18.221.15.15

テクノロジーの力で
電話応答率
100%を目指す

ー 保険契約者への迅速かつ
適切なレスポンスを実現するために ー

共栄火災海上保険様×トランスコスモス

損害保険会社の事故受付センターの電話応対には、「スピード」と「的確性」の両方が求められます。契約者とのコミュニケーションを「迅速、適切に、わかりやすく」行うこと──。それが共栄火災海上保険様の方針です。しかし、災害発生時などには事故の入電件数が激増し、迅速で適切な応対が難しくなるケースもあります。その課題を解決するために共栄火災海上保険様が導入したのが、AIによる自動音声案内でした。2007年から事故受付センターの業務支援を行ってきたトランスコスモスは、AI音声の仕組みづくりもサポートさせていただきました。その概要と成果、さらに情報のデジタル化の取り組みについて、コンタクトセンター企画部の責任者である鈴木隆氏と、事故受付センターの責任者である千田裕之氏、業務を支援しているトランスコスモスの2人の担当者に語ってもらいました。

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迅速で適切でわかりやすい
コミュニケーションを目指して

共栄火災海上保険様の事業における事故受付センターの役割についてお聞かせください。

鈴木損害保険の契約者様が自然災害等の事故にあわれた際に、契約者様からの最初の連絡窓口となるのが事故受付センターです。契約者様に事故の状況をしっかりお聞きして、保険金の支払いを担当するセクションに情報を的確に伝えていくことが、事故受付センターの一番の役割です。

千田事故受付センターは、保険金お支払い業務のいわば「第一走者」です。ここから情報のバトンを第二走者、第三走者に正確に渡していくのが事故受付センターの任務です。損害保険の事故には賠償事故、火災事故、物損事故などさまざまな種類があります。契約者様の契約内容や事故の状況に応じて、柔軟できめ細やかな対応をしなければなりません。

お二方のお仕事のモットーもお聞かせいただけますか。

鈴木事故受付センターも含むコンタクトセンター企画部の今年度のスローガンは「迅速、適切に、わかりやすく」です。これが私自身のモットーにもなっています。契約者様に寄り添い、相手の立場に立って、迅速で、適切で、わかりやすいコミュニケーションを行うこと。責任者として、その意識をコンタクトセンター企画部全体に浸透させていくことを日々心がけています。

千田「迅速、適切に、わかりやすく」というスローガンを私なりの言葉で表現すると、「スピードとクオリティ」ということになります。事故受付センターに電話をかけてこられる契約者様のほとんどは、「保険金は支払われるのか」「現在の契約は有効なのか」といったことをすぐにでも知りたいと思っていらっしゃいます。そういったニーズに対して、できるだけスピーディに、かつ質問に対して最適な回答を提供していくこと。それを目指して現場のオペレーターの皆さんとコミュニケーションを行っています。

問い合わせ件数の増減に
いかに対応していくか

トランスコスモスが共栄火災海上保険様の事故受付センターの運用をご支援するようになったのはいつからですか。

首藤2007年からです。それ以前は、事故受付センターでの電話受付は昼間の時間帯だけでしたが、私たちが支援させていただくようになってから、24時間365日の受付体制に移行しました。オペレーターが対応する保険商品も、新種保険、賠償保険、火災保険など徐々に拡大し、人数も増えていきました。

保険商品や契約者の状況ごとに応対の内容が変わるということは、オペレーターにも高いスキルが求められるということですよね。

首藤そのとおりです。商品の内容を正確に理解するだけでなく、事故発生直後の緊急時などには丁寧かつ迅速な対応が求められます。コールセンターのオペレーションに必要とされるあらゆる要素が凝縮した仕事と言ってもいいかもしれません。オペレーターは、2カ月間というほかの現場に比べてかなり長い研修期間を経て現場に配属されています。

センターにおける現在の課題がありましたらお聞かせください。

千田契約者様からの事故の入電件数は、曜日によってかなりのばらつきがあります。また、台風シーズンや災害発生時などには、事故の入電件数が激増します。そのような繁閑差に対応しながら、応対品質を落とさないこと。それが一番の課題ですね。

