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〈事業所MVV〉が
コンタクトセンターの
クオリティを向上させる

ー 理念と行動を
共有するための取り組み ー

理想科学工業様×トランスコスモス

企業のコンタクトセンターは、顧客とのコミュニケーションの窓口であり、顧客の貴重な声を得ることができる接点です。そこで最良の顧客体験を実現し、幅広い声を集めていくためには、企業の理念や、それに基づく具体的な行動指針が全オペレーターに共有されていなければなりません。トランスコスモスはその共有の基盤として、支援するすべてのコンタクトセンターで〈事業所MVV〉を策定しています。プリンター・印刷機メーカーである理想科学工業様が沖縄で運営しているコンタクトセンターでは、この〈事業所MVV〉が大きな成果を生み出しています。センターのマネジメントを担う川野邊浩司氏と上野智治氏、〈事業所MVV〉策定を推進してきたトランスコスモスの田渕和彦常務執行役員、センター現場の責任者である喜久山徹が、〈事業所MVV〉がもたらしたものと、理想科学工業様が目指すコンタクトセンターの姿について語り合いました。

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「喜び」の連鎖を
つくり出すために

理想科学工業様のメーカーとしての開発ポリシーをはじめにお聞かせいただけますか。

川野邊弊社は戦後まもない1946年に創業しました。スタートは謄写版の印刷業で、まもなくインクの開発・製造を手掛けるようになりました。当社の開発ポリシーは「世界に類のないものを創る」です。このポリシーをもとに、印刷関連のサプライ品からプリンターまで、これまでさまざまな製品を世に送り出してきました。製品は、世界約190の国や地域で活用されています。

お二人のお仕事とミッションについてお聞かせください。

川野邊二人とも所属は営業本部内にあるCR(カスタマーリレーション)サポート部で、コンタクトセンターの運営が主なミッションです。センターの機能はすべて沖縄に集約しており、上野がセンターに常駐して直接的な運営にあたっています。一方、私は東京本社に席を置いて、センター現場からの情報を本社につなぐ役割を担っています。

上野コンタクトセンターは、お客様の声を直にお聞きできる接点です。そこで得られた声や情報を関係各部署に確実に伝えて、商品の改善や開発にいかしていくことが必要です。その流れをつくるにあたって、川野邊と私のコミュニケーションが非常に重要であると考えています。

トランスコスモスはどのような理念をもってコンタクトセンター運営をご支援しているのでしょうか。

田渕私たちが最も重視しているのはお客様企業の満足です。お客様の満足の大きさが、そのまま私たちの成長の大きさとなると考えています。お客様の満足度を最大化するには、コンタクトセンター運営のプロとしてのノウハウをご提供するだけでなく、お客様企業の顧客にとって何が最善かを当事者の立場に立って考える必要があります。顧客の皆様に喜んでいただくことが、お客様企業の喜びとなり、それが結果としてトランスコスモスの喜びとなる──。それが、私たちが常に念頭に置いている大切な理念です。

トランスコスモスが理想科学工業様を支援させていただくようになったのは、いつからでしょうか。

上野2009年からです。最初は製品の修理受付業務と、プリンターとパソコンを接続するソフトウェアのサポートをお願いしていました。その後、お客様相談室への問い合わせ対応なども支援していただくことになりました。現在は30人から35人ほどの体制でセンター運営にあたっていただいています。

現在、コンタクトセンターで注力している取り組みはどのようなものですか。

喜久山私たちが〈事業所MVV〉と呼んでいる基本理念を現場に浸透させていく活動を続けています。MVVとは、ご存知のように、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3つによって事業の方向性を明確にしていくものです。トランスコスモスが考える〈事業所MVV〉は、お客様企業の経営や事業理念を「ビジョン」として整理し、それをもとにコンタクトセンターの「ミッション」を定義して、さらに行動指針である「バリュー」を定めるというフレームワークになっています。「バリュー」は、これもトランスコスモス独自の考え方である「TCIP(ティーシップ)」に基づいて定めています。

TCIPとは。

喜久山弊社の経営の基本理念とサービスマインドから「Trust=信頼」「Contribution=貢献」「Improvement=成長」「People=ヒト」の頭文字をとったもので、その4項目に対応する具体的な行動を細かく決めています。理想科学工業様のコンタクトセンターの〈事業所MVV〉を策定したのは2019年でした(図参照)。

