顧客満足度は高くなる、という考え方からCESが生まれました。ストレスや負担をどの程度感じたか、7段階程度の選択方式で回答してもらうことにより算出します。
サービスを使用するときに「使いにくい」「手間がかかる」と感じている場合には、使い続けることが難しく、解約に繋がります。そのため、解約率を下げるためにもCESを下げることが重要となるのです。 SaaSモデルやサブスクリプションモデルの場合は、ビジネスの成長にとって顧客を維持することが欠かせません。顧客を維持し、解約率を下げるためにもCESは重要な指標となっており、顧客維持率(リテンションレート)との相関性が高いといわれています。

02. NRS(ネット・リピーター・スコア)

NRS(ネット・リピーター・スコア)は、ユーザー自身の継続意向の指標です。「1年後でも対象の商品やサービスを継続しているか」について、「積極的に継続したい:5点」、「今と同じ程度に継続したい:4点」、「その時になってみないとわからない:3点」、「できれば継続したくない:2点」、「絶対継続したくない:1点」の5つでアンケートを取ることで算出します。それぞれ結果の点数によって下記のようにカテゴリ分けしていきます。

NPS®のスコアが低いユーザーのうち、NRSのスコアが高いユーザーを洗い出していくことで、NPS®だけでは見えにくい「行動ロイヤルティは低いが、心理ロイヤルティが高いユーザー」を可視化できます。

03. DWB

DWBは「Definitely Would Buy」の略で、その商品を購入する意思の指標です。「絶対に買いたい」、「買いたい」、「どちらでもない」、「あまり買いたくない」、「全く買いたくない」の5つでアンケートを取っていきます。
その中で最高評価にした人の割合が、ブランドロイヤルティの評価です。ブランドロイヤルティ以外のKPIとしても役立ちます。

では、ロイヤルティを高めるためには、どのような施策を実施すればいいのでしょうか。考えられる手法はいくつもありますが、現状把握やCX(顧客体験価値)の向上、データを管理・分析し、施策に活かすなど総合的な取り組みが必要です。

01. 「顧客の声」を正確に把握する

顧客の声や要望を正確に把握することは、顧客ロイヤルティを上げる施策を実施するために重要なことです。上記で紹介した指標などを用いた定量的なデータ分析をおこない、現状の顧客ロイヤルティを把握することが必要です。
売り手や作り手は、「こういう商品、サービスを提供したい」という意識が強くなりがちです。それは必要なものではあるのですが、企業側の独りよがりに陥る危険も秘めています。それよりも顧客の視点に立ち、顧客が求めているものを追求した商品やサービスを生み出せば、「こういうものが欲しかった!」と市場にも受け入れられるものです。
決して簡単ではありませんが、顧客のニーズを正しく把握し、それに応えるということは、顧客ロイヤルティを高める上で非常に大きな意味を持っています。

02. 顧客が求めるタッチポイントを強化する

前章のカスタマーエクスペリエンス(CX)を高めるためのポイントでも説明しましたが、顧客接点とは「タッチポイント」とも呼ばれ、文字どおり顧客と企業が接触を持つ場面、場所を指します。
通信インフラの整備とデジタルデバイスの普及、さらに各種情報サービスの登場によって、人々のコミュニケーション手段は大きく広がりました。それとともに、タッチポイントも多様化しています。これは言い換えると「タッチポイントが増えている」ということです。企業から顧客に、あるいは見込み顧客に接触できるチャネルがそれだけ増えているのです。
多くの企業がタッチポイントを強化する理由は、大きく分けて2つあります。ひとつは、顧客の行動や要望を把握し、ニーズをくみ取るため。数々のタッチポイントから情報を吸い上げて分析することで、顧客行動からニーズを読み取ることができます。もうひとつは、タッチポイントでの対応の質を高めるとともに、自社のブランド力を向上させ、維持するためです。タッチポイントにおける対応のクオリティを高めることは、カスタマーエクスペリエンス(CX)を改善・向上させることそのものです。それができれば顧客は満足感を得て、その企業に対する好感や信頼を持つようになります。
このようにタッチポイントは多様化していますが、顧客はどの接点でも同じ目的を持ち、同じ行動をとっているわけではありません。商品やサービスについて詳しい情報が知りたいのか、世間の評判を知りたいのか、競合他社商品との比較をしたいのか、それぞれ異なります。ですから、カスタマージャーニーにおけるプロセスの違いとともに、タッチポイントごとに異なる顧客の目的に、的確に応えることが重要になります。

03. データを管理・分析し、施策に活かす

CRMやMAなどのITツールの登場と普及によって、顧客の行動をデータ化し、詳細に分析することが容易になりました。こうしたツールを使ってデータを管理すれば、顧客の要望をより正確に把握することができますし、反対にどのようなところに不満を感じているかをあぶり出すこともできるでしょう。
そして、分析の結果をもとにさまざまな施策を打ち、さらにその結果を分析することで、広範囲にわたって改善を加えることができます。
過去の成功体験や勘にばかり頼らず、データにもとづいた施策で、着実に顧客ロイヤルティの向上を狙っていきましょう。