具体的なKPIは設定されていますか。

首藤契約者様からの電話に対応できる確率、すなわち応答率を95%にすることを目標にしています。

千田一般的に見て、95%という数字はかなり高い目標だと思います。しかし、この数字を達成したとしても、20件のうち1件には対応できなかったということになります。契約者様の多くは不安を抱えて電話をかけてこられます。それに対し、たとえ20分の1の割合でも電話に出られないということがあってはならない。そう私たちは考えています。理想論ではありますが、応答率を可能な限り100%に近づける努力をすることが必要です。

繁閑差に対応し応答率を上げる
ソリューションとしてのAI

そういった課題を解決するために、どのような取り組みをされているのでしょうか。

鈴木応答率100%達成が理想ではありますが、繁閑差がある中で人の力だけで100%を目指すのは現実的には困難です。100%の応答率を実現するには、電話が最も多いときに合わせてオペレーターを配置しなければならないからです。しかし、それには経済合理性がありません。オペレーションコストが上がれば、結果的に保険料に反映され、契約者様にご負担をかけることになってしまうからです。このため、現在考えられる最も合理的な解決方法の一つは、AIの活用であると考えています。

AI活用にはすでに取り組んでいるのですか。

上田共栄火災海上保険様とともに検討を重ね、2021年の12月からAIによる音声案内のPoC(実証実験)を始めました。最初は火災と地震発生時に想定される問い合わせに対応する2種類の想定対話フローをつくり、AI音声だけで契約者様の問い合わせ対応が完結する確率、いわゆる完結率を高める工夫を重ねました。その成果を踏まえて、22年6月に対話フローを11種類まで拡大して、ほとんどの保険商品に対応できる仕組みをつくりました。本格運用が始まったのは22年9月からです。

首藤それまでトランスコスモスは他業種における音声AI活用の経験はあったのですが、損害保険会社の事故受付業務での導入は初めてでした。そこで、現場のオペレーターにヒアリングしながら、対話フローに必要な要件を絞り込んでいきました。

上田対話フローの設計によっては、電話の途中での離脱率が上がってしまいます。そのため、できるだけスムーズなコミュニケーションが成立するフロー設計を目指しました。22年6月時点での完結率は5割ほどでしたが、その後の改善によっておよそ8割まで上がりました。一般的に、音声自動案内の完結率は3割あれば高い方であると言われています。それを考えれば、かなりの高水準であると言っていいと思います。

鈴木日常的に電話対応をしているオペレーターの皆さんの知見や意見が対話フローにしっかり反映されていることが、完結率の高さに結びついていると私は考えています。実験的な運用を始めたのは2021年の12月でしたが、その後22年3月に福島県沖地震が発生して、契約者様からの事故の入電が急増しました。それに自動音声で対応できたのは大きな成果でした。災害は発生しないことがもちろん望ましいのですが、仮に今後大きな災害が発生した場合でも、AIの活用により、事故受付業務をサポートできる体制が整ったと考えています。

混雑時は自動的に音声AIでの案内となるのですか。

首藤電話が混みあっている場合、契約者様はオペレーターか音声自動案内かを選ぶことができます。即時対応をお望みの場合は自動音声案内を選択していただき、オペレーターと話したいというご希望があれば、電話がつながるのを待つか掛け直していただくという形になります。また、深夜時間帯の対応はすべて音声AIとなっています。

千田AIによる自動音声案内は、現在のところ、機械の合成音声であることがかなりはっきりわかります。これを嫌がる契約者様が多いのではないかという心配が当初はありました。しかし実際には、拒否感を示されたり、苦情をおっしゃったりする方はほとんどいませんでしたね。

応対記録のデジタル化によって
業務効率化と顧客満足度向上を実現する

電話応対内容の記録のデジタル化にも取り組まれたそうですね。

鈴木私がセンターに着任する以前の取り組みでしたが、これもトランスコスモスの皆さんにご支援いただいたと聞いています。以前は、電話の内容をエクセルに記入し、それをプリントアウトしたうえで、ファックスで「第二走者」に送るという、かなりアナログな方法で情報伝達をしていたようです。

