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Cookie規制とは?Cookie規制の影響と今後の対策を徹底解説!
Cookie規制とは、法規制やブラウザの自主規制によって、Cookieの利用が制限されることを指します。Cookieには「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」の2つがあり、現時点でCookie規制の対象になっているのは主にサードパーティCookieです。Cookieは、個人情報を活用し、Webサイト上でのユーザー体験(UX)を向上させることを目的として利用されています。広告主側はCookieを活用することで、効率的なマーケティング活動を行ってきました。しかし近年、Cookieによる個人情報の取得・活用が個人のプライバシーの侵害につながる見方が広まったことにより、日本を含む世界各国でCookie規制の動きが強まりました。
この記事では、ブラウザによるCookie規制の内容をはじめ、Cookie規制がマーケティングに与える影響、企業がCookie規制にどう対応していく必要があるのかを詳しく解説していきます。Cookie規制について網羅的に理解し、さらに今後の対策について検討したい方は、ぜひ最後までお読みください。
目次INDEX
1.Cookie規制を理解するための基本知識
Cookie規制について理解する前に、そもそもCookie(クッキー)とは何かについて解説します。
1-1.Cookie(クッキー)とは
Cookieとは、Webサイトへアクセスした際に、ユーザーのログインIDやサイトへのアクセス履歴、カートに追加した商品の情報などを一次的に保存するファイルのことです。識別IDにより、同一ユーザーであるかを判別できます。また、これらはアクセスした際に使っていたGoogle ChromeやSafariなどのブラウザへと保存されます。日本では、2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、Cookieで得た個人情報などを第三者に提供し、紐づける際は本人の同意が必要になりました。そのため、Webサイトを開くと、Cookie使用の同意を求めるポップアップが表示されることがあります。
1-2.Cookieには2種類ある
Cookieには、ユーザーが訪れたサイトのドメインが発行する「ファーストパーティCookie」と、別ドメインが発行する「サードパーティCookie」の2種類があります。
ファーストパーティCookieとは、アクセスしているWebサイトの運営者が発行しているCookieを指します。訪問ユーザーに対して、自社運営サイト内で行った行動に対してのみ高精度なトラッキング(追跡)が可能ですが、他のサイトをまたいでのトラッキングはできません。また、保存できる内容としては、サイトへ訪問したユーザーのログインID・パスワード、入力した情報、買い物カゴの内容などです。サードパーティCookieとは、ユーザーが訪問したサイトのドメインではない第三者が発行したCookieを指します。Google、Yahoo!などの広告媒体が発行しており、こちらはサイトを横断してのトラッキングが可能です。Cookieを活用することによって効率的なマーケティングや、マーケティングの効果測定ができます。以前インターネット上で閲覧していた商品が、別のサイトで広告として表示されたという経験がある方は多いかと思います。この現象は、サードパーティCookieを活用した広告配信により起きています。
1-3.Cookieの目的は?
Webサイト側がCookieを活用するのは、ユーザーがアクセスした広告やページなどの履歴や、商品の購入やフォームに登録された情報などのデータを収集し、データに基づいてユーザーの興味を引くような広告を表示させるためです。一方、Cookieは、ユーザーがWebサイトを閲覧するときの利便性を向上させます。たとえば、Cookieによってログイン情報が保存されていると、2回目にWebサイトを開いたときにログイン状態が維持されているので、IDやパスワードを再入力する手間がありません。
1-4.Cookieはなぜ規制されるの?