〈事業所MVV〉によって
お客様企業とベクトルを合わせる

企業としてMVVを定めるケースは広く見られますが、「コンタクトセンター独自のMVV」という考え方はとてもユニークですね。

田渕私たちは、お客様企業の顧客との直接の接点を任せていただく立場にあります。その顧客接点でどのようなコミュニケーションを行い、どのようなベネフィットを提供していけばいいか。それを考えるにあたって、お客様企業の経営理念やビジョン、カルチャーなどを深く理解することは必須です。しかし、理解するだけでは足りません。それを具体的な言葉にすることによって、お客様企業とベクトルを合わせていけると私たちは考えています。それぞれのコンタクトセンターで、お客様と同じベクトルのもとで最良の結果を出していくために求められるもの。それが〈事業所MVV〉です。センターごとにMVVを策定するのは簡単なことではありません。お客様企業のヒアリングをしたうえで、お客様とセンターの現場に関わるすべての人が理解し納得できるよう言語化していかなければならないからです。しかしどれだけ苦労したとしても、つくる価値はあると私たちは考えています。

上野私がセンター長に就任したとき、すでにセンターの〈事業所MVV〉は策定されていました。その内容に目を通したとき、「よくここまで私たちのことを理解してくださっているな」という印象を受けました。弊社の社員の想いをたいへんわかりやすくまとめてくれているだけでなく、私たち自身があらためて胸に刻んでおくべき内容も含まれていました。違和感のある表現は一切ありませんでしたね。

川野邊理想科学工業のことを本当に理解してくれているだけでなく、弊社の製品に対する愛情が感じられる内容になっていると思います。実際、センターの現場で働いていらっしゃる皆さんと接すると、私たちの製品を本当に愛してくださっていることがよくわかります。

〈事業所MVV〉があることによって、センターの業務にどのような成果が生まれるのでしょうか。

喜久山〈事業所MVV〉の導入後、応対品質は間違いなく向上しました。また、ミッションにある「お客様の環境の変化に合わせた声(要望)を拾い、それを今後の製品開発に活かして頂けるよう貢献します」という内容を実現するために、VOC(顧客の声)の収集にも以前より積極的に取り組むようになっています。センターで集めたVOCを理想科学工業様の営業や開発部門の皆さんと共有し、新しい製品やサービスづくりに活かす方法を検討していただく。そんな流れを実現できています。

川野邊コンタクトセンターには、応答率向上などの定量的なKPIがあります。そのKPIを達成することはもちろん重要ですが、数字だけを意識していると、お客様へのきめ細やかな対応がないがしろになってしまう可能性があります。〈事業所MVV〉があることによって、数字偏重にならずに、常に本質を踏まえた業務をしていただけるようになっていると思います。

上野具体的な行動の面で見ると、TCIPの「T」の項目にある「CEの方が内容を理解しやすいようログを正確、簡潔に入力します」という文言が効果を発揮していると感じています。CEとは製品のトラブルなどに対応するためにお客様先を訪問するカスタマーエンジニアのことです。CEが適切かつスピーディな対応をできるようにするためには、トラブルの内容をまさに「正確、簡潔に」伝えることが必要です。しかし、以前はそれが必ずしも守られていなかったために、CEから不満が寄せられることがありました。現在は、そのような不満の声はほとんどなくなっています。

〈事業所MVV〉導入による
さまざまな成果

〈事業所MVV〉は、CX(顧客体験)にどのようなポジティブな影響を与えると考えられますか。

田渕TCIPの「C」の項目には、「お客様の声をしっかり聴きます」という文言があります。これはすなわちVOCを集めるということですが、それによって課題が明らかになり、その課題を早期に解決していくことができるようになります。課題発見と解決のサイクルを常に回していくことによって、CXを向上させていくことができると考えられます。
より価値のあるVOCを収集するには、「攻め」の姿勢が重要であると私は思っています。仮に、1日に300件の問い合わせがセンターにあったとして、それぞれの問い合わせの中でオペレーターが質問を1つすれば、1日300個のVOCを獲得できることになります。そのような「攻めるコンタクトセンター」を実現することで、CXはさらに向上していくと思います。

〈事業所MVV〉の導入によって、現場のオペレーターの意識はどのように変化しましたか。

喜久山自分たちがやるべきことを明確に把握できるようになりました。獲得したVOCを理想科学工業様に伝える場合にも、お客様が話したことを単に入力して伝達するのではなく、VOCを踏まえたうえで「こうしたらいいのではないでしょうか」という提案型のご報告ができるようになっています。そのようなご提案を、私たちは「VOA(エージェントの声)」と呼んでいます。お客様企業の「代理人(エージェント)」である私たちの意見をお伝えし、それを製品の改善や開発に活かしていただくことを目指すのがVOAの取り組みです。