首藤2020年にセールスフォースの導入と運用のご提案をさせていただいた際に、情報のデジタルでの一元管理をご提案しました。エクセルと紙による情報管理と伝達は、現場の負担が大きいだけでなく、契約者様から重ねて問い合わせがあった場合に、そのつど紙を探さなければならないので、お待たせしてしまうケースも多々ありました。デジタル化によって、現場の効率化と顧客満足度の向上の両方が実現できると考えました。

鈴木情報のデジタル化は、非常時への備えという点でも重要です。現在の一元管理の仕組みには非常に満足しています。

首藤もっとも現在も、現場のオペレーターが情報を手作業で入力する作業は残っています。トランスコスモスは、電話でのコミュニケーションの内容を自動でテキスト化できる「transpeech(トランスピーチ)」というソリューションを提供しています。これを活用することで、オペレーターの負担はさらに軽減されることになります。こういったご提案も機会があればさせていただき、業務効率のさらなる向上を目指していきたいと考えています。

新しい時代に対応する
パートナーとして

事故受付センターにおけるCX(顧客体験)を向上させるために、今後どのようなことに取り組んでいきたいとお考えですか。

鈴木契約者様が事故にあわれてお困りのときに、もれなく対応することが損害保険会社の事故受付センターの重要な役割です。現在のところ受付窓口は電話だけですが、今後はチャットやメールなど顧客接点を拡大して、契約者様からの多様なアプローチに対応することを検討していきたいと考えています。

千田「迅速、適切に、わかりやすく」を徹底することに尽きると思っています。電話をかけてきてくださった契約者様に対して、迅速で適切でわかりやすい対応をするのはもちろんですが、社内の第二走者、第三走者もある意味お客様であると捉え、その「社内のお客様」に情報を迅速かつ適切に渡していくことも重要です。それによって、保険金のお支払い業務全体の品質が上がり、契約者様の体験向上につながると考えられるからです。

トランスコスモスが御社の事故受付センター業務を支援させていただくようになってから16年となります。あらためて、トランスコスモスへの評価をお聞かせいただけますでしょうか。

鈴木トランスコスモスの強みは、何よりも安定感や安心感にあると私は感じています。企業としての規模や実績はもちろん、新しいことに取り組む際にも、最後まで責任をもってやり切ってくださいます。今後も、新しいテクノロジーやソリューションをご提案いただいて、ともにコンタクトセンターのクオリティ向上に取り組んでいきたいと思っています。

千田日常的にいろいろなご要望をお伝えしていますが、その一つ一つをしっかり検討してくださって、できるものには積極的に取り組んでいただけるし、できない場合はできない理由を明確にお伝えいただけています。その点がとても助かっていますね。私はトランスコスモスには、変化に対応する力があると感じています。今後社会環境が変化し、テクノロジーが進化していく中で、新しいことに継続的に取り組んでいく必要があると思います。ぜひ、トランスコスモスならではの変化対応力を発揮していただいて、次の時代にともに対応していきたいと考えています。

共栄火災海上保険様のご期待にどう応えていきたいか。それぞれの思いを最後にお話しください。

上田先ほど、受付のマルチチャネル化のお話がありました。トランスコスモスは、さまざまなチャネルに対応するソリューションを自社で開発してご提供しています。有用なソリューションやツールをご提供して、契約者様の満足度と体験価値の向上に寄与していきたいですね。

首藤2018年に大きい台風が2回来たことがありました。電車がすべて止まって、オペレーターが退勤できなくなった状況を見て、共栄火災海上保険様は事故受付センターの隣にあるホテルの部屋を確保してくださったり、当時のセンター長が自ら車を出してスタッフを自宅近くまで送ってくださったりしたことがありました。お客様企業とここまでの関係を築けるケースはそう多くはありません。そういったご恩をお返しするためにも、これからも共栄火災海上保険様のパートナーとして事業に寄り添い、ビジネスの成長を全力でご支援していきたい。そう考えています。

※本記事に記載されている情報は、2023年7月時点のものです

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