サイト運営者や広告主にとってサードパーティCookieは、ドメインをまたいで広告出稿や効果測定ができる便利な仕組みです。しかし、個人情報やプライバシーの観点から疑問視され始めました。サードパーティCookieを活用したパーソナライズド広告を受け取ったユーザーからすると、「知らない間に第三者に勝手に個人情報が使われている」「プライバシーの侵害ではないか」「監視されている」と感じる声がありました。これらの問題を受け、「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」や、米カリフォルニア州の「CCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)」など、主にサードパーティCookieやこれを活用して得られるデータ(Cookieデータ)を対象にした規制が始まり、多くのブラウザがサードパーティCookieのサポートを廃止する方向で動いています。
2.ブラウザごとのCookie規制の状況
Cookie情報を保有する仕組みを持つブラウザ側も、Cookie規制を進めています。ブラウザ側がCookieをブロックする仕様を採用してしまえば、Cookieを利用したくても利用できなくなります。特にブラウザシェア率が高いブラウザでCookie規制が進めば、その影響は多大なものになります。
▼日本のブラウザシェア率(2023年7月時点)
出典:StatCounter – Browser Market Share Japan(July 2023)
2-1.SafariはサードパーティCookieを全面廃止
各ブラウザの中でも率先してCookie規制を進めているのが、Apple社のSafariです。SafariはiOSやMacに標準搭載されているブラウザであり、日本国内で約28%のシェアを占めています(2023年7月時点)。Apple社は「プライバシーを守り、自分の情報をコントロールできるように製品を設計する」という理念を掲げており、Safariブラウザでは既に具体的なCookie規制が行われています。2017年にAppleは「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」というトラッキング防止機能をSafariに実装しました。その後もバージョンアップを繰り返し、規制内容がより厳しく進化しています。2022年9月以降は、サードパーティCookieは完全にブロックされ、ファーストパーティCookieやLocal Storageも最大7利用日で削除されるようになっています。Appleでは、Cookieに限らずトラッキング目的に使われる仕組みを次々に削除対象にしています。今後も規制を回避するための抜け道はその都度、アップデートで制限されることが考えられます。
2-2.Chromeは2024年にサードパーティCookieを廃止予定
日本国内のブラウザシェアTOPを誇るのが、Google社のChromeです。米Googleは2023年5月にサードパーティCookie完全廃止に向けた取り組み「プライバシーサンドボックス」に関する進捗を発表しました。2024年第1四半期(1~3月)にChromeユーザーの1%をプライバシーサンドボックスに移行し、対象者のサードパーティCookieを無効にするとしています。「プライバシーサンドボックス」とは、サードパーティcookieに代わる、ユーザーに最適化された広告を表示するための取り組み。ユーザー自身が自分の興味や関心を管理することで、個人情報をサードパーティに渡さずに自分に合った広告を表示できるようにするというものです。
2-3.Microsoft Edgeはトラッカーの規制がある
Microsoft社のブラウザMicrosoft Edgeでは、ブラウザの「追跡防止」機能により、有害な可能性があるトラッカーがブロックされるように設計されています。SafariのようにサードパーティCookieを全面的にブロックするような厳しい規制ではないものの、既に一部のCookieに影響が及んでいます。また、Microsoft EdgeはGoogleが開発したブラウザエンジンを使用しており、ChromeのサードパーティCookie規制が行われればそれに追従する可能性があります。
2-4.FirefoxはトラッカーのCookieをブラウザの初期設定でブロック
Mozilla社のブラウザFirefoxでは、現状、Safariのように全面的にCookieをブロックするようなCookie規制は行われていません。ただし、ブラウザの初期設定ではトラッカーのCookieをブロックし、トラッカー以外のサードパーティCookieはサイトごとに隔離されるような設定になっています。設定をカスタマイズすることは可能ですが、そのまま使うユーザーが多いと考えられます。ファーストパーティCookieはデフォルトでブロックされません。
3.Cookie規制がマーケティングに与える影響
では、実際にサードパーティCookieが規制されると、具体的にどのような影響があるのでしょうか。
3-1.ターゲティングが困難に
ターゲティングにはいくつか種類があり、その中でも特に多く活用されているオーディエンスターゲティングがCookie規制の影響を強く受けます。オーディエンスターゲティングとは、その人の興味・関心や、性別、年齢などの属性に基づき行われるターゲティングで、今までこれらの情報はCookieを活用することによって高精度かつボリュームのあるものになっていました。Cookieで得ていた情報が使えなくなる分だけ、ターゲティング広告の精度が低下するとともに配信量も減少します。
3-2.CV(コンバージョン)計測制度が低下
従来はCookieによってユーザーをトラッキングし、CVを計測していました。Cookieが規制されることで、Cookieで計測していた分だけ広告媒体側のCV計測ができなくなり、計測精度が低下します。
3-3.アトリビューション分析精度が低下
アトリビューション分析とは、CVへ至ったすべての接触経路に対し、それぞれのCVへの貢献度を計測することです。たとえば、自然検索や広告などがこの対象に含まれます。そして、これらを計測するためにサードパーティCookieは大きな役割を果たしてきました。そのため、Cookieの規制によりアトリビューション分析の精度が低下すると考えられます。