上野いただいたVOAによって、実際に製品が改善されたことがありました。プリンターに表示されるエラーメッセージの表現を変えることで、よりスムーズに問い合わせをしていただけるようにするという改善です。弊社の社員では気づきにくいことをオペレーターの皆さんに積極的にご提案をしていただくことで、製品がブラッシュアップされる。これは本当にありがたいことですね。

喜久山オペレーターが〈事業所MVV〉を常に意識することによって、問い合わせをしてくる方々から感謝の言葉をいただける機会も非常に増えました。たいへんありがたいことに、理想科学工業様はお客様から感謝の声をもらったオペレーターを毎月表彰する取り組みを続けてくださっていて、現場のモチベーションがとても上がっています。

理想科学工業様のコンタクトセンターの〈事業所MVV〉は、現場のすみずみまで浸透していると言えそうですか。

喜久山かなり浸透していると思います。私たちは毎月、「品質総点検」という取り組みを続けています。これは、現場のオペレーターにアンケートに答えてもらうことで、業務品質を向上させることを目的としたものです。そのアンケートには「今月、あなたは〈事業所MVV〉に関連してどのような行動をしましたか?」という質問があるのですが、毎回7割ほどのメンバーが具体的な行動内容を書き込んでくれています。今後も浸透活動を続けて、〈事業所MVV〉への意識をさらに徹底させていきたいと考えています。

未来を「想像」し
ビジョンを「創造」する

トランスコスモスが理想科学工業様のコンタクトセンター運用支援を始めてから間もなく15年になります。15年間の長きにわたっておつき合いが続いてきた理由をどうお考えですか。

川野邊15年の間には、弊社がコンタクトセンターに求める要件も変化してきていると思います。そのような変化に柔軟に対応していただいていること。それから、さまざまな提案を積極的にしてくださっていること。そういったトランスコスモスの皆さんの努力が長いおつき合いにつながっているのだと思います。高いレベルを目指すことができる力強いパートナーであると感じています。

上野こちらから要望をお伝えする前に、先手を打って主体的に行動をしてくださる点をとても信頼しています。安心してお仕事を任せられるという信頼感が、長期的なパートナーシップの大きな要因になっているように思います。

トランスコスモスならではの強みはどのようなところにあると思われますか。

川野邊やはり、「人」ではないでしょうか。おつき合いが始まった15年前からずっと弊社のセンターで働いているオペレーターがいらっしゃいます。1つの現場でこれだけ長く働けるのは、コンタクトセンター業界ではたいへん珍しいケースだと思います。そういった方々の長年の経験や知見が業務に生かされているだけでなく、管理者が新しいメンバーを育成する仕組みもできています。「人材力」が業務品質に確実につながっていると思います。

今後、コンタクトセンターをどういう方向に成長させていきたいとお考えですか。

川野邊現在、センターからアウトバウンドでお客様に電話をかけて、製品の品質やご意見などをうかがう「サポートコール」を実施しています。これは、トランスコスモスからの提案によって実現したものです。そうやって得たVOCが製品開発やお客様対応の改善に実際につながっています。先ほど「攻めるコンタクトセンター」というお話がありましたが、このような能動的なアクションをさらに推進して、コンタクトセンターの付加価値を上げていきたいと考えています。

上野応対品質を引き続き向上させていきたいですね。品質向上のために定期的なオペレーター研修を実施していただいていることにはたいへん感謝しています。今後もトランスコスモスの皆さんと力を合わせて、品質向上の取り組みを続けていきたいと思っています。

理想科学工業様の事業にどう貢献していきたいか。最後にそれぞれの思いをお聞かせください。

喜久山やはり軸となるのは〈事業所MVV〉だと思います。それを基盤として、質の高い応対で理想科学工業のファンを増やしていくこと。それから、製品開発などにつながるVOCを積極的に集めていくこと。その2点を徹底することが、理想科学工業様への貢献になると考えています。

田渕大切なのは「想像」と「創造」だと思っています。理想科学工業様が向かうべき未来を「想像」し、そこを目指すためのビジョンを一緒に「創造」していくこと。それが私たちの役割です。企業を取り巻く環境は常に変化しています。その変化に対応して、新しい時代に即したコンタクトセンターのあり方をこれからも理想科学工業様とともに考え、ともに実践していきたい。そう考えています。

※本記事に記載されている情報は、2023年12月取材時点のものです

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