04. 顧客をセグメント化して施策を実施する

顧客をセグメント化して、それぞれの施策を実施しましょう。新規顧客開拓や既存顧客の単価アップなどの目的に応じ、施策に優先順位を付けることも重要です。先に紹介した2種類の顧客ロイヤルティによる分類では、以下のような施策が考えられます。

心理的ロイヤルティ・行動的ロイヤルティともに高い顧客層

現状を維持するための特典や割引などを実施します。また、手厚いフォローで特別感を持ってもらうことも重要です。

心理的ロイヤルティは高いが、行動的ロイヤルティは低い顧客層

行動してもらう「きっかけ」を与えることが重要です。例えば、セミナーやイベント開催、割引クーポン配布などの施策があります。

心理的ロイヤルティは低いが、行動的ロイヤルティは高い顧客層

リピーターのみが参加できるキャンペーンや、新商品や限定商品を優先的に購入できる特典などの施策で、心理的ロイヤルティを高めることが効果的です。

心理的ロイヤルティ・行動的ロイヤルティともに低い顧客層

品質や価格の改善、アフターフォローの充実などにより、顧客の不満を改善する対策が求められます。また、認知度の低い層への広告を増やすことも重要です。

どんなに注意しているつもりでも、ちょっとした油断で顧客ロイヤルティは下がってしまいます。一度失った信頼を回復するのは容易ではありませんし、ネガティブな評判ほど早く広く拡散していくものです。 そうした事態を防ぐためには、顧客ロイヤルティを下げる要因がどこに潜んでいるのかを知り、対策を施しておくことが大切です。

手段(チャネル)の不一致

今や幅広い年齢層の人々が、個人間あるいはオープンな場所で、さまざまな方法で情報を発信しています。この傾向は、企業と顧客とのコミュニケーションにも表れています。これまで一般的だった電話やメール、問い合わせフォームだけでなく、SNSやチャットを使ったやりとりや、営業時間外にも問い合わせできるチャットボット、FAQの充実を望む顧客が増えてきました。
こうした顧客の手段(チャネル)の要望に応えられないと、そこで顧客ロイヤルティは下がってしまいます。企業側としては顧客とのチャネルの多様化に対応するとともに、どのチャネルを用いてもスピーディなレスポンスを実現できるよう、体制を整える必要があります。

不適切なアプローチ頻度

顧客との適度なコミュニケーションを保ち、タイミングよくリテンションをかけて購入意欲を刺激するのは大切なことです。そのための手段として、メールだけでなくSNSやアプリなど顧客が好むチャネルを活用するのも重要なことでしょう。
しかし、コミュニケーションの頻度については、慎重に検討する必要があります。あまりに頻繁にメッセージを送りつけられると、わずらわしく感じられてしまいます。また、メール、SNS、アプリなどのすべてのチャネルで、同じメッセージを同じタイミングで送信するということをしていては、あっという間に顧客ロイヤルティが下がってしまうでしょう。
適切なチャネルを選び、適切な頻度で、顧客から嫌われないアプローチを心掛けることが大切です

カスタマーサービスの不手際

顧客からの問い合わせや要望に対応する窓口である「カスタマーサービス」。企業にとって重要な顧客との接点であり、顧客ロイヤルティを高められる重要なポイントです。それは裏を返せば、顧客ロイヤルティを失う可能性も潜んでいるということです。
電話がなかなかつながらない。オペレーターが問い合わせ内容に答えられず、いくつもの部署をたらい回しにされる。その度に、同じ説明を繰り返さなければいけない。散々時間をかけたあげく、疑問や問題の解決ができなかった…。このような体験を一度でも味わってしまうと、商品やサービスだけでなく、企業に対する不信感が募っていくでしょう。
また、顧客は、オペレーターの言葉遣いや、雑な印象を与える応対でも不信感を募らせます。オペレーター側も、顧客からの問い合わせが集中するとストレスがかかり、せっかくのコミュニケーションなのに処理をする感覚に陥ることがあります。このようなことでも顧客ロイヤルティを下げる要因となりますので、くれぐれも注意が必要でしょう。

自分を大切に扱ってくれる相手に、悪い感情を持つ人はいません。同じことが企業と顧客の間にもいえます。 企業が顧客の立場に立ち、顧客を大切にすれば、顧客もまた企業を大切にしてくれるもの。顧客ロイヤルティを高める手段は数多くあります。まずは、すぐにできるところから着手してみてはいかがでしょうか。

CONTACT

診断サービスの
お問い合わせ・お申し込みは
こちらから

診断サービスのお問い合わせ
お問い合わせ・お申し込みはこちらから