3-4.自動入札の精度が低下
自動入札の仕組みとして、CVデータが多ければ多いほどより高精度な自動入札が行われるものとなっています。そのため、Cookie規制は自動入札の精度にも影響を与えます。
4.Cookie規制に対応するために企業が実施すべきこと
ここまで説明したように、Cookieに対しての法規制やブラウザの自主規制が近年進んでおり、その影響を既に感じているマーケターも多いでしょう。プライバシーや個人情報保護を重視する流れがある中で、今後もCookie規制が厳しくなる可能性があります。こうしたCookie規制に対応するために企業が今後実施すべきこととは何でしょうか。
結論からお伝えすると、「サードパーティCookie依存をやめ、ファーストパーティCookieを正しく活用する方向性」に進むことが大切です。
規制の対象となっているのは「サードパーティCookie」であり、自社サイトが発行する「ファーストパーティCookie」は今後も活用できます。また、Cookie規制が今以上に厳格化したとしても、ユーザーから正式にCookie利用の同意を得ていれば問題にならないと考えられます。やみくもに「クッキーレス」(Cookieに依存しないマーケティング手法)を進めるのではなく、自社内のCookieデータを適切に管理し、今後の法規制に備えるのがおすすめです。具体的に、Cookie規制に対応するために企業が実施すべきことを解説していきます。
4-1.ゼロパーティデータを活用する
ゼロパーティデータはForrester Research社によって提唱された造語で、明示的なデータとも呼ばれます。Forrester Researchによるゼロパーティデータの定義は、以下の通りです。
ゼロパーティデータとは、顧客が意図的・積極的に企業と共有するデータです。ゼロパーティデータには、メールプリファレンスのデータ、購入意思、個人的背景、ユーザーが企業に『自分』をどのように認識してほしいかなどが含まれます。
ゼロパーティデータは顧客に同意を得て、ヒアリングやアンケートで情報収集を実施します。顧客自身が回答をするので、価値の高いデータを収集できるところが特徴です。ゼロパーティデータを厳選した質問で収集し、戦略的に活用すると、企業と顧客のコミュニケーションを大幅に向上させることができます
4-2.Cookieへ依存しない再接触を考える
ここでは、現状で取得できる顧客データを活用し、過去接触ユーザーにリーチする施策を紹介します。
・カスタマーマッチ
リターゲティングにおいて効果的な対策が、カスタマーマッチという手法です。カスタマーマッチとは、自社が保有する顧客データを各プラットフォームにアップロードし、各プラットフォームが保有する情報と照合したユーザーをリストアップします。その後、このリストを活用して広告配信を行う手法を指します。カスタマーマッチの利用により、Cookie規制後もリターゲティングや新規顧客に向けたマーケティング活動がCookieを用いることなく可能です。
・エンゲージメントターゲティング
エンゲージメントターゲティングとは、自社のX(旧Twitter)、FacebookなどのSNSへのエンゲージメントを元に、ターゲティングすることです。たとえば、自社の投稿に対して「いいね」や「ブックマーク」を行ったユーザーへ、その投稿と関連性のある広告を配信することが可能です。そのため、好意的な印象を抱いているユーザーへアプローチできるものとなっています。
・フォロワーターゲティング
フォロワーターゲティングとは、X(旧Twitter)やFacebookなどで、指定したアカウントをフォローしているユーザーをターゲティングする手法です。LINE公式アカウントの友だちもこれに該当します。また、X(旧Twitter)においては、自社に好意的なユーザーだけでなく、競合となるコンテンツ・商品を提供しているアカウントをフォローしているアカウントなどをターゲティングすることで、将来顧客となる見込みの高いユーザーに対してアプローチできます。
4-3.オーディエンス・コンテンツターゲティングを活用
ここでは、追跡以外のターゲティングを活用するマーケティング施策について紹介します。
・コンテンツターゲティング
コンテンツターゲティングとは、指定したキーワードやトピックと関連性の高い配信面に広告を配信することです。上記コンテンツに好意的・意欲的なユーザーへのアプローチができます。
・カスタムセグメント×ファインド広告
カスタムセグメントとは、特定のサービスやトピックに高い興味関心・購買意欲の高いユーザーへとアプローチできる機能です。また、ファインド広告とは、Googleが提供するYouTube Home Feed、Gmail、Discoverの広告枠に配信できる広告のことです。そしてこの3つは、Googleが保有するサービスの中でも特にユーザー数が多いサービスです。ファインド広告は、Googleのプラットフォームが配信面であることから、Googleが保有するユーザーの興味関心データ等を活用することができます。これらをかけ合わせることによって、例えば、「〇〇を検索したユーザー」へのリーチが可能です。つまり、検索ユーザーへ再アプローチができます。
・類似ターゲティング
類似ターゲティングとは、既存顧客や自社のサイトを訪問したユーザーと類似した属性や検索行動、興味関心を持っているユーザーへターゲティングすることです。これにより、新規顧客を効率的に獲得できます。※Google広告では、2023年8月1日より、最適化されたターゲティングによってのみ可能となるアップデートが入りました。
5.まとめ
この記事では、Cookieの基礎知識からCookie規制の詳しい内容まで解説してきました。「Cookie規制」という言葉とともに、「脱Cookie」や「クッキーレス」について論じられることも多く見受けられます。しかし、Cookie規制の詳細を見てみると、ファーストパーティCookieを正しく取得・活用することの重要性をご理解いただけたのではないでしょうか。Cookie規制にも対応した広告効果測定についてご相談がある方は、お気軽にトランスコスモスまでお問い合わせください。