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熱心なファン層を育成する、コミュニティマーケティングの基礎知識

企業が直接ターゲットに働きかけるのではなく、コミュニティを介してアプローチしていく。近年、こうしたコミュニティマーケティングが注目されています。ここでは、コミュニティマーケティングの手法やメリット、行う際の注意点を解説します。

コミュニティマーケティングとは、企業が自社商品やサービスを利用する顧客を集めたコミュニティを構築し、そのコミュニティの発信力を活用して販売機会を広げていく手法です。
この手法は、クチコミによるマーケティングの延長ともいえます。消費者の心理としては、企業が自ら行う広告よりも、その商品の使用者による評価に信頼感を感じやすいものです。しかも、SNSが普及した現在では、マスメディアが発する情報よりも、個人発の情報のほうが信頼を集め、購買行動の大きなきっかけになってさえいます。
そして、そうした情報を発信する人々の集まり、つまりコミュニティによって新規顧客の拡大を図るのが、コミュニティマーケティングの本質です。

従来の「コミュニティ」とは何が違うのか

企業が主導して、自社商品・サービスのユーザーによるコミュニティを作る。こうした活動そのものは、決して目新しいものではありません。ソフトウェアやビジネスツールの分野では企業主催の勉強会やセミナーが数多く開催されていますし、メーカー主催のファンミーティングも多数行われています。
しかし、これら従来のコミュニティは、既存顧客と安定的な関係を構築するリテンションの意味合いが強いものでした。つまり、コミュニティのメンバーに対するアップセルやクロスセルが主な目的です。
一方、コミュニティマーケティングでは、コミュニティを通じて新たな顧客を獲得することを目的としています。つまり、コミュニティに対して売るのではなく、「コミュニティを通じて売る」という手法の違いがあるのです。

メンバーの自発性が尊重されるコミュニティの運営

コミュニティの運営方法も、従来のものとは大きく異なります。従来のコミュニティは、運営側である企業が主導します。イベントの企画も同様ですから、比較的大掛かりなファンミーティングが行われることも珍しくありません。
一方、コミュニティマーケティングでは、イベントの開催やスタッフィングは、主にコミュニティのメンバー自らが行います。もちろん、企業側にも運営チームはありますし、必要なサポートは提供しますが、あくまでもメンバーの自発性にゆだねられます。
メンバー間でのコミュニケーションも同様です。従来型のコミュニティでは、個々のメンバーと企業の運営チームが一対一で質疑応答する形が一般的ですが、コミュニティマーケティングではメンバーの質問に答えるのは基本的に他のメンバーの役割。運営チームが対応するのは、専門性の高い質問や、なかなか回答がつかない場合などに限られます。
こうした運営スタイルは、コミュニティマーケティングの特徴的なものといえるでしょう。

コミュニティマーケティングが必要とされ、採用する企業が増えている理由はさまざまです。大きなコストを投下して多くの人々に情報を届けるマスマーケティングの手法に限界が見えてきたことや、SNSの普及によって個人による情報発信力が大きくなったことなどが挙げられるでしょう。
そうした状況の中でコミュニティマーケティングに求められるものは、主にエンゲージメントの向上とLTV(顧客生涯価値)の最大化といえます。

カスタマーエンゲージメントの向上

SaaS(Software as a Service)に代表される月額課金制のサービスでは、ユーザーに「使い続けてもらう」ことが不可欠です。そのためには、既存商品やサービスのブラッシュアップを図るとともに、顧客を大切にしなくてはなりません。そこから顧客との関係、すなわちカスタマーエンゲージメントの向上が重要な課題となってきました。
自社商品・サービスのコミュニティには企業の理念や価値観が浸透していますから、そこに参加することでカスタマーエンゲージメントの向上が図れます。これが、コミュニティマーケティングの目的のひとつです。

LTVの最大化

コミュニティは、自社商品やサービスを肯定的に見ている人で構成されていますが、商品・サービスに対する理解度や活用度合いはそれぞれ異なります。中には、商品の特性を十分に理解できていなかったり、ごく限られた機能しかサービスを活用していなかったりというユーザーもいます。
しかし、そうした人々がコミュニティを通じて多くの情報を得ることで、商品やサービスを深く知り、より活用できるように変化します。それが、エンゲージメントをさらに高め、LTVの最大化にもつながっていくのです。

従来のマスマーケティングとはまったく異なる「コミュニティマーケティング」。導入する企業が増えつつあるのは、それだけのメリットがあるからです。では、具体的にどのようなメリットがあるのか、いくつかご紹介します。

企業とユーザーとの距離が近づく

コミュニティマーケティングのメリットのひとつに、企業とユーザーとの距離が近づくことが挙げられます。そのため、ユーザーからのリアルな声を容易に、しかもスピーディに得ることができ、さまざまな施策にすばやく反映させることができます。つまり、PDCAを効率的に、高速で回すことができるのです。 また、イベントとは異なり、同一人物に何度もアプローチすることができますから、施策の効果や改善の度合いなどを、時間経過とともに計測することが可能です。

ユーザーのロイヤルティが高まる

コミュニティの参加者が、何らかの意見やコメントをSNSなどで発信すると、他のメンバーあるいは運営側がそれに応えます。すると、情報発信したメンバーが喜んでくれ、またコメントを書いてくれる。さらに、そのやりとりを見た人も、自ら情報発信したり、イベントに参加したりという行動を起こしてくれる。 この好循環は、参加メンバーの自発性を高めるとともに、自社および自社商品・サービスに対するロイヤルティを高める効果があります。

新規顧客獲得のための間口が広がる

従来のマーケティングでは、数多く集めた見込み客をナーチャリングによってホットリードに育て、商談化して成約するというプロセスを踏みます。つまり、上から下へプロセスが進むほど絶対数が少なくなる、逆三角形のファネル形状になります。

しかし、コミュニティマーケティングでは、ロイヤルティの高いコアなメンバーがコミュニティの中心となって、新たなファンを引き込んでいく形で拡大していきます。つまり、ピラミッド型のファネルとなるため、コミュニティの活動とともに新規顧客獲得の間口がどんどん広がっていくことになります。 しかも、コミュニティ内で自社商品やサービスについての理解が深まっていますから、そこを経由した顧客には過剰な期待値がなく、解約のリスクが低くなるというメリットもあります。

ユーザーサポートのコストが軽減される

商品・サービスに対する質問や疑問、使い方のアイデアの交換などはメンバー間で行われますので、企業側には「ユーザーサポートのコストが軽減される」というメリットもあります。 「こんな便利な使い方がある」「ここで困ったら、こうすればいい」といった情報は、誰もが聞きたいものですし、話したいものでもあります。各メンバーがそれぞれに持っている異なるナレッジが組み合わされば新たな知見が生まれていきますし、そうしたニーズを満足させることで、コミュニケーションのさらなる活性化やロイヤルティの向上にもつながっていきます。 ユーザーがお互いに教え合い、育て合う。教わった側は、次に教える側に回る。そうした循環が、コミュニティの機能を高め、企業側の負荷を軽くしつつコミュニティ規模の拡大を進めてくれるのです。

いくつものメリットを持つコミュニティマーケティングですが、注意点もあります。実践する際には、これらのポイントを踏まえて展開してください。

コミュニティの形成には時間がかかる

コアなファンが新たなメンバーを引き込み、ファンに育てて、さらに新たなメンバーを呼び込む。この流れがコミュニティマーケティングです。ですから、コミュニティを立ち上げて活動を軌道にのせるまでには、かなりの時間がかかります。メンバー内から自発的なイベント開催が定期的に行われるようになれば、とりあえず成功と考えていいでしょうが、それまでは手間も時間もかかると考えておきましょう。
もちろん、活動が軌道にのっても、発信される情報のファクトチェックやメンバーのケアといったフォローは不可欠です。

コミュニティメンバーを報酬で集めない

コミュニティマーケティングを成功させるポイントは、コミュニティが自主的に運営されることです。報酬でメンバーを集めると、参加者の主体性は失われてしまいます。これは、とても重要なポイントです。そもそも、この手法におけるコミュニティ活動は、ロイヤルティの高いメンバーによる自発的な活動です。ですから、報酬を目当てに知人を紹介するメンバーが増えてしまうと、コミュニティの自主性が損なわれます。少なくとも、他のメンバーからはそう見えてしまうでしょう。
利害関係のない中で、メンバーが行動し、発信する。そうした認識をメンバー全員が共有しているからこそ、個々の活動や発言の信頼が高まるのです。

KPIの設定には工夫が必要

コミュニティ活動が活発になったからといっても、それがそのまま新規顧客の獲得に結びつくわけではありません。ですから、KPI(重要業績評価指標)の設定には注意が必要でしょう。
よく使われる売上やPV数(表示回数)よりも、イベントごとの新規参加者数の推移や開催頻度、コメントの発信数、フィードバックの内容など、数値化できない部分も重視すべきでしょうし、そのことを社内での共通認識としておくことも大切です。

自社あるいは自社商品・サービスのファンをつかみ、育て、広めていくコミュニケーションマーケティング。この手法を活用すれば、ロイヤルティの高いユーザー層を育成しつつ、新規顧客獲得を図ることができます。同時に、こうした場所はユーザーにとって、「困った」を解決し、仲間とつながる場所でもあります。
コミュニティの立ち上げから軌道にのせるまでには手間も時間もかかりますが、じっくりと取り組み、成果につなげてください。やがて、自社も顧客も満足のいく、すばらしいコミュニケーションの場が姿を現してくれるはずです。

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